【ワインレビュー】ゼルバッハ オスター ツェルティンガー カビネットトロッケン【日常に寄り添う洗練された一杯】
ワイン情報
Selbach Oster Zeltinger Riesling Kabinett trocken
葡萄品種: リースリング100%
アルコール度数: 12.0% (残糖8g/L)
育成期間: フーダーとステンレスタンクで7ヶ月
年間生産本数: 8,000本
国: ドイツ
生産地域: モーゼル地方
生産者情報
生産者: ゼルバッハ・オスター(Selbach-Oster)
年間生産量: 年間約15万本
所有ブドウ畑: モーゼル川中流のベルンカステル地区ツェルティンゲン村を中心に、約20ヘクタールのブドウ畑を所有
平均樹齢: 樹齢80年以上の古木も含まれる
以下、補足情報です。
ドイツのPrädikatsweinについて
ドイツのPrädikatsweinは、ブドウの熟度に基づき以下の6つの階層に分かれます。
Kabinett(カビネット): 最も軽やかなスタイル。日常的な食事に合わせやすい。
Spätlese(シュペートレーゼ): 晩摘みのブドウを使用。果実味と酸のバランスが取れたスタイル。
Auslese(アウスレーゼ): 完熟房を選んで収穫。甘口ワインが主流。
Beerenauslese(ベーレンアウスレーゼ): 貴腐化したブドウを使用。濃厚なデザートワイン。
Eiswein(アイスヴァイン): 凍結したブドウから作られる特別な甘口ワイン。
Trockenbeerenauslese(トロッケンベーレンアウスレーゼ): 干しブドウ状態のブドウを使った極甘口ワイン。
このワインのクラスであるカビネットは、この中で最も軽く、フレッシュなスタイルで、日常的な食事と合わせやすい特徴があります。
栽培、収穫について
モーゼルと言ったら、この急勾配の畑ですよね。収穫したいですね。畑では「棒仕立て」が採用されており、垣根仕立てと比べてキャノピーの確保が難しく、生産性が低い方法です。しかし、急斜面では作業の効率を高める利点があります。また、この畑には100年以上の樹齢を持つフィロキセラ禍を逃れた古木が存在しているそうです。歴史を感じますね。
カビネットクラスのワインは早めに収穫するのが特徴で、緑色の房の状態で摘み取ることもあります。ブドウが熟すほど、リースリングに含まれるモノテルペン類(リナロールやゲラニオール)は増える傾向があります。そのため、一般的にはアウスレーゼの方がカビネットよりもモノテルペン類の濃度が高いとされています。ただし、ワインのスタイルや香気成分のバランス、貴腐化の有無も影響するため、一概には言えません。
どのタイミングで収穫するかは、ワインのスタイルを決定づける重要な要素です。特に成熟したブドウは腐敗しやすいため、収量を優先して早摘みするか、成熟を待って品質を追求するか、生産者にとって常に判断が求められます。ぶどうは成熟するにつれ、腐敗しやすい状態になっていくので、私たちがワインをつくる日本という条件不利地域で晩熟品種をワイン生産をする場合は、収量つまり腐敗する前にとるか、それとも成熟を待って品質をとるかのシーソーで判断が揺らぎとても難しい決断なんです。
醸造について
Selbach-Osterのワイン作りは「ハンズオフ(手を加えない)」を基本としたシンプルなスタイルです。
まず、ブドウを搾汁した後、軽いデブルバージュ(清澄化)を行い、果汁中の固形物を取り除きます。発酵は大樽(フーダー)を使用して低温で行われます。リースリングのようなアロマティックな品種では、新樽の使用を避け、大樽やステンレスタンクを用いることが一般的です。これは、オークの香りがリースリング特有のアロマを損なう可能性があるためです。
甘口ワインでは、酵母が糖分を消費し切る前に発酵を停止させます。発酵の停止には、以下の方法が考えられます。
冷却とフィルタリング: ワインを冷却し、酵母の活動を停止させた後、フィルタリングで酵母を除去します。
亜硫酸の添加: 酵母の活動を抑制する方法で、Selbach-Osterの「ハンズオフ」の理念を考慮すると、この方法が採用されている可能性があります。
発酵後、軽い澱引きを行い、その後シュール・リーで熟成させます。このプロセスにより、ワインに深みと滑らかさが加わります。瓶詰めの際は、温度管理が重要です。リースリングのアロマの多くはエステルに由来し、20℃以上になると揮発するため、低温を維持することで香りを保ちます。
Selbach Oster Zeltinger Riesling Kabinett trockenは3.9点でした。和食にも合うグビグビいっちゃう素敵なワインでした。