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素描

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記憶のままに素描する
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【素描】枝男

男が枝を食っている。

枝の太さは箸くらいで、長さも箸二膳分くらいである。

男は枝を口から離し、手に持つと、ブンブン振り回しながら、車が行き交う大通りをのそのそと横断する。かと思ったら、車道の真ん中で立ち止まる。

枝を口にもどし、腕にかけていたコートをフワリと羽織り、白いハットを被り直してから、のそのそと車と同じ方向に歩き出して行った。

【素描】野球少年

山吹色にけむる秋の光に向かって少年が走っている。

黄色の帽子をかぶり、新品みたいに真っ白なユニフォームを着ている。
赤いリュックサックを背負って、手には青いバット。

「ヤーレー」とたのしげにのびやかに声を上げる。

横断歩道で止まると、ひとつ素振りをしてみせた。

信号が青に変わると、光に向かってまた走って行った。

【素描】真っ白な女

真っ白な女が歩いている。
そのフサフサとした豊かな白さを支えるように、背筋はピンと伸びている。

花柄の緑のワンピースの上に、ピンクのカーディガンを羽織り、
秋色に染まる風景の中で、彼女だけが鮮やかに存在していた。

「誰のためでもない。私は私のためにオシャレをするのよ」

彼女の背中から、そう聞こえてくるようだった。

【素描】ふたりの坊主

坊主頭の男子学生がふたり、バス停に座っている。
白い半袖シャツにチェックのズボン。
ふたり揃ってアイスを食べている。

「あ、オレがいずれお世話になるやつ」
ひとりの坊主がそう言うと、
もうひとりの坊主がケタケタ笑う。

なんだろうと目線の先を見てみると、パトカーが走っていった。
ブラックだなと、わたしも笑った。

【素描】お腹の大きな少年

お腹の大きな少年が自転車に乗っている。

キャラクターが印刷された桃色のTシャツを着ていて、ちょうどそのキャラクター部分のお腹が大きい。

少年は華麗にターンして車道を横断していった。

【素描】赤いメロンパンの女

赤いワンピースを着た女が、おおきなメロンパンを豪快にほおばっている。

背筋はしゃっきりとのび、黒髪のワンレンは肩より少し短く、色味のない涼しい顔で窓の外に目をやっている。

外は雨。

うす暗い中、帰りをいそぐ人たちを、まっすぐに見つめる。

メロンパンを食べ終わると、無駄のない手つきでマスクをつけ、さっそうと店をあとにした。

窓の外に目をやる。

信号が青に変わると、彼女は刻々と深まる夜道に

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【素描】青い服の少年

信号機が青に変わった。

わたしが一歩ふみだすのと同時に、となりにいた小学5、6年生くらいの男の子が上半身をぐっと直角に曲げ、まえかがみになったまま、いきおいよく走り出した。

男の子は青いポロシャツを着て、左手にはミネラルウォーターのペットボトルをバトンのように持っている。右手はぴんと平たく指をそらえ、その細長い両うでを軽やかに振りながら、わたしのまえをぐんぐん走り抜けていく。そう、カール・ルイ

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【素描】青い服の女

夜道のバス停で一人の女が座っている。

半袖の青いサマーセーターに足首まである鼠色のプリーツスカート。肩にかかるくらいの髪はとれかけのパーマで、暗闇に青く光っている。

車のライトに照らされて、ときおり見せる横顔はどこか物憂げで、何かを思い悩むように腕を組んでいる。