村上隆はロリコンか?(違うから安心して)
村上隆はロリコンか?(結論:違う)
newjeansが日本でのライブ(ファンミ)を行うにあたり、新しいコラボレーション先の一つに選ばれたのが、日本を代表する現代ARTIST村上隆。
「でも村上隆ってロリンコンじゃないの?」
って心配する「Bunnies(バニーズ)」(newjeansのファン)達へ……。
偶然にもニュジのファンであり、村上隆の出版書籍を色々読んでいる私がファン目線で簡単に説明します。
先に結論をお伝えしておくと、村上隆さんはロリコンではありません。
また、コラボ先として選ぶ日本人アーティストの中ではかなり最適な選択だったと思います。
ロリコン的代表作『Miss Ko2』
Miss Ko2 Original (Project Ko2)(1997)
村上隆が有名になったきっかけでもあるKOKOちゃん。
アンナミラーズ(ミニスカートメイド服のような制服が人気のアメリカのレストラン。日本で70年代に流行した)の様なドレス。(村上隆本人が公言)
金髪にハイヒール、大きな胸に幼い顔立ち。よく見るとパンツは見えてるし乳首も見えます。最悪ですね。
完全無欠にロリコン向け!という感じの風貌です。大きさは人間と同じ実物大です。
何故こんなものを制作し、評価されたのか。説明をさせていただきますね。
まず西洋美術において美を表す彫刻作品といったらなんでしょう?
それはミロのビーナスやダビデ像ではないでしょうか?
半裸、もしくは全裸の美男美女。かっこいい筋肉。いい感じに大きい胸。
それでは、そのミロのビーナスやダビデ像の様に「崇拝される美」を現代(90年代)日本風に表現したらどうなるか?
それはまさに、金髪ミニスカートの少女像になってしまうのではないか?
というのがこの作品です。
戦後日本はアメリカ文化を沢山取り入れて復興していきました。バーガーに洋服、日本式ではない建物……衣食住そしてアニメーション、全てにアメリカの影響があります。
今や日本の文化とも言えるメイドカフェのメイド衣装も、フレンチメイドという一部のアメリカの人が好んでハウスキーパーに着せていたデザインに似ています。(映画「ジャンゴ」(2012)では趣味の悪い農園主が黒人の女性に着せています)アンナミラーズにもその影響はあるでしょう。
そのアメリカ文化が日本に伝わり、金髪、碧眼、長い脚、主に女性的イメージの仕事服であるエプロン、それに加え化粧は無し、無垢な表情、パンツが見えてるのに気付いてない幼女的とも言えるバカっぽさ。
村上隆はこれを「日本人はこういうのが好きなんですよ。びっくりするでしょ?」とニューヨークで発表しました。
つまり、村上隆自身はロリコンではなく、日本人のロリコン性を世界に向けて暴露した、という状況です。
村上隆さん自体はとても勉強熱心でコンプライアンス的なこと、世界各地の宗教、文化、差別、など把握しています。
そうでないとアメリカの上流でまともに会話はできません。
「アーティストだから何もわかんない」は絶対に通用しません。
更にペドフェリアなんて口も聞いてもらえません。これはキリスト教などにも関連している絶対的タブーです。
あくまで「ペドフェリアが大手を振って歩ける国、日本」を紹介する側としてアメリカデビューしました。
実は村上隆はこの作品以前は兵士の模型を四角い箱に貼り付けた「ポリリズム」(1991)や、宇宙船の噴射口にもミサイルの発射口にも見える様なライトを並べた、明るくどこか息苦しい「sea breeze」(1992)など、一見して村上隆の作品には見えない作品を制作していました。
戦争、とりわけ「戦後の貧しい日本」のテーマは、今のアニメ的な作品にも実は繋がっています。
晴れて日本の美術界、オタク界双方の嫌われ者に
日本を「ロリコンの国」として「アニメ的表現」でアメリカデビューした村上隆がその後日本でどうなったかというと……。
勿論、とっても嫌われてしまいました。
日本のアートをかっこよく世界に売り出したかった美術界でも「なんてことしてくれたんだ」と嫌われ、ジブリのアート性で堂々と、同時にロリコン趣味でひっそりと生きていたオタク層にも「なんてことしてくれたんだ」と嫌われました。
規模的には自分の美術館を持ってもおかしくない村上隆ですが、名前のついた美術館どころか国立の美術館に作品所蔵も中々してもらえない状況です。
(実は同じように茶化したファッション界では受け入れられている。その話は最後の方に記載。ダリもそういう面ありました)
日本の男性的権力構造に入れなかった、そして背を向けてアメリカに行った村上隆は、どこか能力があるのに企業で出世できない状況の、能力のある女性と、共通・共感出来る点が多かったりします。
ここでふわっと思い出して欲しいのがミン・ヒジンさん。
ちょっと状況が似ていませんか?
