ホロコースト否定論への反論入門(1)
0.はじめに
0.1 ホロコースト否定論への誘い
ホロコースト否定論は、実際日本のネットでもしばしば見掛けられ、決して珍しいものではありませんが、そうは言っても、日本の歴史修正主義は、従軍慰安婦問題や南京虐殺、731部隊など、日本が関わる問題に集中しており、ホロコーストへの否定論はあまり盛り上がることはないようです。ホロコーストそれ自体への関心もそれほど大きいものとは思えません。
日本の歴史問題に関しては、まず、南京虐殺ならば、南京虐殺否定派が存在し、そしてアンチ否定派が存在するという構図で、Twitterなどでもきちんと論拠を示して対抗できるアンチ否定派の人たちは多数見かけます。しかし、ホロコーストの場合は、論拠を示して対抗できるアンチ否定派を見かけることはまずありません。ほとんど大抵の場合「ホロコースト否定は間違い、ホロコースト否定はバカ」程度の見下した意見しかしない人ばかりです。
ところが。
ホロコースト研究で著名な学者であるデボラ・E・リップシュタットを、『ヒトラーの戦争』などベストセラー歴史本で著名なデヴィッド・アーヴィングが名誉毀損で訴えた裁判を描いた映画『否定と肯定』の冒頭で、ある象徴的なシーンが登場します。リップシュタットは、大学の教室の中で、生徒たちに向かってこう言います。
リップシュタット:ホロコーストはあったのか? その証明方法は?
学生:証拠写真は?
リップシュタット:ガス室内のユダヤ人の写真は一枚もないわ。なぜか? ドイツ軍が撮影を禁じたから。では私たちはいかにして、これほどの虐殺を知ったのか。どんな証拠がどこにあるのか。その信憑性は?
映画の中で、リップシュタットがこの答えを明確に語るシーンはありません。私自身、映画を見たときは、前述したようなホロコースト否定論に見下した態度しか取らない人間だったのですけど、ふとそのようなリップシュタット(映画の中でそれを言っているのは女優のレイチェル・ワイズですが)のセリフを聞いたとき、その質問に全く答えられない自分に気がつきました。
誤解しないで欲しいので先に言っておきますが、例えば、戦争で多くの殺人行為それ自体を撮影できたケースは、実際にはそれほど多くはありません。殺人行為をまるで秘匿しなかったベトナム戦争のケースが多くの殺人行為を撮影できた珍しいケースだと言えます(しかしそれでも本物の直接的殺害行為の瞬間それ自体の映像でよく知られているものは、おそらく一例しかないと思われます)。ベトナム戦争はほとんど自由に取材・報道が出来たので、大量に記者・ジャーナリストが存在しました。
しかし、ベトナム戦争の何十倍もの犠牲者(5,000万〜8,000万人とも言われる)を出したはずの第二次世界大戦における殺害実行行為それ自体の写真を見たことのある人はどれだけいるでしょうか? あるいは、写真技術そのものがなかった時代の殺人行為は写真がないが故に、殺人行為は証明できておらず、存在しなかったと言えるのでしょうか? それらの時代のものは物的証拠すら全く存在しないものが大半でしょう。
とは言え、明確に、これ一つで誰もが疑いようのない証拠なるものは、ホロコーストにはない、と言えます。少なくとも、ユダヤ人をガス室まで移動させその部屋にガスを投入し遺体になるまでの経緯と詳細を撮影した動画などは一切存在しません。(しかし、もしあったとしたら、アポロ11号月面着陸疑惑のように、否定派たちはそれら映像を捏造だと主張するでしょう)
ですから、それほどホロコーストに対する知識を持たない人が、ホロコーストの証拠を出せ! と主張するリビジョニストに対し、真正面から証拠を提示できる人は、いないと思います。では、ホロコーストには本当に全く証拠がないのでしょうか?
