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#8 JクラブのPLの営業費用の内容を調べてみた(選手報酬・試合関連経費・Jリーグ年会費)

公認会計士のゆうと申します。数あるnoteの記事からご覧いただき、ありがとうございます。

前回は、Jリーグの各クラブの決算書のうちPLの勘定科目の営業収益の内容ついて説明をしましたが、今回はPLの勘定科目の営業費用の内容をみていきたいと思います。
お時間のない方は、目次から3.まとめをご覧ください。

1.PLの勘定科目(営業費用)について

勘定科目は、2020年度の【Jクラブ個別経営情報開示資料】に沿って、開示されている範囲で説明いたします。
下記表がPLに計上される勘定科目及びその内容となります。表のベースはJリーグのHPで開示している【Jリーグ クラブ経営ガイド】を参考に作成しています。

Jリーグ クラブ経営ガイドを参考に作成

2.勘定科目の内容の補足

ここからは、私が個人的に気になった勘定科目について深堀をしていきたいと思います。なお、深堀した箇所のと上記1.の表の注はリンクしています。

チーム人件費のうち、選手報酬
※1
〈契約種類〉
選手報酬に係る契約の種類について、日本サッカー協会のHPの【プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則】に定めがあり、内容は以下の通りになります。

プロA契約:定試合出場時間を満たすかプロC契約を3年経過した選手が対象で原則25名以内☆の人数制限があり。基本報酬は年額460万円以上。原則としてその他の制限はないが、初めてプロA契約を締結する場合に限り、その基本報酬は年額670万円を超えてはならず、変動報酬は本制度の主旨を逸脱しない範囲で設定しなければならない。
☆:25名以内の人数制限の例外は下記の通り。
・AFCチャンピオンズリーグに出場するクラブは、当該年度に限り、枠が27名に拡大。
・自クラブの第3種又は第2種の育成組織のチームに3年以上在籍した選手は、同クラブのチームに在籍する場合は25名枠の対象外。
・期限付移籍の選手は、移籍先クラブでは25名枠の対象とし、移籍元クラブでは対象外とする。
・自クラブのホームグロウン選手が登録義務未満の場合は、翌シーズンにおいて当該チームが登録できるプロA選手の数は、人数に満たない人数分減じられる。

プロB契約:規定試合出場時間を満たすかプロC契約を3年経過した選手が対象で人数制限はない。基本報酬は年額460万円を超えてはならない。変動報酬は自由に設定できるが、出場プレミアムを設定する場合は1試合あたり47,620円以下とする。

プロC契約:規定試合出場時間を満たしていない選手が対象で人数制限はない。基本報酬は年額460万円を超えてはならない。変動報酬は出場プレミアム及び勝利プレミアムに限り設定することができる。ただし、出場プレミアムは1試合あたり47,620円以下とし、勝利プレミアムはクラブにおけるプロA契約の勝利プレミアムの最低金額を上回ってはならず、本制度の主旨を逸脱するものであってはならない。
日本サッカー協会のHPのプロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則より作成

〈プロA契約選手の下限〉
Jリーグ規約】第40条において、所属するディビジョンに応じてプロA契約選手数の下限が定められています。以下が記載の引用となります。

第 40 条〔公式試合〕
 ~中略~
(4) 前項にいうトップチームは、以下の要件を満たすものとする。 
① J1クラブのトップチームは、シーズン中は常にプロ選手(Jクラブとの書面による契約を有しており、当該選手のサッカー活動の対価として当該選手が被る費用を実質的に上回る支払いを受ける者をいう)を 20 名以上保有し、うち 15 名以上はプロA契約選手(協会が定める「プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則」に定義する。なお、プロA契約選手として扱われる外国籍選手を含む。以下同じ)であること 
② J2クラブのトップチームは、シーズン中は常にプロA契約選手を5名以上保有していること
 ③ J3クラブのトップチームは、シーズン中は常にプロ選手を3名以上保有していること 
Jリーグ規約より引用

〈ホームグロウン制度・外国籍選手枠〉
JリーグHPのニュース(【2018年度 第9回Jリーグ理事会 定時会見録について】)に記載があり、2019年シーズンより適用されています。

ホームグロウン制度によりホームグロウン選手を登録していないクラブはプロA契約選手の枠が削られます。また、外国籍選手枠は登録数の制限はなく、試合出場は5人(J1)、4人(J2・J3)が可能となりました。
以下が記載の引用となります。

