2020年ノーベル文学賞 ルイーズ・グリュック

2020年のノーベル文学賞は、日本で例年騒がれる村上春樹でも、近年期待値が上がっている多和田葉子でも小川洋子でもなく、アメリカの女性詩人ルイーズ・グリュックが選ばれた。
前年の受賞者ペーター・ハントケも詩は書くものの、詩人としての受賞者は2011年のトーマス・トランストロンメル以来となる。
詩を嗜む端くれとしては詩人が選ばれたことは素直に嬉しいのだが、決して詩人が受賞するのが珍しい訳ではない。
残念ながらルイーズ・グリュックの詩集は日本国内では翻訳されておらず(詩への関心の低さもあるが、詩の翻訳は原文の韻律を訳しても伝えきれない側面もあって難しいのだ。)、この国の文学観は小説中心に固まってしまっているだけに日本の詩人も内にこもらないで世界を目指して奮起して欲しい。
ルイーズ・グリュックの詩を調べて代表的な「Aboriginal Landscape」「Afterword」の英文を訳して読んでみたけど、19世紀文学史上の天才と呼ばれた女性詩人エミリー・ディキンソンとまでは言わないが、自伝的なところに古典や自然の描写を組合せた作風は、まさに現代的抒情詩人であり、その長年の活躍からすれば選ばれて然るべき人物ではないかと思う。

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