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一重のわたしとパリジェンヌ

学生時代に可愛いと思った女の子たちは、みな綺麗な二重の目にくりんとしたまつげを持っていた。忘れもしない大学3年生の時。わたしの周りに数多いる可愛い女の子の中でも一際わたしの目を引いた友人に、あまりに吸い込まれそうになって聞いた。その人は、パリジェンヌだと言った。そういうまつげの施術の名称だった。

社会人になってまつげパーマを始めた時も、パリジェンヌをやってみたいと最初はクレジットカードを握りしめて行ったのだった。その頃から私は二重のあとなんてつく予兆もない自分のまぶたに愛想をつかし、重いアイプチをするのが嫌になった時期だった。

ところがやっぱり現実はそう優しくはない。調べるとパリジェンヌは二重の人のほうがより良さを出せるように思えた。それもそのはず、まつげパーマというとくるんとまつげをカールさせるのが一般的だけれど、パリジェンヌは毛の根本の部分をぐっと上向きにし、あとの毛先は直線的に持ち上げるものだ。つまり、まぶたがまつげを押さえつけるような私の一重まぶたでは、そもそも持ち上がらないという話。憧れなんてものは、あっけない。

初回のカウンセリングでも、やっぱりくるんとカールをつけるまつげパーマを勧められた。まぶたを避けてまつ毛がくるんと上に上がっているように見せるので、押しつぶされるということもなく、思いまぶたの人が効果を感じやすい。私もそれを選んだ。せっかくまつげの印象を上げるために6,000円も払うのに、まぶたのせいで上がりませんでしたなんてことになれば、本格的に顔を恨みかねない。

そこから2年ほど経った気がする。毎回指定の店長さんは、薬剤が沁みることもほとんどなく、爆睡させてくれる人だ。まつげの長さによって変わるカールの大きさも、どれくらいまぶたを押し上げたいかも、全部その人にお任せできる。なにより、とっても手がふわふわで優しく、やっぱり私は30分間深い眠りに落ちるのだ。

そんな店長さんが、一重や奥二重の方でも、パリジェンヌでまぶたを押し上げる効果を感じる方もいますよ、と教えてくれた。大事な予定(例えば海外旅行とか、彼氏とのイベント)のために何度か見送って、今回やってみようかなと思ったのだ。正直、私が憧れた目になれる気はしていなかったけど、新しいものを試す気持ちでお願いした。結局、服もメイクもなにもかも、自分の体で試さないからにはわからないと思った。

施術後、目を開ける瞬間はいつも緊張する。その人が銀色の手鏡を持たせてくれて、ゆっくり目を開けてくださいね〜と言いながらにこにこと私の顔を覗き込むとき。上がらなかったら?わたしのまぶたが重すぎたら?…一度右目だけうまく持ち上がらなくて、めちゃくちゃ人相のわるい顔になったことがある。数日でまぶたの肉の方が慣れて綺麗に分散してくれるようになったし、メイクをすればぱっちりになるんだけど、その瞬間はなんだかとっても気まずく、どちらかといえばわたしが申し訳なくなる必要なんてないのに、ものすごくお姉さんには申し訳なくなったのだ。

今回やってみてもらって分かったことを一言で言えば、パリジェンヌはわたし向きではなかった。やっぱりうまく持ち上がらないし、瞼に邪魔されてしまう。普通のまつげパーマの方が可愛い。もう同じ施術をお願いすることはないだろう。やっぱり私には適度なカールが必要だし、それにプラスで持ち上げる力もあればなお良いと思った。そう、全然落ち込まなかったのだ。

まつげパーマなんて早くて3週間、遅くとも1ヶ月半以内には次の予約をすることになる。だから今回は、後悔は全くなかった。私はそちらの方に驚いた。他の人が撮ってくれた自分の写真でがっかりすることは何度もあって、でも今回は自分の顔が嫌になる気持ちにならなかった。1年ほど一重でメイクするようになって、自分の顔がいいじゃんって思えるときを地道に楽しんで来たからだろうか。実験してみてよかった。11月の旅行のときには、ばっちりカールしたまつげで挑める気がする。


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mayu
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