<ホームグロウン制度>
1)Jクラブは、ホームグロウン選手(以下、HG選手)を規定の人数以上、トップチームに登録しなくてはならない。
2)HG選手の登録数は、開幕時の登録ウインドー終了時にカウントし、期限付移籍の選手は、移籍先クラブでの登録とみなす

■ホームグロウン選手の定義:
・12歳から21歳の間、3シーズン又は36ヶ月以上、自クラブで登録していた選手
・満12歳の誕生日を含むシーズンから、満21歳の誕生日を含むシーズンまでを対象とする
・期間は連続していなくてよい
・21歳以下の期限付移籍選手の育成期間は、移籍元クラブでカウントする。
・選手を国籍、又はプロ/アマの別、又は年齢で区別しない
・JFA・Jリーグ特別指定選手は、HG選手と見なさない

■規定人数:
シーズン
2019 J1/2人以上、J2/J3/定めなし
2020 J1/2人以上、J2/J3/定めなし
2021 J1/3人以上、J2/J3/定めなし
2022 J1/4人以上、J2/J3/1人以上

■罰則:
・HG選手登録が規定数に満たない場合、不足人数と同数を、翌シーズンのプロA契約25名枠から減ずる
・AFCチャンピオンズリーグ出場クラブの場合、プロA契約27名枠から減ずる

■現制度の存続
・自クラブ第3種又は第2種チームで3年以上育成したプロA契約選手を、プロA契約25(27)名枠外で登録できる制度は存続する
・当該選手はHG選手と見なされる
2018年度 第9回Jリーグ理事会 定時会見録より引用
<外国籍選手枠>
2019年度からは以下のとおりです。
選手登録のエントリー人数で若干変更があり、登録は制限なし。試合エントリーと試合出場は、J1は5名、J2/J3は4名となりました。提携国選手は、外国籍選手の人数に含めないこととなります。
その他、ルヴァンカップ、J1参入プレーオフに関しては、注意書きにありますように、ルヴァンカップはそれぞれの所属リーグの外国籍選手枠を適用し、J1参入プレーオフは外国籍選手の試合エントリー・試合出場は4人を上限としています。

■規定:
☆選手登録
・J1/J2/J3 いずれも制限を設けない*
☆試合エントリー(ベンチ入り)
・J1は5人、J2/J3は4人上限とする
・提携国選手は外国籍選手の人数に含めない**
☆試合出場
・J1は5人、J2/J3は4人上限とする
・提携国選手は外国籍選手の人数に含めない**
**Jリーグ提携国の選手は、外国籍選手の人数に含めない(2018年11月20日現在の提携国:タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)

■導入時期:2019シーズンより
■適用:シーズンを通じて適用
■その他: カテゴリー(J1/J2/J3)が異なる場合の取り扱い
・JリーグYBCルヴァンカップ:それぞれの所属リーグの外国籍選手数が適用される
・J1参入プレーオフ:試合エントリー・試合出場は4人を上限とする
・天皇杯については別途、(公財)日本サッカー協会が定める
2018年度 第9回Jリーグ理事会 定時会見録より引用

〈各クラブの選手報酬について〉
上記のように選手の登録内容や報酬内容に取り決めがあることから、各クラブの立場や戦略に応じた選手構成次第で総額に差がでてくることが窺えます。
➀契約選手数の配分:クラブの手持ち資金に応じて、プロA契約選手(外国籍選手含む)を最大限所属させるか、プロA契約選手(外国籍選手含む)を最小限にとどめて育成に舵をきるか。
②所属するディビジョン:相対的にディビジョン3よりもディビジョン1のクラブの方が選手層が厚いことから、選手1当たりの報酬金額が高いことが想定される。
③クラブとしての目標:所属するディビジョン内において優勝争いするために控え選手も含めてレギュラー並みの戦力で揃えるか、最低限残留することを目的にするために選手報酬をレギュラー選手の登録を優先するか。

試合関連経費
※2:【Jリーグ規約】第75条において、試合に要する費用について更に具体的な記載があります。なお、④~⑥は販売費及び一般管理費として計上しているものと思われます。以下が記載の引用となります。

