リーダーにアセスメントを行う理由とは
「リーダーにアセスメントを行うことには、どのような理由があるのでしょうか?」
これは、私たちがよく受ける質問です。多くの企業において、重要な意思決定をする際、データを基に行っているはずです。それなのに、なぜリーダーに関しては同じことを行わないのでしょうか?
リーダーを選抜し育成を行っていく際、その根拠となるデータを使用せずに進めることは、人材投資において多額の損失を被るリスクがあります。しかし、多くの企業は、リーダーの選抜や育成のプロセスで、データを使用することを考えていないのです。
私たちは、企業から、リーダーにアセスメントを行う理由について、何度尋ねられたことでしょうか。その答えは、実に簡単です。データがあれば、感情に左右されず、客観的な決定を下すことができるからです。企業は自分たちの判断の正当な裏付けがない限り、多額のコストがかかる選択は行いません。
例えば、劇団やスポーツチームは俳優、ミュージシャン、アスリートに対して、適性を判断するための入団テストを行っています。誰もがショーやチームでの役割に適しているわけではないからです。
パイロットは最初のフライトの前、シミュレーションに何時間も費やします。飛行機を操縦する前に、操縦方法を熟知し、それらを扱えることを証明する必要があるからです。それができなければ、コックピットに足を踏み入れることすらできません。一歩間違えれば深刻な事態を招くため、この試験の判断には重きを置かれています。
それではなぜ、このような試験をリーダー候補となる人に行わないのでしょうか。多くの企業では、リーダーは単に業績が良く、優れたリーダーのように「見える」という理由で選ばれています。また、相手が不快になることを恐れ、克服すべき弱点を伝えるのを避けることがよくあります。
このようなやり方は、後に重大な影響を及ぼします。まず、採用や育成のプロセスに多くの無意識のバイアスがかかってしまいます。そして、不適切なリーダーを選出してしまった場合、部下やチームの士気を下げ、生産性を低下させることがよくあります。残念ながら、これらの影響は多くの場合、リーダーが「部署を離れた」後も長く続きます。
最初は1人のフロントラインリーダーが及ぼす影響にすぎませんが、より高い職位になればなるほど、不適切なリーダーが人材、戦略、予算などに対してより大きな影響力と権限をもつことで、問題がさらに深刻化していきます。結果、経営幹部になる頃には、一個人の弱点が、莫大なコストになってしまうことがあります。
このように失敗のリスクが非常に高いにもかかわらず「リーダーのアセスメントを行う理由とは?」という質問が依然として出てくるのは驚くべきことです。むしろ、「リーダーに関するより良いデータを得るために、どのようにアセスメントを使用すべきか?」という質問が出るべきなのです。
1.リーダーへのアセスメントの使用方法
アセスメントについて最初に理解するべきことの1つは、アセスメントは単なる人事評価ではないということです。むしろ、リーダーと企業の両方に利益をもたらさなければなりません。
アセスメントは、フライトシミュレーションやオーディションだと考えてください。ただし、参加者が期待される役割を果たす準備ができていることを確認するための試験の意味もありますが、参加者にとっても自分がその職務で成果を発揮する準備ができているかを認識する絶好の機会になります。たとえ完璧な結果が出せなかったとしても、彼らはより優れた人材に成長するために、何に取り組むべきなのかを知ることができるのです。
企業は、参加者から得られたデータを様々な方法で活用できます。採用や昇進の決定において客観性を高めるために使用するのはもちろん、ハイポテンシャル人材の特定や、後継者育成計画の指針として使用したりすることもできます。そして、最も重要なことは、個々人の能力開発の話し合いを進めるのに役立つということです。
アセスメントのデータは、彼らの行動の強みや開発すべき領域の特定、将来の成功を促進あるいは阻害する要因となる個人特性についても明らかにし、深い洞察を提供します。このように自己を認識することは、彼らのキャリアに大きな影響を与え、現在および将来の役割において成功するのに役立ちます。
また、アセスメントから得られるグループデータも非常に有益です。リーダー全体の結果から彼らが支援を必要とするスキルを特定し、リーダー全体に向けて能力開発計画を立てることができます。さらに、彼らの強みとギャップがビジネス戦略にどのように影響するかを確認することもできます。
