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大切な本⑪「ブラックボックス」

サバイバーからスライバーへ

もう6〜7年前になるだろうか、性暴力被害当事者の会に定期的に参加していた。確か当時お世話になっていた臨床心理士(SANEでもあった)の方からご紹介いただいたのだと思う。主催者の方も当事者でありながら、まだご自身にも燻る不調にも向き合いながら、地域で場所を確保して私たちの居場所を作ってくださってた。

 それまで色んなピア(自助)グループに参加したことはあったけれど、性暴力被害を明確に掲げた仲間に出会う機会はなかったので、ここでどれだけ勇気づけられたか言葉では言い尽くせない。

 被害を受けた年齢や期間、相手がどんな立場の人間だったか(少数派だが全く知らない人間からの被害も)、被害届を出した人出せないままの人(圧倒的にこちらが多い)、その後の心身への影響…もちろんそれらは人によって様々で、被害の大小を比べるものでもない。

 それでも父親とか兄とか家族からの性暴力を受けた方はやはり生活への影響も大きく、お話を聞くだけで胸がぎゅうぎゅう締め付けられた。

 そのグループで初めて知った「スライバー(thriver)」という言葉。性暴力やレイプには魂の殺人、サバイバーという言葉がよく使われる。物のように扱われ、人としての尊厳を踏み躙られた自分の存在そのものが嫌でたまらなくて消し去りたくて、死を選んでしまいたいと思うほどの強烈なダメージだし、自分もなんとかかんとか生き延びてきた感は根底にある。だからといって私という人間が全て「性暴力から生き延びてきた人」という括りに嵌められたくないとも思う。忘れることはできないけれど、痛みとうまく折り合いをつけながら「スライバー(成長するひと)」でありたい。

 ♯Me tooのうねりに加速度をつけてくれた伊藤詩織さん、刑法改正に向け多くのアクションを起こしてくれた山本潤さんをはじめ当事者が声を上げることの重みは計り知れない。歪んだ社会からのバックラッシュにも耐えながら(そんな社会が間違っているのに…世の中はなんて理不尽なんだろうと思う)形にして届けてくれてありがとう、と伝えたい。

 幸い私も長い長い絶望の時期は超えて、事実を振り返って冷静に語ることもできるようになってきた。スクールセクハラなどにからめていくつか取材も受けてきた。新聞記事やテレビ番組の特集で取り上げられることで広く問題意識を持ってもらえるきっかけになればと、基本断らずに受けるようにしている。どんな社会問題も当事者でないとなかなかその重大さに向き合えないからこそ、地道に声を上げていくことをこれからもライフワークにしていきたい。

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