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次世代リーダーを発掘し育成する方法とは~リーダーとしてのポテンシャルを見極め、育成を成功させるには~

1.将来のリーダーを育成する計画の欠如

先日私は、ある企業の経営陣がビジネスの優先事項を話し合うセッションの進行役を務めた際、「貴社が直面しているビジネス上の重要な課題は何か」と尋ねました。その結果、18の優先課題が挙げられましたが、その多くがリーダーの育成に関するものでした。では、その中に含まれなかった課題は何だったでしょうか?その企業は、次世代を担うリーダーを発掘して育成するための戦略が欠如しているうえ、それを行うことがビジネスの優先事項にも挙げられていませんでした。


次世代リーダーに対する計画の欠如は、非常によくあることです。将来のリーダーを育てていくのが望ましいのですが、それは未来に委ねられ、現在の優先事項には当たらないと捉えられていることがあります。現在、多くの優先すべき案件がある中で、明日のリーダーを育成するためにリソースを投入する重要性を訴求できるでしょうか?しかし、将来のリーダーを育成する計画がなければ、組織の未来はどうなるのでしょうか?

2.職場における次世代リーダーの重要性

現代の職場は、テクノロジー、プロセス、市場原理、顧客ニーズ、リーダーシップの変化といった、絶え間ない変動の状況下に置かれています。人材の流動性が高く、昇進したり、異動したり、転職したり、退職したりしていきますので、重要な役割を担い、目標に向けてビジネスを成功に導いていけるリーダーの確固たるパイプラインを構築することが重要です。

次世代リーダーを発掘するために、自社の人材プールに目を向けるべき理由は多くあります。社内候補者は、社外候補者よりも組織に関する知識や人間関係を持っているため、新たな役割へ移行する支援を受ければ、その職務を迅速に習得できます。このような次世代リーダーは、自社のコアバリューを促進する際に頼りになる存在です。また、社内の人材の「昇進」は、従業員のモチベーションにつながることも明らかになっています。従業員がそのようなキャリアパスから恩恵を受けることができれば、なおさらです。

特に今日の採用市場において、社外からの採用はコストと大きな課題を伴います。業界によっては「人材争奪戦」が激化しており、新しいリーダーを社外から探すことは現実的な選択肢ではないかもしれません。

3.次世代リーダーの発掘における課題

社内で若手リーダーを発掘し、登用することは、社外からの採用に比べて多くのメリットがありますが、一方でそれに伴う課題もあります。

・客観的な基準:人事担当者によると、上司が自分の部下をハイポテンシャル人材として推薦するということがよく報告されています。彼らは直属の部下を最もよく把握できる立場にあるため、直感的に理解しているように思われています。しかし、ハイポテンシャル人材を特定する明確な基準がなければ、主観的なバイアスがかかりがちになります。ある管理職が指名したハイパフォーマーと、別の管理職のハイパフォーマーをどのように比較すればよいでしょうか?

計画:次世代リーダーの選定は、事前に予定を立てることなく、役職が空いたときにその場しのぎで行われることがしばしばあります。このようにして決まった場合は、リーダーとしての役割をうまく果たすのに必要な支援や育成を受けていない可能性があります。調査によると、リーダー職に移行した人材の約半数が失敗していることが明らかになっています。ハイポテンシャル人材のためのマネジメント戦略を策定すれば、新任リーダーを成功に導くよう計画を立て、育成に必要な時間を十分に確保できます。

透明性:「誰もがリーダーである」という前提に立てば、組織は非常に多くのポテンシャルリーダーを抱えていることになります。では、その中からどのようにポテンシャルの高い人材を絞り込んで意思決定をすればよいのでしょうか。それには、次世代リーダーを特定するための明確な基準を設け、戦略を策定することが必要です。期待値が可視化されていれば、リーダーを目指す従業員は、自分の願望と昇進の機会について上司と議論をしていくことができます。

