『バルダーズ・ゲート3』を遊ぶ前に これだけは押さえておきたいD&D基礎知識
『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』など並み居る強豪を押しのけ、著名なゲーム賞『The Golden Joystick Award』と『The Game Award』にて、それぞれ大賞を含む7冠と6冠を達成。
そんな中で日本語版の発売が12月21日に迫る『バルダーズ・ゲート3』ですが、日本人は「誰だこいつ?」という目を向けられているのも事実です。
ゲームそのものの魅力については既に大手のゲーム関連メディアだったり、既に日本語パッチで遊ばれている方などが紹介されているので、そちらに譲る事とします。
特にdoope!様に掲載されたものは端から端まで書かれており、圧倒的な分量を誇ります。
なので、私は少し違う方針で行こうと思います。つまり、実際に遊ぼうと思われた方、そしてD&Dにあまり詳しくない方のお手伝いをしたい。
『バルダーズ・ゲート3』の人気は、海外で元々根強い人気のあった原作『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下D&D)が、2014年開始の第5版によるルールの大幅刷新や、プロ声優の仲間内グループによるネット配信の爆発的流行など、社会現象的勢いがあった中で、そこに『バルダーズ・ゲート3』本編の妥協のないハイクオリティなゲームプレイが合わさり、2つの賞を総なめするという結果に至りました。
向こうでは普段原作D&Dを遊ばない層でも『バルダーズ・ゲート3』を楽しまれている方は多いとはいえ、海外のD&D人気ゆえか、あるいは「Show, don't tell」(語るな、見せろ)というモットーが浸透している欧米言語圏のファンタジー感覚ゆえか、D&D固有のキャラクターや世界観を説明もなく放り込んできてしまい、日本人からすればもう知っている面をしているように感じてしまいます。
そこでこの記事では、その(カルチャー?)ショックを和らげるべく、物語に関わる基本的な要素を、極力ネタバレにならない範囲で少しでも紹介しようと思います。
一度にすべてを読み切る必要はありません。遊ぶ前に軽く流し読みして覚える程度でも、遊んでいてわからない所があった時に戻ってきても構いません。何せ基礎知識っぽい部分だけでも量は多いので…。
なお、固有名詞の訳語の扱いが不明なため、主に原作TRPGでの現行の訳語(一部他のバージョンで翻訳による表記ゆれがあればそちらも)を使用しています。発売後食い違う部分があれば、適宜読み替えてください。
舞台
フォーゴトン・レルム / ソード・コースト
D&Dの世界観の根本は公式のものから卓オリジナルまで、様々な世界観が浮かぶ多元宇宙です。
そして、『バルダーズ・ゲート3』の舞台となるのは『フォーゴトン・レルム』の世界観設定。D&Dの中にさらに『フォーゴトン・レルム』という名前のシリーズがあると考えてもらって構いません。ガンダムで言う「宇宙世紀」のようなものです。
そして、さらにその中でも惑星トリル(トーリルとも)、フェイルーン大陸西岸の「ソード・コースト」地方が舞台となります。
固有名詞が大量に出てきましたが、とにかく「トリル」とか「フェイルーン」や「ソード・コースト」といった単語が出てきたら今いる地域の事を指します。
自分の知っている限りの知識で例えるならば、初代『ドラゴンクエスト』で言う「アレフガルド」、『ブルーアーカイブ』で言う「キヴォトス」に相当する単語という事です。
フォーゴトン・レルムは『ダークエルフ物語』などの海外では有名なシリーズの舞台でもあるため、公式にプッシュされる事の多い世界観です。
最近でも23年3月末日に公開された映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』の舞台として、ご覧になられた方の記憶には新しいでしょう。また、こちらの映画でも、後述する「バルダーズ・ゲート」に触れられていました。
一方で、まだご覧になられていないという方は間違いなくオススメです。
こちらの映画も解説記事を投稿しています。
おかげ様で5万ページビューを達成して、嬉しい限りです。
バルダーズ・ゲート
本作のタイトルであり、冒険の舞台の一つである「バルダーズ・ゲート」は、そんなソード・コーストの港町。
バルダラン、あるいはバルダーと呼ばれる英雄が持ち帰った巨万の富を元手に発達した浜辺の村は、いつしか村の門から「バルダーズ・ゲート」(バルダーの門)と呼ばれるようになり、急成長と共に貧民、ならず者たちから貴族まで、様々な人々を惹きつけた結果、現在の栄華と犯罪にまみれた大都市となりました。
