秒速5センチメートルという作品と私の生き方
※本記事は秒速5センチメートルのネタバレを多く含んでおります。ご了承ください。
いつでも捜してしまう どっかに君の笑顔を___
どうも、人生も腹痛もしっかり拗らせているまっちゃです。
皆さんはしっかり生活リズム整えましょうね。私みたいに腹痛で悶えたくなければ。
ところで、皆さんは新海誠さんをご存知ですか?
おそらく大半の人がご存知の、君の名は。、天気の子、すずめの戸締まりなどの作者です。
その新海誠さんが2007年に公開した映画が「秒速5センチメートル」です。
君の名は。が発表される10年ほど前に出された映画です。
本作は、「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3部で構成されています。
場所や年代も動きますが、やはり中心は主人公の貴樹が持つ明里への恋愛感情です。
本記事では、3部構成の本映画を順に追いつつ、私の体験談を元に恋愛のあれこれについて喋っていきたいと思っています。
「桜花抄」- 小・中学生の恋愛事情について -
あらすじ:小学生の貴樹と明里は互いに特別な想いを抱くも、明里は卒業と同時に引っ越してしまう。
中学生になって、2人は文通を続けていたが、貴樹も年度末で引っ越すことが決まり、貴樹は引っ越して明里との距離が更に遠くなってしまう前に明里に会いに行くことを決意。
約束の日、不幸にも大雪に見舞われ、電車は大幅に遅延。約束の時間はとうに過ぎていく。
深夜になってようやく明里の待つ駅へ辿り着いた貴樹。明里は待っていてくれていた。明里は貴樹の姿を見て涙を流した。
貴樹と明里はその後、雪の降る中で口付けを交わした。2人は畑の納屋で沢山喋った後ぐっすり眠り、翌朝貴樹は電車に乗って帰っていった。
あなたは、初恋を経験しましたか?
もしかしたら、まだ恋愛ってどんなものなのか分からないって人にも中にはいると思います。
私の初恋の話は、ここで話すと文量がとんでもないことになってしまうので今回は割愛します。
あなたにとって、初恋のイメージってなんですか?
多分、甘酸っぱいとか、苦いとか、報われないとか、あんまりポジティブに向かうことが少ないと思っています。私もそうです。
この「桜花抄」でも、貴樹は口付けの後にこう言っています。
「僕達の前には、未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく横たわっていた。」
「僕達はこの先もずっと一緒にいることはできないと、はっきりと分かった。」
当時中学一年生にして、ここまで先が見えてしまうものかとも思いました。また、そう思えるくらい、明里のことが本当に本当に大切だったんだなとしみじみ思いました。
私が中学一年生の時は、自分のこと、今この瞬間のことしか視野になくて、色んな人に迷惑をかけてしまったり、自分で自分の首を絞める行動ばっかりしていたもんですから、彼の達観ぶりには感服してしまいます。
「コスモナウト」- 初恋の呪縛について -
あらすじ:種子島に引っ越してきた貴樹に、花苗は恋心を抱く。
花苗は、趣味のサーフィンも上手くいかず、卒業後の進路にも迷っていた。
「次、波に乗れたら彼に告白するんだ」と何度も波に乗ろうと試みる。
ある日、半年ぶりに波に乗ることが出来た花苗は、今日こそ彼に告白しようと心に決めて、いつものように貴樹と寄り道をして帰ることに。
しかし、優しく接してくれる貴樹に対して、「お願いだから優しくしないで……」と泣き出してしまう花苗。
困惑する貴樹と泣いてしまう花苗の後ろを、ロケットが飛んでいく。
花苗は「貴樹くんは自分のことを見ていない」ことに気がついて、告白することはなかった。
その晩、「きっとこの先も、どうしようもなく彼のことが好きなんだ」と涙を流しながら花苗は眠りについた。
私はこういう切ないラブストーリーが大好きです。
私はこの「コスモナウト」を見終わった時、頭が空っぽでどうにかなりそうでした。要するに虚無です。
それだけ登場人物に共感できて、のめり込めたのだなと思えるので、映画を見る際に訪れる虚無を味わうことが私は好きだったりします。
さて。
あなたは失恋したらそれを引きずるタイプですか?それともすぐ立ち直れるタイプですか?
彼は失恋こそしていないものの、圧倒的前者であったが為に引っ越し先で出会った花苗の想いに応えられませんでした。
違う問いをあなたに投げかけたいと思います。
あなたは今までどんな恋愛をしてきましたか?
そして、どの恋愛が1番印象として残っていますか?
どの恋愛が1番パッと浮かびますか?