4.誤解を招くおそれのある次世代リーダーの特徴

職場で活躍する次世代リーダーには、どのような特徴があるでしょうか。役割に対するパフォーマンスが高いことが明白な指標であると思われがちですが、実績はリーダーとしてのポテンシャルを示す確実な指標ではありません。技術の専門家が管理職に昇進した後で、リーダーシップを発揮するのに苦労することはよくあります。個人での貢献度が高いからといって、リーダーとしての能力が高いとは限りません。

また、プロジェクトやタスクフォースで非公式にリーダーシップを発揮し、それが評価されたという話もよく聞きます。このような経験は貴重な検討材料ではありますが、次世代リーダーを特定する唯一の基準にすべきではありません。非公式にリーダーシップを発揮する機会は、組織全体やチーム内で均等に与えられるわけではないため、機会が得られないことでリーダー候補に選ばれない人が出てしまうからです。

5.次世代リーダーの特徴

リーダー職の経験がなく、過去の行動を評価できない場合、リーダーとしてのポテンシャルを予測するには、「性格(その人の特性)」「動機(やりたいこと)」「認識(リーダーシップ・スキルについて理解していること)」の3つの項目で考えることが有効です。

①性格―その人の特性

人の気質を変えることは難しく、時には不可能です。そこで、初めてリーダーとしての役割を担う従業員を見極める際には、以下の4つの観点から、その人が成功するための資質を備えているかどうかを明らかにしていきます。

l リーダーとしての素養:リーダーシップに関する10の主要な質問にどのように答えるか?リーダーとしての意欲があるか?責任を負うことを厭わないか?他者を通して仕事を成し遂げることを楽しめるか?促進者になれるか?他者のスキルや能力を活用できるか?

l 成長志向:建設的なフィードバックをどのように受容しているか?過去から学ぶことができるか?自分のパフォーマンスや能力を向上させる意欲があるか?

l 複雑な状況への対応力:限られた情報の中で意思決定をすることができるか?変化に対応できるか?新しい概念を理解することができるか?

l 組織バリューと成果の両立:組織のバリューを体現しているか?ロールモデルになっているか?成果を出すことに意欲的か?

このような性格特性は、新任リーダーがリーダー職へ移行する際、あるいは役職に就く際に直面する課題や複雑さに対応する促進要因となります。

②動機―やりたいこと

次世代リーダーの候補者に大きな昇進を持ちかける前に、彼らがリーダーとして挑戦する意欲があるかどうかを見極めることが重要です。彼らは本当にリーダーになりたいと思っているのでしょうか?それとも、それがキャリアアップのための唯一の方法だと考えているのでしょうか?正当な理由があってリーダーになろうとしない人は、長期的に見て成功する可能性は低く、自身が率いるチームにも組織の業績にも影響を与える可能性があります。

③認識―リーダーシップ・スキルについて理解していること

リーダーシップを発揮する機会がなく、リーダーとしての行動をとったことがない従業員のリーダーとしての能力は、どのように評価すればよいでしょうか?行動データがない場合は、その従業員がリーダーシップ・コンピテンシーと行動について、何を理解しているかを調べることをお勧めします。

つまり、効果的なリーダーシップとはどのようなものだと考えているのかを知ることです。彼らがその仕事を成功させるために必要なことは何か?優れたリーダーとはどういう人なのか?優れた行動を理解していれば、リーダーとしてそのような行動をとる可能性が高くなります。

6.次世代リーダーを見極める方法

では、このような次世代リーダーの特性を持つ人材かどうかを見極めるには、どうすればよいのでしょうか。

管理職には、ポテンシャルの高い人材を見抜く力をつけることが重要です。管理職はスカウトマンのように、リーダーになる意志とスキルを持った従業員を見極めなければなりません。しかし、誰がリーダーとしての資質を備えているかについては、一人の管理職の感覚や直感に頼るのではなく、複数の管理職の意見を参考にするのが最善です。

