見出し画像

あの頃。とオタク。と中学生。と

ハロプロに出会って人生が変わった青年が主人公の映画「あの頃。」が公開され、早速鑑賞。「ハロプロ」が関わっている事、舞台が2004年頃という事から、懐かしさと共感で一杯になるに違いない!と思っていたのに、物語内で推しについて熱く語ったり、所謂「ヲタ芸」を披露する集団を見ると、サッと引いてしまった。その時初めて、中学生だった「あの頃。」の自分を思い出した。

オタク=キモイだった時代

アイドルもアニメもゲームも、堂々と「好き」と言えるようになった現代。むしろ何かのオタクである事が一種のステイタスかの様にも思える。しかし、今から10数年程前の「あの頃。」は、オタクに対しての風当たりは非常に強かった。上記のものを好きと公言すれば「キモイ」と言われ、年齢や性別に加え「一般人」と「オタク」という区別を付けられる。そして「オタク」なだけで一つ下の身分に見られてしまうのである。もちろん他人の目を気にせず堂々とする人も居たが、大半は「オタク」に分類される事を恐れ、会社でも学校でも家族の前でもオタクである事を隠していた。2005年に放送されたドラマ版「電車男」がこの時代をよく表していると思う。主人公がオタクである事を必死に隠して、ヒロインと仲良くなっていくストーリー展開、オタクを毛嫌いする女性の言動や行動がそれにあたる。(最終的にはオタクである主人公を認める様になるけど)

中学生だったあの頃の私。

映画「あの頃。」での日々は「中学10年生の様な日々」と青春の1ページ的に描かれている。しかしリアル中学生だった私にはとてもそんな過ごし方は出来なかった。最も多感で、青い時代。誰よりも大人だと背伸びしたがり、誰よりもイケてるとカッコつけたがる。カースト上位にはなれなくとも、下位には落ちたくない。そんな時期に自分はオタクだと認めることは、自らスクールカーストの下位に落ちることを意味する。「ワンピース」「ナルト」「BLEACH」といったジャンプ系の作品ですら漫画はセーフだけどアニメも見ていたらオタクと見なされていた時代、皆親しい仲間以外にはオタクである事をひけらかさない様に徹底していた。私も「ハロプロ好き」をいつの間にか公言しなくなっていた。それは周囲のハロプロに対する見方が変わってしまったからである。

オタク向けとみなされるハロプロ

ハロプロは熱狂的なオタクが多い一方、一般からの支持も多かった。特に「国民的アイドル」と言われた1999~2001年頃のモーニング娘。やCMにも引っ張りだこだった2002~2003年頃の松浦亜弥の曲はファンでなくとも認知され、人気を集めていた。しかし、そんな時代も長くは続かない。2004年頃には映画の様に熱いオタクが存在する一方、そうじゃない人達からは興味を持たれなくなり、メンバーの名前も曲も分からなくなっていく。それどころか「アイドルなんてダサい」「時代遅れ」と叩く側に回っていった。変わらず好きでいた私は、そんな人達をもう一度応援する側に戻せる曲を!と願っていたが、その時期にリリースされたモーニング娘。のシングル「涙が止まらない放課後」を聴いて失礼ながら「無理かも…」と思ってしまった。


ハロオタ目線で見るとこの曲は「遂に来たか!」という感じ。「歌もダンスも赤点」で加入した紺野あさ美が初めてのセンター。スキルを買われて…というのではなく、彼女のほんわかした可愛らしいルックス、キャラクターを重視した牧歌的で可愛らしい曲。コンコンのこれまでと彼女のキャラクターを十分に理解しているオタクはミスしないかとヒヤヒヤしつつもその晴れ姿を見守る、という楽しみ方を理解していたが、それを知らない人からは「ぶりっこ」「下手」と叩かれ完全にそっぽを向かれてしまった。現代なら「あざとかわいい」曲としてTik Tokあたりで流行りそうなのに…。ここで世間との温度差をはっきりと感じ「ハロプロ好き=オタク」という扱いになってしまった様に思う。

「好き」を堂々と言えるってスゴイ

「電車男」ブームに乗って、ハロヲタも面白おかしくメディアに取り上げられていく。モーヲタが推しについて熱く語る様はコントにされ、バラエティー番組で放送されたり、ハロ曲に合わせてヲタ芸をする様子が紹介されたり…。私はその度に「一般の人に引かれるからそういう取り上げ方をしないで欲しい!」とこれもまた失礼ながら思っていた。だからこそ、映画を観て、そのヲタクぶりに当時のこの気持ちを思い出して引いてしまったのである。

だけど、正直言って羨ましかった。2004年冬のハロコンのMVPについてやBerryz工房のデビュー曲のインパクトについて語りたかった。どんなジャンルであれ「好き」な事を堂々と語れる人はやっぱり羨ましいし輝いて見える。それは他人に寛容になってきた世の中とはいえ、現代でもまだまだ勇気のいる行動でもある。LGBTQ等恋愛の「好き」を含めるともっと勇気がいると思う。色んな「好き」を認め、お互いの価値観を認め合う。そんな時代は意外と近い様な気もする。映画に出てきた様な「好き」を大事に出来る人達がこれからきっともっと増えていくから。みんなの「好き」を大切に出来る「ニューノーマル」な時代がやって来るはずだ。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集