私は、やっぱりどうしても初恋が1番鮮明に残っています。
そのせいで、初恋を超えるような恋心が持てずに、他の恋愛を無下にしてしまった経験があります。
きっと、貴樹も私と似たような感情を持っているのではないだろうかと私は推測しました。
初恋が印象的であればあるほど、初恋がそれ以降の人間関係の基準になってしまうからです。
だから、おそらく花苗の想いに貴樹は気づいていて、その上で花苗に正面から向き合うことが出来なかったのではないかと思いました。
花苗も「優しくしないで」って言っているので、おそらく貴樹が誰かのことを想っているということは薄々分かってはいたのだろうなと思いました。
「秒速5センチメートル」- 過去と決別することについて -
社会人になった貴樹。しかし、職場でメンタルが限界に達し、退職。
別の女性と交際するも、「1000回連絡をして、心は1cmくらいしか近づけませんでした」と言われて別れる。
明里は別の男性と結婚することが決まっていた。
主題歌とともに、2人の対比された人生が映し出される。
ある日、貴樹は踏切で明里らしき女性と出会う。
振り返ると電車が2人を遮り、電車が通り去った後、女性はいなくなっていた。
貴樹はそれを見て、柔い表情を浮かべるのだった。
とんでもない結末でしたね。
1回見ただけじゃバッドエンドとも捉えてしまいがちな本作。
私なりに3部をゆっくり解釈してみます。
メガネをかけた女性=貴樹が社会人になってから交際した女性とも、先述のようなメールを打たれてしまうほど、まだ貴樹にとっての1番はおそらく明里です。
文通が止まってしまったのは、この年頃ならではのあるあるで起きる自然消滅ってやつだと私は思います。どちらかが故意に送るのをやめたわけではないと思います。
そして明里は別の男性と結婚していました。
明里は、もちろん貴樹のことを想っていないわけではないと思いますが、貴樹とは違って流れゆく日常の中で上手く落とし込めていけたのだと思います。貴樹にはそれができなかった、ただそれだけの差です。
そんな貴樹も、最後のシーンで微笑みのような表情を見せました。
この秒速5センチメートルがある種のハッピーエンドだと言われる理由は、このシーンで貴樹がようやく初恋の呪縛から解き放たれたからではないかという理由から来ているものだと思います。
私はそんなことで解き放たれるものなのかと疑問に思ったりもしますが、案外人間関係ってそんなものだったりするのかなとも思いました。人間関係、難しい。
「総括」- この映画が賛否両論な理由 -
むしろこの内容で否定的意見がなかったらそれはそれで面白いわけですが。
この作品、おそらく感じ方が何パターンもあると思っていて、
「私と似た境遇すぎて辛い」という人、逆に、
「私にはこの感情が理解できない」という人、
「切ない恋愛でかなり好き」という人、
「貴樹が何故こんなに引きずってるのか」なんて言う人、
色んな人がおそらくいると思います。
じゃあ何故私がこの作品を好きなのか。
それは、前回記事にも関連してきます。ちゃっかり前回記事を宣伝していく
前回記事で、私は「ひとりぼっちじゃない曲」が好きと言いました。
秒速5センチメートルも例外ではございません。
秒速5センチメートルは私にとって、「私と似た境遇にいる人間が如何にして過去を振り切って前を向いていくか」という物語だと思っています。
ポイントは"私と似た境遇"という点です。
これが、私と真反対の境遇を生きてたらあんまり刺さらなかったのではないかと思います。
また、似た人間であるが故に、似た人間が私より秀でているポイントがあるとそこに強く惹かれていきます。
私の場合、貴樹の明里に対する一途っぷりと、ラストでおそらく克服とも取れる表情を見せたことが彼に惹かれる大きなポイントでした。
また、もちろん天気の子のように、
天気を操れるヒロインがいたり拳銃ぶっぱなす主人公がいたりする展開も面白いですが、
秒速5センチメートルはかなり現実に寄せていて、切なさと残酷さを孕んでいるごく普通の日常でも起こり得そうな物語展開となっているところが個人的好感ポイントです。
現実に寄っている方が人物への感情移入がしやすく、色んな感情を拾えて楽しいと私は思います。
私は、沢山過去を振り返りながら生きています。
思い出に浸ったり、苦い記憶を思い出して苦しくなったり、
逆に楽しかった出来事を頭の中で浮かべて1人で嬉しくなったり、
過去を振り返ると色んな光景、色んな感情が蘇ってきて楽しいです。
そんな過去の振り返り癖に、こういう作品が付随することで、その過去の情景と感情に彩りが発生すると私は思います。
もちろんこの作品の全てを体験してるわけではないですが、同じような感情、同じような状況を体験していれば、その情景と感情に新しい色が生まれてくるきっかけになると思います。私にとって、秒速5センチメートルがそういう意味では1番大きな存在です。
ここまで長々読んでくださり、ありがとうございました。
新海誠作品では、「言の葉の庭」という作品も非常に現実寄りで人間性豊かな作品となっています。是非見てください。
人間関係、本当に難しいけどそれが人間として生きる上での面白い悩みだったりしますね。ではでは〜
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