『怪談 牡丹燈籠』の話
どうも、私です。
今日は、「第14回 シネマ歌舞伎の話」をします。
やっぱり、1番怖いのって人間なのかしら。
お付き合い下さい。
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今年のシネマ歌舞伎は、話題となった『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』や私達姉妹がシネマ歌舞伎にハマるきっかけとなった『桜姫東文章』、中村勘三郎さん、勘九郎さん、七之助さん父子による『連獅子/らくだ』等、バラエティに富んだ作品がラインナップされている。
中でも気になったのが、『怪談 牡丹燈籠』。
落語家・三遊亭圓朝さんが創作した『牡丹燈籠』。
今回上演されたのは、文学座の為に書き下ろされた台本の為、言葉が分かりやすく、また人物像も深く掘り下げられたものになっている。
私「とはいえ、怖いんじゃないの?」
姉「安心して下さい(?)。伴蔵とお峰は、『仁左玉』です」
私「じゃあ、大丈夫か(?)」
※ここからは、ネタバレにお気を付け下さい。
怖いだけじゃない『怪談』
怖いだけかと思ったら、思いの外笑える場面が多かったのが意外だった。
恋に悩み、病で亡くなってしまったお露(中村七之助さん)の幽霊が、彼女が亡くなってすぐに後を追って自害した乳母・お米(中村吉之丞さん)の幽霊と共に牡丹燈籠を手に、想い人である萩原新三郎(片岡愛之助さん)に会いに行くのを目にした、新三郎の下男・伴蔵(片岡仁左衛門さん)。
ある日、伴蔵はお米の幽霊から、こう頼まれた。
お米「萩原様に会いに来たら、私達が幽霊であると気づいたみたいでお札が貼られているのです。会いたいのに会えないので、剥がして下さいな。そのときに、萩原様が持っている海音如来の尊像を隠して下さい」
伴蔵「えー……」
悩む伴蔵は、ついに妻・お峰(坂東玉三郎さん)に事情を話すのだが。
伴蔵「旦那様のことを慕っていた、お露様って覚えてる?」
お峰「亡くなったんじゃないの?」
伴蔵「それがさ、毎晩毎晩会いに来ているみたいなんだよ。乳母のお米と」
お峰「会いに来ているって、どういうこと?」
伴蔵「だから、2人の幽霊が、牡丹燈籠を手に、カランコロン、と……」
お峰「怖い!!!!!」
恐怖に震えるお峰は、伴蔵に抱き着き、2人はそのまま勢い余って床に倒れたのだが、
伴蔵「痛い痛い!!!!!」
と起き上がりつつ、痛めた首に手を添える伴蔵に、お峰は恐怖で顔を覆いながら叫んだ。
お峰「それからどうしたの!!!!!」
伴蔵「それからどうしたのって、怖いんじゃないのかよ!」
お峰「怖いけど聞きたい!!!!!」
姉、私「いや、聞きたいんかいwwwww」
と、こんな感じで結構笑える場面が多いのだ。
『仁左玉』によるコメディって感じがして、よかった。
まあ、その後、百両が手に入って笑えなくなったけど←
1番怖いのは……
この『怪談 牡丹燈籠』には、伴蔵・お峰夫妻、新三郎・お露、お米の他にも、お露の父・飯島平左衛門(坂東竹三郎さん)の後妻・お国(上村吉弥さん)と平左衛門に仕える源次郎(中村錦之助さん)が登場する。
源次郎を平左衛門の養子にし、平左衛門を亡き者にすることで、飯島の屋敷を自分達の物にしようと考えたお国だったが、2人の不貞が平左衛門にバレた結果、源次郎は平左衛門と偶然居合わせた女中・お竹(中村壱太郎さん)を手にかけてしまう。
身勝手すぎるやろ。
そして、百両を手に入れ、お露、お米の要望に応えた伴蔵・お峰夫妻も伴蔵の故郷で関口屋という荒物屋を営み、商売を始めるのだが、伴蔵が笹屋という料理屋で働くようになったお国に入れあげるようになっていた。
お金を持つと、人が変わるの良くないね。
それぞれが、最悪の結末に向かって突き進む3組の男女。
新三郎は、お露の幽霊に憑り殺され、伴蔵・お峰夫妻は、伴蔵がお国との仲を咎めたお峰を殺し、ふとしたきっかけでお国と一緒に働くお梅(中村壱太郎さんの一人二役)がお竹の妹だと知った源次郎とお国は、何者かに誘われるように虫の群れを追い、転んだ源次郎は自身の刀で……。
結局、1番怖いのは人間かもしれない。
憎い演出
『怪談 牡丹燈籠』には、ある演出がある。
それは、三遊亭圓朝(坂東三津五郎さん)の登場だ。
私達は、圓朝さんの高座で、この『怪談 牡丹燈籠』を聞いている客である。
という演出がされているのだ。
なので、圓朝さんの噺が導入部分となって、登場人物達の物語が繰り広げられる。
憎い演出だ。
しかも、三津五郎さんは圓朝さんとして噺を聞かせるほかに、商売を始めた伴蔵に仕える馬子・久蔵としても登場。
お峰に勧められるまま酒を飲んで、伴蔵とお国の関係を暴露する姿はとてもコミカルだった。
久蔵「このお酒、美味しいですね」
お峰「いいでしょう?辛口で」
久蔵「ピリッとしているところが、旦那様にそっくり。松嶋屋!って感じがします」
姉「松嶋屋、言うてwwwww」
私「自由かよwwwww」
と思いがけず、笑いどころもあり、そしてゾッとする『怪談 牡丹燈籠』を私達は堪能した。
終演後。
姉「ちゃんと怖いけど、面白い場面もあってよかった」
私「私、『牡丹燈籠』を見聞きして、こんなに爆笑したの初めて」
姉「百両をもらったときの、玉三郎さん……。笑」
私「ちゅうちゅうたこかいな!って言いながら、数えてるときの指の震え方よ。笑」
姉「でも、思った」
私「何?」
姉「源次郎とお国は、それだけのことしたんだから、死んで当然だと思うし、当然の報いを受けたと思う。でも、」
伴蔵、お峰を殺す必要あった?
…それは、ないと思うけど。