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2024年度武蔵野大学国文学会研究発表大会

武蔵野大学文学部の教員と学生から構成される「武蔵野大学国文学会」。2024年度(令和6年度)最後の催しとして、恒例の「研究発表大会」が2025年2月7日(金)に武蔵野キャンパス7号館で開催されました。

開会の辞では、マックス・ウェーバーの「知的な誠実さ」が話題に。

今年度のタイムテーブルは以下の通り。

2024年度武蔵野大学国文学会研究発表大会
          
2025年2月7日(金)武蔵野大学7号館(7201教室)
◆ 開会の辞 武蔵野大学国文学会会長  楊 昆鵬
◆ 修士論文構想発表
◆ 修士論文報告
・『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』論──つくるの「攻撃性」をめぐって  李 鵬飛
・<変身譚>の研究 ──中島敦「山月記」を通して── 荒川琴乃
・日本文学におけるムカデの表象とその展開 伊藤 耀
◆ 研究発表 (14:40~)
・近代の日本女性が着用していた袴に関する基礎的考察 修士課程 鮎川由依
◆ 講演 (15:20~)
・文学全集と文学研究―永井荷風をめぐるいくつかのトピック
   本学教授 菅原克也
◆ 閉会の辞 文学研究科長 土屋 忍

研究発表大会」はその名の通り、1年間の研究発表を披露する場でもあり、修士論文の構想発表や報告が行われます。今年度は3名の修士論文が文学研究科に提出され、とりわけ鮎川さんの「近代の日本女性が着用していた袴に関する基礎的考察」は、今後の研究の広がりや社会的なインパクトも予感させるものでした。

大会の締めくくりには、今年度をもってご退職となる菅原克也先生による記念講演。菅原先生は2019年3月に東京大学を退職され、同年4月より本学教授として、教養教育の発展にご尽力されてこられましたが、文学部・文学研究科においても、「比較文学特講(外国文学)」や「比較文学研究」に加え、大学院のご指導まで、お引き受けいただきました。

テーマは「文学全集と文学研究―永井荷風をめぐるいくつかのトピック」。

菅原先生のご専門は、主に明治以降の小説や詩を中心とした文学テクストを、欧米の文学論や文学史との比較において読むという、比較文学。とりわけ近年の成果としては、2017年に東京大学出版会から刊行された『小説のしくみ 近代文学の「語り」と物語分析』があります。現在は、この書をより一般読者に開くかたちでの本をご執筆中とのこと。刊行が楽しみです。

ナラトロジーから日本近代文学の「語り」の枠組みを解き明かしていくスリリングな一書。

本日の講演タイトルは、「文学全集と文学研究──永井荷風をめぐるいくつかのトピック」でしたが、40年にもわたって文学研究者として生きてきたことを振り返り、どうして「自分が文学を研究することで生計を立てることが許されたのか?」=「文学研究とは何なのか?」という問いを、「情痴作家」としても知られる永井荷風を事例として、語っていただきました。「女優ナナ」の冒頭における「帽子の謎」も面白かったですね。

講演会のあとには、武蔵野大学で最後の教え子となる浅田さんから、花束の贈呈がありました。壇上を去る前に「わたしが好きな言葉なんですよ」とトートバッグを見せてくださったお茶目な菅原先生。そこには「I have always imagined that paradise will be a kind of library.(ずっと思ってきたんだ、天国はきっと図書館みたいなところだって)」というフレーズが。

「天国は図書館みたいなところ」というフレーズが書いてあるトートバッグ。


閉会の辞では、土屋忍研究科長が、直前の菅原先生の「全集」への不満や「注釈は論文となるか?」という問いを引き受けつつ、あらためて「知的に誠実であること」というウェーバーの言についてのコメントがなされました。文学部、文学研究の未来を見据えつつ。

土屋研究科長の知的で誠実な(?)「閉会の辞」。

さまざまな分野の研究者が集まっている武蔵野大学の強みを、次年度の文学部60周年に向けて、さらに磨いていくことが期待される言葉の数々。

ご参加いただいた学生の皆さん、先生方、長時間にわたって、ありがとうございました。


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