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小さい頃、地味に勘違いしていたこと

幼い勘違い

・ひらがなの「ま」の横線は何本でもいいと思っていた。
気分で足したり減らしたり、正解はいつでも自分の中にあった。

・「お」の最後の一角を左下に伸ばすと綺麗な「あ」が書けると思っていた。
小さな発見で埋まったノートは宝物だった。

・ト音記号のぐるぐるは何周でもいいと思っていた。
終わりのない冒険。どこで止めても意外とまとまる旋律。

・「正しい鉛筆の持ち方」のポスターを見て、自分の持ち方が間違っていると知った。
どうしても変えられない癖は、自分らしさとして受け入れるしかなかった。

・人混みやエスカレーターでは、片腕を上げて誰とでも手を繋いでいいと思っていた。(1番やばい)
誰と繋ぐかよりも、目の前の危険を回避することが大事だった。

・天使の輪っかには棒が付いていると思っていた。
教育テレビの人形劇で観た天使の姿をそのまま絵に描いたら兄に笑われて、相対的にはどうしたって幼い自分に愕然とした。

・厚着はダサいと思っていた。特にカーディガンやタイツは「赤ちゃんすぎる」と拒否していた。
大人になると、柔らかい服に包まれている赤ちゃんは思わず目で追ってしまうくらい可愛いのになあ。

・湖に架かる大きな橋はいつか崩壊すると思っていた。
避けることで安心して、渡ることで少し強くなれた。

・ブラックサンタの存在を知って泣いたのは、悪い子寄りの自覚があったからだろうか。

・100円玉を握りしめて駄菓子を選ぶ以上の幸せはなかったのに、今では1万円あっても満たしきれないほどの幸せを求めているー。

当たり前の終わり

大好きだった幼稚園の先生の年齢を超え、大好きだった小学校の先生の年齢に並んだ自分。

たくさん叱って、たくさん褒めてくれた大人たちと今の自分は何が違うのだろうか。何か違うのだろうか。

気がつかなかった愛情、止められなかった暴力。
永遠に続くと思っていた小さな世界。
ありふれた日常に疑う余地などなかった。
だから幸せで、おかしくて、きらきらしていた。

罪を認め、謝罪し、涙を流す者もいた。
大人はみんな正しいと思っていたのに、なぜ、どうして。完璧だと信じていたものは少しずつ現実に溶けていく。

壊れては作り直す世界

世の中には、分かち合うことでしか輪郭を現さない真実がある。

何度も新しい一歩を仕切り直してきたのは、世界がひっくり返る痛みに飛び上がった弾みに過ぎないのかもしれない。

たくさんの勘違いをしてきたし、今もきっと何かを勘違いしている。

でも、壊れては作り直してきた歴史が、「どこにいても大丈夫、やっていける」と背中を押してくれているから。

大人になったわたしが暮らすのは、幼い頃は想像もしていなかった街。

縁も愛着もない土地にも、「ただいま」を言い続けていたら、あの頃に近い温度の「おかえり」が返ってくるようになってきた。

不完全で、おかしくて、やっぱり幸せなこの世界。わたしが帰る場所。

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