第4章<診断する>フィードバックを再考する
1.急成長を実現させるフィードバックを提供する
「あなたにいくつかフィードバックがあります」。こう言われたら、普通、次に何が起こるかと心躍ることはないだろう。不幸にも、フィードバックが成長のプロセスにおいてエネルギーを作り出すべきときにできていないことがままある。
成長の加速化のエネルギーを作り出すには、フィードバックは単に言葉を伝えるだけでは不十分であるからだ。そのメッセージが正しかろうと、あるいは、伝えた本人が相手の仕事ぶりを改善できると確信していようと、フィードバックが洞察を生み出すものでない限り、能力ある個人にリスクの高い課題を克服させることなどできない。フィードバックは学習者の心の中に洞察を生み出すことではじめて、成長のエネルギーに変わるのだ。
成長の加速化のためのフィードバックを提供するには、正しい情報と準備に基づく巧みな対話が必要だ。その対話によって、学習者は将来のリーダーシップの移行に関連する自分のスキルや傾向に改めてじっくりと向き合う。
リーダーとしての課題が実際に頭をもたげてしまう前に洞察が得られるので、フィードバックはその価値が高くなる。それが恒常的に行われれば、人材開発の加速化システムの効率は大きくあがるだろう。
2.フィードバックとコーチングの重要な違い
人材開発の加速化プロセスの中で、フィードバックとコーチングを区別することは非常に重要だ。それぞれに異なる重要な目的があるためである。
フィードバックはリーダーの強みと弱みを明確にし、コーチングは実際の成長を支援する。また、フィードバックは、将来成功するために改善、活用すべきサクセス・プロフィールを本人が理解することを支援し、さらに個人が他の重要な関係者(上司、メンターなど)と能力開発上の優先事項について話し合うことも支援する。
コーチングは、個人が変化するプロセスの中で、その取り組みを導く会話や洞察、アドバイス、ガイダンスである。フィードバックはコーチングの一部と見なすことができるので、われわれはフィードバック・コーチという言葉を使うが、コーチとしては優秀でない人でもフィードバックの提供者として優秀な人もいるし、あるいはその逆もあることは覚えておいてほしい。
3.いかにしてフィードバックは人材開発の加速化プロセスにエネルギーを与えるか?
通常フィードバックといえば、自分のしたこと、しなかったこと、うまくできなかったことを示されて落第者のような気持ちにさせられ、居心地の悪い瞬間を味わうことが多い。だが人材開発の加速化のためのフィードバックはそれとはまったく異なり、示唆に富み、啓蒙的で、ときには意外で、そして何よりも大事なことだが、やる気を起こさせるものである。
人材開発の加速化のためのフィードバックとは、学習者が将来との関連で自らを振り返るのを、コーチ(フィードバックの提供者)が支援することだ。まだ経験していない職務や課題に対する個人の能力を、総合的に考えるものである。このためフィードバックは、ハイレベルなサクセス・プロフィールを基にした強みと弱みを完全に示すアセスメント(注)によって実施しなければならない。
人材開発の加速化のためのフィードバックは、通常のフィードバックとはまったく異なり、思慮深く、包括的で、そして何よりも大事なことだが、やる気を起こさせるものである。
フィードバックコーチが支援する形で、アセスメント結果が協働的なやり取りを通じて次の過程に進んでいく(注)。図4.7はそのプロセスであるが、これだけではフィードバックの真髄は伝わらない。優秀なフィードバックコーチは、信頼できる、あるいは説得力があるというだけではない。人を動かすような洞察は、リーダーのキャリアを転換することができるが、そのためには知識の共有や、基本的なフィードバックの進め方に従うこと以上に、思慮深い取り組みが必要である。
強力な人材開発の加速化プロセスは、リーダーに影響力の強いフィードバックを与えることが求められる。熟練したフィードバックコーチがアセスメントによる洞察を活用して、反応を予測し、熱意を活かし、リスクに立ち向かい、適切な変化(リーダーの心を目覚めさせ、ビジネスに役立つ行動を引き起こすもの)へのエネルギーを生み出す。これには、しっかり構成されたフィードバック面談と、自己発見を導くことを重視した対話が不可欠だ。では、どのようにすれば、フィードバックによってエネルギーが生まれるプロセスの設計や構築ができるのだろうか。
4.フィードバックに向けて学習者の準備を整える
人材開発の加速化プロセスの前にリーダー本人とコミュニケーションを取っておくことは、フィードバックから彼らがどれだけのエネルギーを得るかを大きく左右する。過去にこのようなコミュニケーションに失敗した経験があるなら、あなたには大勢の仲間がいる。
アセスメントとフィードバックの意図や目的を学習者に誤って伝えてしまう組織は多い。その結果、学習者のエンゲージメントを失ってしまうのだ。特に、ビジネスに大きな影響力を持ちたいと考える野心的で勤勉なハイポテンシャル人材には、何を伝えるかが重要である。
だがひとつだけ、どのようなコミュニケーション計画を立てているのかに関係なく言えることがある。人材開発の加速化が目的であることを認識していないリーダーの成長を加速することは不可能だ。これまでも述べてきた通り、人材開発の加速化にはリスクがあり、本人と経営幹部の間でその認識を共有しなければならない。
つまり、プロセス全体――特にフィードバック――が、共有されたリスクの上に構築されなければならないのである。そしてリーダーにはプロセスだけではなく、ビジネスの競争力を高め、リーダーのエンゲージメントや充実感を高めるためという、高速学習の目的にも目を向けさせる必要がある。そしてビジネスの目的や個人の利益、期待できること、準備方法などを明確にし、フィードバックと能力開発計画で何が起きるかを示せば、個人が思い切った能力開発を受け入れやすくなるだろう。
最初にはっきりとメッセージを伝えることで、新しい洞察への信頼が高まり、より受け入れやすくなるのだ。
プロセスが始まると、報告や話し合いの前に、学習者は最初のフィードバックを経験することになる。適切な種類のアセスメント(シミュレーションや性格診断など)に参加するという単純な行動が自己の振り返りの引き金となる。例えば、アクセラレーション・センターの参加者が、当日の帰宅途中に、早くも上のリーダーシップ階層への準備度について新しい洞察を持ち始めたと報告する例がよく聞かれる。
一般的なルールとして、学習者はフィードバック面談の前にアセスメント・レポートを受け取るべきとされている。ただし早すぎてはいけない。通常、プロセスを振り返り、コーチとの話し合いに備えて最初の反応を決めるには、数日あれば十分である。この期間で、学習者は主要な部分を吸収し、疑問を特定し、感情や不安の処理を始めることができる。
多くの人はフィードバック前にレポートを熟読してそこで示唆されていることについてじっくり考えるが、ざっと読んですぐに反応する人もいるだろう。自分の予測通りだったと感じる人もいれば、驚く人や、結果が自分で思っていた強みと矛盾したり、現在の職務に必要なスキルレベルとしては不名誉であったりして、身構える人もいる。
いずれにしろ、学習者は自分が読んだものに何らかの思い――公平だ、不公平だ、予想通りだ、予想外だ、思っていた以上だ、違和感があるなど――を持ってフィードバック・セッションにやってくる。よって、こういった反応を生産的に処理する準備を整えておくことも、アセスメント結果を洞察と成長のためのエネルギーに変えるためには必要である。
5.おすすめ人材アセスメントソリューション
①コンサルティングソリューション
②オンラインシミュレーションアセスメント&アセスメントシステム
③オンライントレーニング&ディベロップメント
6.DDIとは
DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。
◆DDI社の4つの専門分野
DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。
7.会社概要
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
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