「宇奈月温泉100名月物語~富山県黒部市」
1.初めての年・北陸新幹線がやってくる~2016年3月~
首都圏において、北陸は遠い存在でした。北陸新幹線の金沢延伸はそれを打破した画期的な出来事になりました。
東京から美味しい魚を食べに行こうと思うと、ほとんどの人が伊豆に向かいます。赤身の魚が好まれ、それに舌鼓を打つのが旅行の主流でした。
昨今、白身の魚に人気が出て、日本海の魚に目が映るようになりました。
北陸は、伊豆と比べて、移動時間、そして、掛かる費用ともにほぼ同じになりました。
富山県の宇奈月温泉は、「月」が付く温泉郷です。全国を見回しても新潟県の月岡温泉ぐらいしか、大きな温泉郷はありません。
宇奈月のキラーコンテンツは、黒部峡谷沿いに走るトロッコ列車です。
しかしながら、雪が降り始める11月下旬から4月中旬までは、運休となります。過去には、旅館ホテルはこの期間を休業にしていましたが、従業員確保 など、様々な問題から年間営業に切り替える状態になりました。
この閑散期に町巡りをして新たな観光コンテンツを開発しようと考えたのが、この「宇奈月温泉100名月物語」です。
町中に100個の月が現れる。
宿泊施設のフロントの壁やお風呂の照明、
町中のお土産屋さんの飾り付け、
喫茶店の切り絵やセレナ(月の女神)という美術館など、
ありとあらゆるものに「月」のオブジェが完成していきました。
写真は、ちょうど100個目のオブジェ(巨大行灯)です。
5メートル四方・高さ10メートルという建物でいうと3階建てのもの、その中をイルミネーションで飾りました。
施工は、地元の建設会社です。黒部市の方々にもご協力を得て、観光業に携わる者、地域住民の協力によって、出来上がったイベントです。
2.二年目・継続は力なり~2017年3月~
初年度のイベント終了後、宇奈月の町では、町中の総湯(外湯)が改築されることが決まりました。
巨大行灯の次は、総湯の壁に宇奈月らしいイルミネーションをあしらうこととしました。
立山黒部の山々をバックにうさぎがお月見をしている絵柄が採用され、夕方の街を彩りました。
この年は、100個の月を見ていただくために「デジタルタッチラリー(ICチップを活用したスタンプラリー)」も実施し、楽しみながら町巡りをすることができる取り組みも行いました。
一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューローとKNT-CTホールディングスの共催である「日本百名月プロジェクト」の第1号認定地は、宇奈月温泉であります。地域特性に合わせたイベントづくりが、これからの課題と考えられます。
また、観光閑散期の解消を目指した旅行時期の平準化も検討しなければならない課題です。
3.コロナ禍を乗り越えて
この3年間、コロナ禍は観光業界に大きな打撃を与えました。
国が主導する「全国旅行支援」など、様々な取り組みがなされていますが、乗り切るために費やした借入金や現場を離れた労働力を回復させるには、まだまだ困難が山積みです。
宇奈月温泉のそれぞれの旅館ホテルが、客室のリニューアルや食事内容のブラッシュアップ、現役アイドルとのコラボレートなど、個々の特性を活かしたサービスを展開しています。ドローンを飛ばしてのイベントの盛り上げなども行われています。
隣り合った施設が競い合うことも重要ですが、地域が同じベクトルで突き進んでいくこと、アフターコロナのこの時代は、このことが一番大切なことであり、次なる世代に繋げていく取り組みとなることでしょう。
これからも応援していきますね!