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フロ読vol.1 三木紀人『徒然草(一)』 講談社学術文庫

『徒然草』は小学生くらいから親しんで来た。爾来、読み返す度に発見というか、違う顔を見せてくれる一冊。いわゆる「味読」には最適な書。これを記念すべき1冊目としてみたい。

パラパラめくっていくと、早速第二段の九条殿御遺誡の「あるに従ひて用ゐよ。美麗を用ふるなかれ」とか普通の言葉が沁みてくる。良いモノは使った方がよいが、「美麗」は確かに不要。昭和天皇が国民の塗炭の苦しみを鑑みて、いつまでも靴下を換えなかったとかいうエピソードが頭を過った…と思ったら、しっかり順徳院の故事も添えてあった。

俊成の「恋せずは人は心もなからまし」はイイなあ。「色好まざらん男」(第三段)はげにさうざうし。

この辺りで気づく。ん、この本、注が面白い。「引くてあまた」という言葉は古今集が元なのか。

  おほぬさの引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ

また、
  そゑにとてとすればかかりかくすればあな言ひ知らずあふさきるさに

この歌が万葉集とは面白い。奈良時代から既に「何も言えねえ」葛藤を詠んだりしているのね。

よく男は理性、女は感性などと言うがどうか。色好む男の性を傍で見て評価する眼を持つ女の役割は、少なくとも男の側からすれば理性そのものではないのか。どだい何事につけ男の方が理性を隠れ蓑に感情を語ることが多くて見苦しい。第百七段のなにがしとかやの例など好例ではないだろうか。
外が暑いせいか長く入れない。今日はここまで。 
 

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