フロ読 vol.7 昭明太子『文選 詩編(一)』 岩波文庫
『文選』は長らく縁がなく、所有できたのは教え子のお蔭だった。教え子といっても私より20歳ほど年長の方で、私の「文選は持っていないので読み込んでないんだよね」という発言を覚えていて、卒業時に「2冊同じ本を持っているので」と丁寧な手紙とともに譲ってくれたのが初めてだった。もう10年以上前のことだ。
当時頂いたのは筑摩の『世界文学大系70』だったが、この度、岩波文庫から瀟洒な文庫が出たので、買い集めていこうと思う。
今日はそのファーストコンタクト。若い時に目を奪われた漢詩はほぼ唐詩。最近は宋詩の快味が漸く分かってきたものの、詩経や漢魏六朝詩は未だにその良さがピンと来ていない。
開いてみてやはり、これは辞書無しではキツいな…。目次の段階で「補亡」とか「公讌」とか未知の用語が目に飛び込んでくる。
「はじめに」にて、永井荷風が耽読していた時期があるとの故事が。やはり明治の文豪はすごい。彼らの読書に対する姿勢はいつもモチベーションを上げてくれる。ああは成れないだろうが、わずかでも後塵を拝したい気持ちにさせてくれるのだ。
昔は論文のために無理矢理読み続けたりもしたが、今は特に宛もなく旅でもするように読むのみ。今日はゆっくりと「補亡」だけ。「補亡」とは、詩経に準ずる書であることを示すための擬古文のようなものらしいと聞いて納得。そういう形式も大事にして始めるのね。
形式上の説教臭さについては、車窓から見る風景のように流し読んで、今日はここまで。
いつ終わるのか分からないのんびり読書だが、過程を楽しむ贅沢を堪能してゆく。