メンバー発表前からの"最古参ニュジおじ"村上隆
newjeansという新しいグループが出るらしい。
しかもK-POPのヒットグループを沢山産み出しているミン・ヒジンさんがプロデュースするらしい。
私はまだメンバーも発表する前、ウサギや落書き風のイラスト、古いPC画面のようなグラフィック(だったように思う)だけが並んだnewjeansのインスタグラムに期待感を膨らませ、早速フォローしました。
すると、フォローしている有名人のフォロワーのアカウントが小さく表示される場所に見覚えのあるアイコンが……。
そうです、それは村上隆さんの公式アカウントでした。(多分、初期からいたと記憶…)
村上隆さんは日本人、そしてアジア人アーティストとして(仕事・勉強の一環で)流行しているものは一通り把握しているように思います。
鬼滅の刃とかもチェックしていましたし、賞を取った音楽などは内外問わずリサーチしているようです。BTSにも関わりのある方が居ます。
K-POPはグラフィックアート、映像、音楽、思想、流行、等等全てを総合的に兼ね備えている新しいメディアなので、ミン・ヒジンさんの新グループとして早速注目していたのだと思います。
まさに最古参ニュジおじです。
信頼が置けます。
newjeansのティザーはアメリカ風
2024年5月1日、村上隆が手がけたnewjeansのティザーが出ました。
村上隆御用達の昭和アニメのセル画調カラーではなく、まったりとしたおしゃれな色味です。
明らかにディズニーのアリスを意識した作りになっています。
パワパフもアメリカのアニメなので、アメリカとアジア(日本)をテーマにしている村上隆からこのティザーが出るのは納得。
アリスは白いウサギを追いかけるので、newjeansとピッタリです。
ファッション界で受け入れられた村上隆
ここは余談ですが、2004年、村上隆はルイ・ヴィトンとコラボしました。
このコラボレーションは、先ほどのMiss Ko2でART界を茶化した時同様、ファッション界を茶化すタブー的コラボでした。
ART界から見たファッション界は「中身の無い外側だけを量産してそこそこ高額で売りつける世界」でした。
そこで1点もので高額な村上隆のアートをルイ・ヴィトンのバッグに沢山プリントすることにより、ARTの価値を破壊しました。(食玩としてMiss Ko2を販売した時と同様の価値破壊)
そして貴族階級御用達のルイ・ヴィトンにアニメな絵をプリントすることで、ハイブランドの価値も破壊しました。
これは単なるコラボレーションではなく、村上隆のアート活動の一環でもあった訳です。
(価値を破壊するというアートは他にダミアン・ハースト(イギリス)などが有名です)
想定外だったのは、想定よりもポジティブに人気が出てしまい、後続のアーティストコラボが他のブランドから続々と出てしまったことです。(書籍にも確か想定外と記載されていました)
本来ならば村上隆は「ARTとハイブラの価値を破壊した嫌われ者」「タブーを犯したダークヒーロー」的立ち位置になるはずが、ただの流行の先駆者、守銭奴な雰囲気を纏うことになってしまいます。
しかしながら、どこまで行っても「西洋美術のおまけ」な扱いをされる白人貴族階級意識の根強いART界と違い、新しいもの、かっこいいものが好きなファッション界、とりわけインディーズファッションやストリートファッションのブランド・デザイナーにその姿勢が広く認められ、おそらく村上隆自身の「オタクから見てファッションてキラキラしてて苦手」という状況を乗り越え、ファッション界といい関係を沢山築いていくようになりました。
一見ボロボロに見える村上隆さんのファッションですが、実は上から下まで、具体的にはスニーカーまでアーティストメイクなレア物、一級品だったりします。大事な場面では特に。
ああ見えて(ああ見えて)自分自身のブランディングにも気を遣っています。(多分スターウォーズのジェダイ・マスター、仙人、世捨て人、みたいなイメージを意識してるんじゃないかな……。)
さいごに
実はここまで書きましたが、私は村上隆さんの作品はちょっと苦手です。
でも彼の書く書籍や文章は大好きで、いつも何か出るたび、インスタの文章も含め、大喜びしながら読んでいます。
なんで苦手かというと、色が男の子っぽいからです。
恐らく昭和アニメのセル画のイメージで「安っぽい国、日本」を表現しているんだと思います。
しかし今回のnewjeansのティザーは色がとっても可愛い!
正直、あの人とかあの人とか…有名な日本アーティストは色々いるけど、村上隆が選ばれて良かった。と思っています。
絶対変なこと言わない、国際基準で常識人だから。(日本の有名な人、前時代的な意識の人多いので)
私は期待してこれからの展開を待っています。