いいえ。
むしろホロコーストの証拠は莫大です。その一つが、否定派が決して認めない、多くの人の証言です。証言も証拠になります。証言には証拠性がないという人をしばしば見かけますが、日本国憲法でも以下の通りです。
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
もちろん、だからこそリビジョニストは拷問による自白の強制があるとして、加害者の自白(特にアウシュヴィッツ収容所所長のルドルフ・ヘスの証言)を否定するのですが、現在の日本の刑事裁判でも強制が証明されなければ、証言に明らかな矛盾や極めて疑わしい内容のない限り、証言は証拠とみなされます。ここではより単純に、上記条文を満たさない証言は証拠とすることが可能と憲法が認めているということが出来ます。
そして、大量の文書証拠もありますし、もちろん戦後の各種裁判においてもホロコーストの具体的な内容についての裁判官、検察、弁護士、被告、証人等によって何度も何度もやりとりが行われており、当然、多くの歴史家やその他の研究家、あるいはそれ以外の著述家などによって、これまた膨大な調査・研究も行われています。各国政府機関、行政機関レベルにおいても調査研究が行われており、象徴的なポーランドにあるアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館を代表として、多くの国にある各種機関が研究を行ったり資料の蓄積を行ったりもしているのです。
例えば、
フランクフルト・アウシュヴィッツ裁判の尋問集
ポーランドの戦後裁判の宣誓供述書などが大量にあるサイト
リトアニアでのホロコーストの具体的内容を紹介するサイト
アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館
アメリカ合衆国ホロコースト記念館
単純に、私のブラウザにあるブックマークから5つ並べただけですが、当然有用な情報のあるサイトはこれの何倍もあります。興味があるなら、例えばHolocaust Controversiesのサイトにある右端下のリンク集などを閲覧するのもいいでしょうが、それとてほんのごく一部でしかありません。書籍資料に至っては、日本はそれほど多くはないにせよ、海外のホロコースト関連文献が一体何冊あるのか検討もつきません。
ホロコーストはそうした莫大な量の証拠を元にして、その事実が確かめられているのですが、こうしたことが却ってホロコーストへの理解を難しくしている面があるのは否めないと私は思います。ホロコーストそれ自体への入門書は日本語書籍にも、芝健介による『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量虐殺の全貌』中公新書を代表として存在しますが、この本一冊書くのに、どれだけの分量の文献を必要としているかを考えれば、正直、想像を絶します。確か、芝健介氏だったと記憶しますが、ある本の中で、ロシアの公文書館に一年ほど通い詰めて莫大な資料と取っ組み合いをした、と書いてあったように思います。
簡単に言えば、ホロコーストの映画や、アンネの日記しか読んだことのないようなレベルで、ホロコーストを証明してみろ、と言われても、絶対に不可能です。プラモデルの自動車しか組み立てたことのないレベルで、最先端の自動運転自動車を作れるわけがないのと似たようなものでしょう。
ホロコースト否定論はそうした、いわばホロコーストにほとんど無知な状態の人を狙い撃ちするのです。例えば次のように。
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アウシュビッツ博物館には現在、ガス室だったところとして公開されているクレマトリウムⅠと呼ばれる建物がある。これの現在の写真がこれである。
この建物の中に、ガス室だったとされる部屋が公開されており、観光客は自由に観覧することが出来る。また、ガス室だとされる部屋の隣には、ガス室で殺された人の死体を焼却処分するための火葬炉が設置されている。写真に見える煙突は、その火葬炉のものだと説明される。ところが以下の写真を見てほしい。
ほぼ同じ角度から撮影されたものである。ここには今説明したばかりの煙突が写っていない。この写真は、火葬場が作られる前に撮影されたのであろうか? 実はそうではない。これは1945年にアウシュヴィッツ収容所がソ連によって解放された直後のものである。つまり、煙突は戦後に作られたものだったのである! これは一体どういうことなのか?