2.アセスメントデータを活かす
ここでは、リーダーにアセスメントを行うことで、企業とリーダーの両方にどのようなメリットがあるかについて、事例を用いてご紹介します。
数年前、私はある病院に協力して、数年後にCEO(最高経営責任者)に就任することが期待される、COO(最高執行責任者)選抜のお手伝いをしました。その病院のCTO(最高技術責任者)であるJohn Doe(ジョン・ドウ)は、その役割にふさわしいと思われる人物の一人でした。誰からも好かれ、尊敬されていた彼は、優秀な業績をあげていました。病院の経営陣は、ジョン・ドウがその役割にふさわしいと思ってはいたものの、ジョン・ドウを含む4人のシニアリーダーをアセスメントすることにしました。
アセスメントのデータによると、ジョン・ドウはまだその役割を担う準備ができていないことが明らかになりましたが、適切な支援と能力開発をすれば、数年後にCOOがCEOに昇格し、ポジションが空いたときに、彼にはその役割を果たせる可能性があることがわかりました。
病院は、データに基づいて、ジョン・ドウの能力開発計画を作成しました。彼はビジネス感覚を高めるためにMBAを取得しました。また、リーダーとして人材戦略や人材活用をより理解するためにCHRO(最高人事責任者)になりました。その他、社内外のコーチングとサポートを受けましたが、それらはすべてアセスメントのデータに基づいたものでした。
そして、再びその時が来ると、ジョン・ドウはCOOに就任する準備ができていました。
3.アセスメントはキャリアアップへの投資
ここまで「リーダーにアセスメントを行う理由とは?」という問いに対し、「データが得られるから」と説明してきましたが、どのようなデータが得られるのかを考えることも重要です。
以下は、アセスメントの種類と得られるデータについて示したものです。
自己診断は、自身の目標、関心、スキル、経験について、重要な分析を行います。受講者にとって必要な課題を理解し、成長するためのトレーニングの一環として使用できます。また、それは仕事の知識や理解度の確認にもなります。
360度診断は、多面評価とも呼ばれ、部下、同僚、上司などからのフィードバックを提供します。それには、自己評価も含まれています。
行動面接では、過去の経験や実績に焦点を当て、どのような状況で任務を遂行し、どのような結果を出したのかなどの具体的な質問を行うことで、行動、知識、スキル、能力などに関するデータを収集します。それを基に、採用担当者は期待する役割の要件と比較します。
アセスメントセンター(対象職務のある一日のシミュレーション)では、架空の職場において、与えられた役割になりきり、1日の仕事を疑似体験します。メールや会議、その他、その役割特有の仕事に対処する必要があり、分析や意思決定、コーチング、パートナーシップなどの演習課題に取り組みます。
4.1つのアセスメントだけですべてのニーズに対応できるわけではない
アセスメントは、個々人に関するさまざまな情報を提供しますが、同じアセスメントですべてのニーズに対応できるとは限りません。それぞれのニーズに合わせて適切なものを選択する必要があります。例えば、360度診断では、次のレベルの役割における適性や準備度を判断することはできません。それは、フロントガラスを黒く塗りつぶし、バックミラーだけに頼って高速道路を運転するようなものです。それでは全く意味のない診断となってしまいます。
重要視すべきは、どのようなデータが得たいかということです。ニーズに合った適切なアセスメントを行えば、候補者が実際にその仕事ができるかどうかを予測することができると共に、改善点や適性についても明らかにすることができます。
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■原文はこちらをご参照ください。
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円 (令和 2年12月31日)
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
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