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フロ読 vol.2 佐竹昭広『萬葉集抜書』 岩波現代文庫
具体性のカタマリ、コンクリートな萬葉集。それでも歌の調子が持つ柔らかさは、句のゆとりは…。
意外だった…という感を表わす際に、古今集では「思ひきや」と表現(カッコいい)。これを萬葉集では「我は思はずき」と七文字で。
「ずき」って…ww
何とも素直というか可愛い表現。この朴訥さが古今集の洗練・クール感と対照されるとき、本当にかわいらしいと思えた。
反面、これが萬葉集の歌が持っている世界の狭さと言えるはずだが、古今の洗練だって無駄に格調を高めれば即ち定型。
歌は本当は狭小なものでよいと思うし、リービ英雄の言っていた「こんなに小さな世界をかくも壮大に詠むのか」という趣きもまた人間らしくてよい。
フロ読こそそんなもので、こんな小さな思索が何になるとも思えないが、小さな湯舟の中から大宇宙を思ってみるのも人間に生まれた贅沢の一つなんじゃあないでしょうか。
賀茂真淵が「ふつつかなる如くしてよく見ればみやびたり」と観じたという。
私は芭蕉の
よく見ればなずな花咲く垣根かな
を連想。
この辺りに何やらゆかしき萬葉の真髄が見え隠れするのかも。
いくぶん和らいだとはいえ、暑い日が続く。やはり長くは読めぬフロ読。