私は、このクレマトリウムの建物の煙突のある方へ回って仰天した。なんと、煙突は建物に繋がってさえいない! ……(後略)
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なんだか、否定論それ自体への入門編を書いているような気分になりましたが、私自身は、前述したとおり、この話を聞いた時には思いっきりホロコースト否定論をバカにしておりましたので、
「なんか理由があるんだろ。一回取り壊したんじゃねーのか? 終戦前くらいには連合国の爆撃もあったって話だし、爆撃目標にされないように、とか。んで、戦後に観覧用にするため、煙突がないと格好がつかないからと再現しただけだろ。建物に繋がってない? 正確な再現は難しいので、簡単にそれっぽく見せようと建てただけだろ」
とか勝手に考えたりしていました。これが割と当たっていて、実際ガス室は防空壕になっておりました(それは流石に知りませんでした)し、煙突の解体話こそどこにも記述はありませんが、防空壕にしておいて、目標になる煙突を立てたままにしていたとかは考え難いので、煙突は戦時中に撤去された後、戦後に元あったように再現されただけなのです。そして実際に戦時中の煙突位置は現在の位置で合っており、煙突として機能はしないとは思いますが、戦時中の本物の煙突は火葬場内部の火葬炉と地下で煙道がつながっていたのです(それも知らんかったけどw)。
でも、この話は、無知な人をホロコースト否定論に陥れるにはもってこいの話ではあります。細かい話をすると、このクレマトリウムの戦後の捏造話を持ち出したのは、調べた限りでは、ホロコースト否定派の教祖ともいえる、フランス人文学者(大学教授でもあったがクビになった)だったロベール・フォーリソンのようで、その時はまだ、1970年代後半であり、世界が東側と西側に分裂していた冷戦時代であり、当時は何かにつけ疑われていた旧ソ連が捏造したんじゃないのか? と言った話にはそれなりに説得力はあったのかも知れません。どうやら、フォーリソン自身は騙す気はなくて、本気でそう思っていた雰囲気が感じられます。むしろフォーリソン自身が、そうした戦後の再現話を怪しいと思っていたようです。
このクレマトリウムⅠの捏造話については、以下の記事などで解説されていますので、参考にしてください。
Twitterのホロコースト否定論への反論(2):切り離されたクレマⅠの煙突?
Twitterのホロコースト否定論への反論(3):窓付きガス室のドアがペラペラ?
アウシュヴィッツの様々な議論(2):クレマトリウムⅠの捏造ではなく復元の話。
アウシュヴィッツのプールの話などもそうですが、いわば、この辺の話をリビジョニストの思惑通りに「懐疑」してしまうか、それともリビジョニストの思惑とは逆方向に「お前ら何言ってんの?」と「懐疑」するかが、否定論にハマるかどうかの分水嶺だと思われます。
もしここまで読んで、前者、つまり否定論に傾いてしまった人、あるいはすでに現状、否定論に傾いている人は、ここで立ち去って下さって結構です。別に読んでもいいですけど、私は割と否定派を小馬鹿にした表現を使いますので、気分を害するかも知れません。
結論的なことから述べておきますと、ホロコーストやガス室がなかったことは考えられるのか? と言った疑問については、100%それはないと断言しておきます。ここで、否定論にハマりつつある人、あるいはすでにどっぷりハマっている人は、画面の向こうでニヤニヤしながら、「こいつバカだな」とでも呟きたくなる心境であることは分かっておりますが、これまで延々否定論を具体的に一年弱にわたって調べ続けておりますが、否定論が合っていると思ったことは……うーん、一度もないです。
私自身は、いわゆるアンチ否定論ですらも疑う人なのです。従って、ほんの少しではありますが、海外のアンチ否定論にも間違いがあることをいくつか発見しております。最近では、アウシュヴィッツ司令官だったルドルフ・ヘスについて、その証言が信用できないとされた否定派が持ち出した根拠である『死の軍団』を、否定派は当然として、アンチ否定派側もきちんと読んでいない疑いが強いことを発見しております。読んでいたら、むしろ『死の軍団』はヘスの証言の信頼性を高めるものだと分かったはずです。
反論にばかり感けていると、否定論を反論することばかりに囚われてしまい、誤った考えに支配されてしまう危険性もあります。私自身も何度もこれを経験しておりますが、最も大事なことは、自分の理解・論説が正しいかどうかなのであって、否定論者と戦うのはその次のことと思っておいた方がいいと思います。もちろん、自分を鍛えるために修行と思って否定論者と論戦を繰り広げるのは悪いことではありません。
さて、では具体的に、ホロコースト否定論とは一体どんなものなのか、私が今までに知った経験からのみ、説明したいと思います。
0.2 ホロコースト否定論とは何か?