第 75 条〔公式試合の費用負担〕
 ホームクラブは、ホームゲームにおける収入を受領し、その試合の開催に要する次の費用(以下総称して「必要経費」という)を負担する。 
① 運営人件費
② スタジアム使用料(付帯設備使用料を含む) 
③ スタジアム仮設設備設置費用(テント設営料等)
④ 入場券・招待券の印刷費
⑤ 入場券販売手数料
⑥ 広告宣伝費
⑦ クラブパートナーの看板等の費用(スタジアムへの掲出料を含む) 
⑧ その他運営に係わる費用 
Jリーグ規約より引用

トップチーム運営経費のうち、移動旅費、 その他トップチーム運営経費(消耗品費)
※3:【Jリーグ規約】第90条において、Jクラブの負担と定めています。なお、ユニフォーム一式およびトレーニングウェアは、1点あたり数万円程度だと思いますので、消耗品費として即時費用計上されていると窺えます。以下が記載の引用となります。

第 90 条〔費用の負担および用具の使用〕
 (1) 選手がJクラブのために旅行する期間の交通費・宿泊費は、Jクラブが負担する。
 (2) 選手が試合およびトレーニングに使用する用具のうち、ユニフォーム一式およびトレーニングウェアは、Jクラブが支給したものを使用しなければならない。 
Jリーグ規約より引用

販管費及び一般管理費のうち、一般管理費(Jリーグ年会費、その他)※4:【Jリーグ規約】第22条において、入会金や年会費の額が所属ディビジョン毎に定められています。以下が記載の引用となります。

第 22 条〔入会金および会費〕
 (1) Jクラブまたは百年構想クラブは、以下の各号のいずれかに該当する場合に限り、Jリーグに対し入会金を納入しなければならない。 
① J2クラブがはじめてJ1クラブとなる場合 金 6,000 万円 
② J3クラブがはじめてJ2クラブとなる場合 金 2,000 万円 
③ 百年構想クラブがはじめてJ3クラブとなる場合 金 500 万円 
(2) 前項に定める入会金は、前項各号のいずれかに該当することが確定した日の属する月の翌月末日までに、Jリーグに対して納入するものとする。
 (3) Jクラブは、毎年4月末日までに、Jリーグに対し次に定める会費(毎年1月1日から12 月 31 日までの期間分の年会費をいう。以下単に「会費」という)を納入しなければならない。 
① J1クラブ 金 4,000 万円 
② J2クラブ 金 2,000 万円 
③ J3クラブ 金 1,000 万円 
Jリーグ規約より引用

入会金は、【公益社団法人 日本プロサッカーリーグ 定款】の第11条において入会金は返還しない旨があることから、支払う年度に資産計上ではなく費用処理をしているものと思われます。

第11条〔会費等の不返還〕
退会し、または除名され、あるいは資格を喪失した会員が既に納入した入会金、会費その他の拠出金品は、いかなる事由があっても、これを返還しない。
公益社団法人 日本プロサッカーリーグ 定款より引用

販管費及び一般管理費のうち、一般管理費(JFA給付金)
※5:【Jリーグ規約】第79条において、JFA給付金の納入金額の算定方法がに定めています。また、第79条の2において、2020年シーズンは免除する旨の定めがあります。

第 79 条〔協会納付金〕
 ホームクラブは、協会が指定する試合の入場料収入の3%相当額(以下「協会給付金」という)をその試合の属する大会が終了した後、別に定める方法にてJリーグへ報告し、請求書発行日から 60 日以内に協会に納付しなければならない。 
第 79 条の2〔2020 年シーズンにおける協会納付金の例外〕 
第 79 条の定めにかかわらず、2020 年シーズンに限り、ホームクラブは協会給付金の納付義務を負わない。 
Jリーグ規約より引用

販管費及び一般管理費のうち、一般管理費(その他)
※6:【Jリーグ規約】第105条において、選手が移籍した際の移籍補償金の一部をJリーグに納付することが定められております。

第 105 条〔移籍に伴う納付金〕 
Jクラブは、日本国内で育成された日本国籍を有するプロ選手の日本国内の移籍に伴う移籍補償金(期限付移籍補償金を含む)収入の4%相当額を、受領後 60 日以内にJリーグに納付しなければならない。 
Jリーグ規約より引用

3.まとめ

4.次回

次回は、PLの勘定科目のうち、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失の内容についてみていきたいと思います。最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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