【詩】人魚姫への手紙
人魚姫へ
「かわいそう」と人は言う
王子を助けたのはあなたなのに
声を奪われたが故に
真実を伝えられなかったと
けれど、あなたの真の苦しみは
王子を奪われたことでも
誤解を解けずに泡になったことでもない
愛する人の隣にいながら
愛を届ける声を持たなかったこと
あなたの隣を歩けるなら
声なんて要らないと決めたのに
こんな飼い殺しにされるなら
遠く海から眺めるままが
どれだけよかったか
そう思ったのではありませんか
人魚姫よ
勇気をください
声を携えておきながら
愛を届けることができない
この、臆病者の私に
勇気を。
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