【読書感想】現役医学生が9浪医学部受験による殺害を考える 『母という呪縛 娘という牢獄』
どうも。むぎちゃです。
とある女性が母親に9年間の医学部浪人を強いられた末、母親を殺害しSNSに「モンスターを倒した」と書き込んだ。
という事件を覚えていらっしゃるだろうか。
この犯人となってしまった女性に何度も取材し、
彼女目線でのことの経緯が綴られている
『母という呪縛 娘という牢獄』という本を読んだ。この本があまりに印象的だったので諸々を書き記しておこうと思う。
私は初めにこのニュースを見た時に、
なぜ殺したのか、逃げれば良かったのに。
方法はいくらでもあったはずだ。
と率直に思った。
しかし、この本を読めば分かることだが、
彼女は彼女なりに逃げる努力をしている。
その上で殺害という手段を選択したのである。
殺人は良くない。だが、彼女が発した
「私かお母さんが死ぬまで終わらなかったと今でも思う」という言葉に賛同してしまう自分もいるのだ。
以下の人たちはぜひ、この本を読んで欲しい。
①受験に関わる仕事をしている人(教師など)
②天才ではない受験生を子供に持つ親
③天才ではない受験生
④受験を乗り越えた経験を持つ人
大事なのは天才でないことである。
特に医学部受験を考えている人はぜひ読んでいただきたい。
一番初めに思ったことは
この人は本人のためにも医学部に入学しなくて良かった
ということである。
なぜなら、
勉強がすごく得意な訳ではない人間が
医学部に進学し、
膨大な暗記の量に絶望し、
周囲の有能さと比較して自分の不出来さを責め、
精神的に追い詰められるという状況を身をもって経験しているからである。
もちろん、
入試の成績が振るわなくても
医学への興味関心が高く開花する人もいるとは思う。
医学部とは、多額の入学金・学費を支払い、日々を勉強に費やしたのち、留年を繰り返し、しまいには退学を余儀なくされた人たちも実在する世界なのである。
そんな緊張感やプレッシャーを乗り越えられているのは、間違いなく絶対医師になりたいという情熱のみである。
しかし、この人は“医療”自体への情熱は途中からほとんどなかったかのように思う。
また、多浪医学部受験と希死念慮は身近な存在なのだろうと思う。
私の同期にも多浪経験のある子が大勢いる。みんな口を揃えて、浪人時代は心を病んでいたと言っている。そのうちの一人に浪人時代の精神状態について尋ねてみたことがある。
彼女は「医師になれなかったら本気で死のうと思っていた。」
と言っていた。
頭が良ければ大した志が無くても医師になることはできよう。
だが、それほど頭が良い訳ではないという自覚があるのであれば、医学部での生活は決して甘くない。
高校時代の友人や頭の良い大学同期が
遊びにいったり、旅行しているのをSNSで見ながら、時には受験生以上の勉強量を強いられるのである。
医学部は入ってからの方が大変。
受験はあくまでその練習に過ぎない。
どうしても医師になりたいと思っている人以外はどれだけ自分や親のプライドに足を引っ張られようもこの戦場に足を踏み入れるべきではない。
と、まぁ、自論を語って参りましたが、
この本には
医学部、受験、色々と考えさせられるものがあるのでぜひ読んでいただきたい。
後味は悪いが読んで良かったと必ず感じると私は思う。