バルダーズ・ゲートは数多の脅威にさらされてきましたが、その中でも悪名高いのは120年程前の殺戮の神・ベハルとその関係者たちによる計画の数々(過去の『バルダーズ・ゲート』シリーズの出来事)でしょう。
話すと長いので、とりあえず、今はそういう事があったという事だけ覚えていただければ。エルフのような長命種族でもなければ、そういう事なんて覚えていないでしょうから。
九層地獄とアヴェルヌス
D&Dの多元宇宙には、冒険の主な舞台となる、私たちが想像するような自然などが広がる「物質界」―あえて語弊がある表現をするなら「現実」―に対して、精霊界や天界、地獄界とも言うべき世界の数々が存在します。
そして、カーラックというキャラクターのエピソードと関連して、「九層地獄」や「アヴェルヌス」(アヴェルナスとも)と呼ばれる場所が登場します。
「九層」と呼ばれる通り、『フォーゴトン・レルム』の世界観において、地獄とはダンテの『神曲』のように九つの層があり、それぞれに「アーチデヴィル」と呼ばれる支配者が存在します。
そのすべてを紹介する訳ではありませんが、一つ取り上げるとするなら、第一層は荒れ果てた荒野の広がる「アヴェルヌス」。堕天使ザリエルを支配者とする層であり、九層地獄にテレポートした者は必ず最初にここを通る必要があります。
また、九層地獄の玄関口ゆえに、後述する「デヴィル」と「デーモン」の戦争の主な戦地でもあります。
種族
イリシッド(マインド・フレイヤー)
冒頭から登場し、物語に深く関わってくるタコ頭の種族「イリシッド」、別名「マインド・フレイヤー」。数少ないD&Dオリジナルの種族のひとつです。
別名は「精神を鞭打つもの」「精神を剥ぐもの」といった意味合いで、その通り精神感応―有り体に言えば超能力―を操ります。
彼らはノーチロイド船(「オウムガイ型」の意)と呼ばれる生体次元間航行船を駆り、様々な世界に現れては人型生物に幼生を植え付け、新たなイリシッドに作り変えているのです。
ちょっとSFっぽい話ですが、そういった要素があるのもD&Dの懐の広さと言えるでしょう。
主人公たち一行は冒頭で幼生を植え付けられてしまい、除去する手段を探すところから旅が始まります。
『バルダーズ・ゲート3』の物語において、彼らの存在は避けては通れません。心臓の弱い方にはオススメできないでしょう。
ところで、読者の皆様には『ファイナルファンタジー』でこういう姿をしたモンスターを見たり、『ストレンジャー・シングス』で同じ名前がつけられた怪物を見た事があるかもしれません。
何を隠そう、そのどちらも元ネタはこれなのですから。
ギス / ギスヤンキ
イリシッド達はかつて栄華を誇る帝国を持っていたとされていますが、それを滅ぼしたのが、当時彼らに隷属されていた種族のギスです。こちらもD&Dオリジナルの種族のひとつです。
しかし、彼らが解放されて以降、鉄拳支配を目指すギスヤンキと、より穏健派のギスゼライという二つの派閥に分断されてしまいます。
ギスヤンキは魔法で延命する女王ヴラーキスのもと、イリシッドへの復讐を誓う戦闘民族であり、次元を超え、宿敵イリシッドの首を手に入れる事を通過儀礼としています。
デヴィルとデーモン
devilとdemonとは一般的にどちらも悪魔の類を指しますが、D&Dでは明確な違いがあります。
どちらも「悪」を司る存在ではあるものの、デヴィルは契約を結んだりするような秩序立った「悪」を、デーモンは他人を顧みない混沌とした「悪」の具現です。
『フォーゴトン・レルム』の世界観においては、九層地獄を本拠地とするデヴィルと、無数の層を持つ深淵の世界「アビス」より来たるデーモンは、太古の昔より対立しているとされています。
ティーフリング
旅の中で、時折角や尻尾を持つ「ティーフリング」という種族の人々が登場します。
人型種族の中にデヴィルの血が混じった際、このような姿の者が生まれる事があります。
このような姿ですから、迫害されたり捨て子にされる事も少なくありません。
バルダーズ・ゲート3の作中にも、時折ティーフリング同士の集まりなどが登場します。
他にもいろいろありそうですが…
他にもいろいろありますが、一旦ここまで。
こういったD&Dらしいと言える要素以外にも、エルフやドワーフといった典型的なファンタジー要素なども登場するのですが、下の記事ではD&Dでの細かい違いなどを紹介しています。
他にも「この用語を解説すべきでは?」という声があれば、コメント欄でお気軽にお寄せください。
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