第5章<成長する>阻害行動を避けるためのコーチング
1.客観的に認識できるように鏡の役割を果たす
コーチのもと自分の盲点を探ることで、経営幹部はキャリアの成功を邪魔する阻害要因を改善できる。彼らの阻害要因の大半は、好ましい特性が過剰に発揮されると現れるため、コーチの導きによる支援が必要な場合が多い。例えば、自信は尊大に、誠実性や信頼性は堅苦しさやリスク嫌いに変わる。
自己主張のうまさは自己防衛あるいは論争的であることに変わる。皮肉なことに、経営幹部にとってかつての職務では成功の推隹力となった行動が、現職では阻害要因となることが少なくない。阻害行動を回避させるコーチングには、悪習慣を断つことへの支援も含まれる。
コーチは能力のある幹部が慣れた行動パターンに頼りすぎた結果、組織に悪影響を及ぼした場合、自分でそれを認識できるように鏡の役割も果たす。また、時には失敗しそうな幹部にさらなる手段を使うこともある。以下に例を挙げる。
コーチは能力のある幹部が慣れた行動パターンに頼りすぎた結果、組織に悪影響を及ぼした場合、自分でそれを客観的に認識できるように鏡の役割も果たす。
2.EQと不安定さに関する課題
ロリーは戦略的かつ革新的なIT担当副社長で、社内初のグローバルな最高技術責任者への道を順調に歩んでいた。CEOは彼を気に入っており、技術部門の他の誰にも勝る顧客重視の姿勢と市場に関する知識を高く買っていた。将来重用されると周囲から認識されていた彼だったが、「ジキルとハイド」のような性格の持ち主としても知られていた。
パートナーや部下は皆、「良いロリー」と「悪いロリー」に遭遇した経験があった。良いときの彼は、創造的で問題解決がうまい。だが残念なことに、不機嫌さと短気さが表に出る頻度が次第に高まり、社内のパートナーたちとの間の信頼関係に問題が生じるようになった。
ロリーは感情の不安定さについて何度か直接フィードバックを受け、自分の行動をコントロールしようと試みた。だが、一時的な改善は見られるものの、また衝動的で否定的な反応に戻ってしまうのだった。会社はエグゼクティブ・コーチを雇い、コーチはロリーとともに彼の感情の「引き金」(彼の感情を刺激する状況)の核心に迫った。
その結果、ロリーが最も否定的な反応を示すのは、他者が解決策や代わりとなる行動指針を出さずに、IT能力に関する問題や疑問点を指摘するときであることが判明した。彼は、他人が自分と同じように責任を持つことなく、ただ問題を指摘することにより、自分が絶え間なく問題解決モードに置かれることに対して反感を覚えていた。自分の感情の引き金となる状況を確認したロリーは、自制心をうまく働かせられるようになり、自信を持つことができた。定期的に他者からのフィードバックを求め、エグゼクティブ・コーチとともにこの問題への取り組みを続けた。
彼は、感情の不安定さの克服には今後も苦労するだろうと思いつつも、コーチからの支援により意志力でコントロールできるようになったことを感謝している。
3.変わることへの抵抗感
マーケティングチームのリーダーを長く務めているサラは、並外れた実行力を持つことで知られていた。これは彼女の働く複雑でプロセス指向の組織には望ましいスキルであった。主要な新製品を発売する際の役割の明確化とアカウンタビリティに関する彼女の進め方は、肩を並べる者がいないほど評判が良かった。そのため、マーケティング担当副社長は彼女を高く評価し、2年後に定年退職した後の後継者にしようと考えていた。
だがサラの関係者は、彼女のプロセス管理指向は度が過ぎると考えていた。彼らは特に、市場情報の収集や処理、統合の方法について、今の彼女のポジションに相応しいやり方に変えてほしいと考えていた。かつてうまくいったプロセスに固執する彼女に対し、他の人はすべてのアイデアが拒絶されるように感じ、いらだたしさを覚えていた。
エグゼクティブ・コーチは、過去にサラを成功に導いたものが、今の製品管理状況ではマイナス要因になっていることを彼女に理解させた。抵抗感の引き金となっているものが何か理解するのを支援し、「反論するために耳を貸す」という傾向を指摘した。そして新しい状況での成功は、組織上の権限よりも説得力と影響力にかかっていることを納得させた。さらに、柔軟性と規律を守ったうえで新たに製品をローンチする方法の具体例を示した。
4.フィードバックの受け入れ
コーチはフィードバックを聞きたくないであろう経営幹部に、中立で率直なフィードバックを提供する。例えば、経営幹部層で尊敬されているコーチは、「部外者」による洞察を提供するだろう。同じことを伝えても、社内からの洞察よりも信頼性が高いからだ。幹部階層内に信頼関係が欠如しているとき、具体的な行動例を示せる観察者がいないとき、過去の個人的な抵抗のせいで意義深いフィードバックを受け入れてこなかったときは、特にそうだ。
最後に、一部の業界のリーダーは、集団環境における強いリーダーシップ(極めて強い自信、独立性、決断力)とはまったく異なる技術面での洞察力やスキルを称賛されてきた。医療機関の医師の序列(大学と病院のシステムなど)に、多くの例が見られる。医療が大きなビジネスとなり、多くの医師がリーダーの職務に就くようなった今、医師のリーダーシップ能力開発が注目を集めている。
当然のことながら、従来の医療教育プログラムは、個人がリーダーの職務に就く準備をするうえではほとんど役に立っていない。自信があり周囲からも信頼されているエグゼクティブ・コーチは、重鎮の医師相手でさえ、これまでの成功がビジネスリーダーとしての成功につながるとは限らないと納得させることができる。
ここでも、医師に対するコーチングで強調されるのは、インタアクション・スキル、コーチング、影響力の基本である。ありがたいのは、感情的かつ知的に納得すれば、医師はスキルの練習の効果を信じる優秀な生徒となることだ。
5.おすすめ人材アセスメントソリューション
6.DDIとは
DDIは、世界最大手の革新的なリーダーシップ・コンサルティング企業です。1970年の設立以来、この分野の先駆者として、リーダーのアセスメントや能力開発を専門としてきました。顧客の多くは、『フォーチュン500』に名を連ねる世界有数の多国籍企業や、『働きがいのある会社ベスト100』に選ばれている世界の優良企業です。
DDIでは、組織全体におよぶリーダーの採用、昇進昇格、能力開発手法に変革をもたらす支援をすることで、すべての階層において事業戦略を理解し、実行し、困難な課題に対処できるリーダーの輩出に貢献しています。
DDIのサービスは、現地事務所や提携先を通じて、多言語で93カ国に提供されています。また、同社の研究開発投資は業界平均の2倍であり、長年にわたる実績と科学的根拠に基づいた最新の手法を駆使して、組織の課題を解決しています。
◆DDI社の4つの専門分野
DDI社は、4つの専門分野を中心に、長年の実績と科学的根拠に裏付けられたソリューションと、より深い洞察を提供し、優れた成果を生み出しています。
7.会社概要
会社名:株式会社マネジメントサービスセンター
創業:1966(昭和41)年9月
資本金:1億円
事業内容:人材開発コンサルティング・人材アセスメント
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