リーダーシップ・アセスメントは、従業員が次世代リーダーの特性を備えているかどうかについて見解を得るための、信頼性の高い体系的な方法です。アセスメントでは、従業員がどのような性格なのか、何を望んでいるのか、リーダーの役割について何を理解しているのか、といった客観的なデータを提供できます。

次世代リーダーをアセスメントする際には、個人の傾向やモチベーションに関する情報を把握することが大切です。また、特定の状況下での判断力を検証することもできます。

例えば、MSC/DDIのリーダーシップ・ポテンシャルを診断するツールであるEarly IdentifierⓇは、強み、ギャップ、性格特性がどのようにパフォーマンスに影響を与えるかについて、優れた見解を提供します。

次世代リーダーを特定するのに役立つもう一つのアセスメントは、「リーダーシップ・スナップショット」です。このアセスメントでは、リーダーの影響力、ビジネスとマネジメントのスキル、対人関係の有効性という3つの領域について、各人の性格と行動判断に関するデータを提供します。

このようなアセスメントは、従業員にとってリーダーシップの発揮が容易なのか困難なのかを把握するのにも役立ちます。さらに、リーダーシップ開発プログラムを構築する際のヒントも得られます。

7.次世代リーダーを育成する職場環境

次世代リーダーが育つ職場環境とは、誰もがリーダー候補として扱われる環境です。この考え方により、次世代リーダーを発掘する際に、幅広いスキルや部署、レベルに網をかけることができます。また、より多様な人材が集まり、将来のリーダーを適切に育成・供給できるようになります。

従業員は永久にパイプラインに存在するわけではないため、パイプラインの充足は常に必要です。次世代リーダーを発掘することは、一過性の取り組みではなく、継続的な活動であるべきです。

すべての従業員をポテンシャルリーダーとして等しく扱うという精神に基づき、上司は機会を提供することで、次世代リーダーの育成に積極的な役割を果たす必要があります。また、このような育成機会によって、職場の新任リーダーはリーダーとしての責任を果たす練習ができ、上司はそれを観察・指導することができます。現職の上司は、このような機会を促進する最適な立場であるといえます。

次世代リーダーを生み出す職場環境において最も重要なのは、ハイポテンシャル人材の育成を徹底することかもしれません。多くの場合、ハイポテンシャル人材として認定されることは、即戦力となるためのリーダー育成トレーニングに参加することを意味します。しかし、最も優れたハイポテンシャル・プログラムは、上司のサポート、実践の機会、能力開発計画が組み込まれた長期的なラーニング・ジャーニー(学習の旅)なのです。

8.リーダーシップ開発により次世代リーダーを育成する方法

多くの組織においてリーダーシップ開発プログラムを実施した経験から、新任リーダーは、共通の課題を持っていることが判明しています。彼らは、リーダーの基本的スキルであるコーチング、パフォーマンス・マネジメント、コミュニケーション、変革の推進、リーダーとしてのアプローチの仕方などに苦労しているのです。しかし、このようなスキルは、すでにリーダーとして活躍している人たちでも、十分に開発されていないことがよくあります。

効果的なリーダーシップ開発プログラムでは、次世代リーダーのこうしたスキルの開発に着手できます。新任リーダーには、同じ階層の同僚と安全な空間でこれらのスキルを学び、実践できるようなシミュレーションの機会を提供する必要があります。また、自己診断によって自分のスタイルをよく理解し、どのようなリーダーシップの任務が自分にとって容易か、困難かを考えることができます。最も重要なのは、このトレーニングで、リーダーとしての役割を現実的に予測できるようになることです。

9.次世代リーダーの育成戦略が重要

次世代リーダーは、組織の未来であり、経営戦略の一環でなければなりません。次世代リーダーを特定し、その育成を加速させるべく常に一貫して注力することが、

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■執筆者:DDI 組織心理学者・シニアコンサルタント セール・ジャベド

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