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気になる投稿~土木を風景から考える-令和6年度土木学会全国大会 基調講演~

土木を風景から考える

久しぶりに気になる投稿です。
『土木を風景から考える』。

経済性が大事な要素になりますが、そもそも自然の中に構造物を造ることは、風景に変化を起こします。

「風景」「景色」「景観」

風景」「景色」「景観」。
似た言葉ですね。
皆さん、無意識のうちに使い分けておられるかもしれませんが、上の二つ「風景」と「景色」、この言葉は平安時代からありました。
「景色」のほうは、景という字の代わりに気持ちの気を書いたり、ひらがなで書かれたりしていて、今で言う「景色」というよりは、人の怒れる「気色」みたいに、見えているものの向こう側のことを推測するような用法で使われたりしています。
いずれにしてもこの二つはとても古い日本語です。
それに対して、「景観」という言葉は、明治時代にたくさんの外来語が日本に入ってきたときの一つの翻訳語として、ドイツ語のランドシャフト(Landschaft)、いわゆるランドスケープ(landscape)を景観という言葉に訳して生まれました。

土木を風景から考える-令和6年度土木学会全国大会 佐々木葉会長 基調講演
より引用

ほとんど意識したことがなかったですが、こんな違いがあるんですね。
そして景観は明治以降の言葉なんですね。
『景』の代わりに『気』を使う話、とても興味深いです。
気持ち次第で風景、景色は変わると考えるからです。

「景観は人間を取り巻く環境の眺めである」

土木構造物が新たに出来ることは、その周囲に変化をもたらします。
視覚的な変化もありますし、構造物からうける受益や損害(ないことが望ましいですが・・・)も変化です。
同じ構造物がそこにあっても、あるひとにとってそれが好意的な関係である、逆に敵意的な関係であるかの違いによって、まったく印象が違うと思うんですよね。
構造物への立ち位置によって、見え方は異なることを前提に考えていななければならないと思うわけです。

「ある風景」「なる風景」「作る風景」

「ある風景」というのは、例えば松島のように自然の、そのままある風景です。
「なる風景」というのは、例えば田園風景。
今、私達は美しいなと思いますが、それはこういう美しい田んぼを作りたいと思って作ったわけではなくて、こういう土地の条件の中でお米を作っていくためには、どういうふうに田んぼを配置して、どう水路をつくったらいいかなと工夫した地域知の結果、こういうふうになった。
そういう意味で「なる風景」です。
それに対して「つくる風景」のように意図をもって新しい風景を作っていく場合もあります。
ですので、通常何か風景づくりというと、一番右側の「つくる風景」のことだけを考えがちですが、「ある風景」をどのように見せるのか、あるいは守るのか。
「なる風景」を生み出すメカニズムをどのように守っていくのか、次に継承していくのか。
これらを全部含めたことが土木の景観の仕事になっています。

土木を風景から考える-令和6年度土木学会全国大会 佐々木葉会長 基調講演
より引用

土木技術者からは、脱落しつつあるわたしですが、まだなんとか「つくる風景」の側にいます。
「つくる風景」によって、「ある風景」を活かせるかもしれない。
「なる風景」から「なってしまった風景」を、また「なる風景」に戻す努力をしていくのも、土木の役割かもしれません。

自然があって暮らしがあって人がいて、その相互関係の中で風景は生まれてきます。
土木の作るインフラというのは、この関係の巡りを可能にする仕事です。
ちょっとざっくりした言い方かもしれませんけれども。
自然そのものにアプローチすることもあります。
暮らしのあり方そのものにアプローチすることもあります。
そして人々の価値観にアプローチすることもあるかもしれません。

でも、この巡りの中で出てくる風景、それにやはり土木っていうのはすごく関わっているんだと思います。
反対向きの矢印も当然あると思います。
こういう関係の中で生まれてくる風景が奥深くなっていくためにはどうしたらいいんでしょうか?

どういうふうに私達はアプローチをしていったらいいんでしょうか?

例えば、小さな気づきを繰り返していくこと、あるいは過去を振り返ること。
対話を皆さんと重ねていくこと、そして、立場を変えてみることもあるかもしれませんし、いつもと違う環境に身を置くことで新しい見方ができるかもしれません。
そして、思いっきり遠くを見てみたり、当たり前を疑ってみたり、自分の言葉で語ってみる。
これは、111代会長の田中茂義さんの言葉ですが、そんなことをからめながら、私達はこの土木の奥深い風景を一緒に作業をしながら、一歩ずつ前に進めていくことができるんじゃないかなと思っています。

土木を風景から考える-令和6年度土木学会全国大会 佐々木葉会長 基調講演
より引用

どういったアプローチが必要か。
どういったアプローチが出来るのか。
土木技術者の存在は、より重要だと思うし、未来への責任ある大事なものだと思うのです。
先人たちがしてきたように。

では。

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てっさん
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