まず、最も参考にされる頻度の高いと考えれらる、Wikipedia日本語版(2021.2.28現在)から引用します。
ホロコースト否認(ホロコーストひにん、ドイツ語: Holocaustleugnung、英語: Holocaust denial)とは、ナチス・ドイツが行ったユダヤ人の組織的殺害である「ホロコースト」の一部もしくは全体を否認する主張。 これらの主張を支持する者を、「ホロコースト否認論者」という。ホロコースト修正主義、ホロコースト見直し論[1]、ホロコースト否定論[2]とも言う。
ホロコースト否認論者に関する思想背景や指摘内容は多様であるが、否認論者はホロコーストの規模を数十万人程度に修正し、また、その計画性を否定している。[要出典]ホロコーストそのものはナチス・ドイツにおいて組織的に行われた歴史的事実であり、数十万程度(あるいはそれ以下)という否認論の主張は根拠がないものであるという見方が通説であり、ドイツ、フランス、イスラエルなどでは、前述したような主張の流布は反ユダヤ主義的思想によって動機付けられたものとされるとともに、「ヘイトスピーチの一種」と認識され、違法行為とされている。[要出典]また、否認論を裏付ける査読付き論文も、2020年時点において無い。[要出典]
後半が「要出典」ばかりですが(2021.2.28現在)、そんなに間違ってないと思いますけどね。もし仮に、ホロコースト否認論が、最近話題の、従軍慰安婦問題についてのラムザイヤー論文を載せたインターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス誌のような主流雑誌に載ったら、従軍慰安婦問題どころの騒ぎではなくなると思うので、そんな騒動は聞いたことがないし査読付き論文は存在しないと言ってもいいんじゃないでしょうか。査読付きで載ったらリビジョニストは大々的に宣伝するはずです。ま、ないものをないと証明するのは悪魔の証明でもあり、ないと断言するのもおかしいのも事実ではありますが。
英語版Wikipediaからも引用してみましょう。
ホロコースト否定とは、ナチスによるユダヤ人のホロコーストによる大量虐殺を否定する行為である[1]。 ホロコースト否定者は、以下のような虚偽の記述を1つ以上行う[2][3][4]。
・ナチス・ドイツの最終的な解決策は、ユダヤ人の強制送還のみを目的としたものであり、ユダヤ人の絶滅は含まれていなかった。
・ナチス当局は、ユダヤ人の大量殺戮のために絶滅収容所やガス室を使用していなかった
・実際に殺害されたユダヤ人の数は、受け入れられている500万人から600万人という数字よりも著しく少なく、通常はその10分の1程度である。
ホロコースト否定は、ある種の人種差別的プロパガンダと一般的に結びついているため、それが行われている多くの場所では深刻な社会問題とみなされており、ヨーロッパのいくつかの国やイスラエルでは違法とされている。
学者は、ホロコースト否定者の見解と方法論を説明するために否定という用語を使用しているが、これは、確立された歴史的方法論を用いて歴史の正統な解釈に挑戦する正当な歴史修正主義者と区別するためである[5]。 ホロコースト否定者は一般的に、否定を自分たちの活動を適切に説明するものとして受け入れず、代わりに修正主義という婉曲表現を使用している。 [6] ホロコースト否定者の方法論は、多くの場合、それに反して圧倒的な歴史的証拠を無視した既成の結論に基づいている。 [7] 一部の旧東欧諸国では、ホロコースト否定者はユダヤ人の大量殺人を否定するのではなく、ホロコーストへの同胞の参加を否定している。[8] 2019年、ホロコースト追悼プロジェクト報告書は、彼らが「修正主義」と表現したこの否定の形態を強調している。彼らは、ハンガリー、ポーランド、クロアチア、リトアニアを最悪の犯罪者として選び出した。彼らはまた、イスラエルがこのような過剰な修正主義に抗議するのではなく、報告書で言及されている多くの民族主義政府や修正主義政府を支援してきたことにも言及している[9]。
ほとんどのホロコースト否定者は、ホロコーストはデマである、あるいは誇張であり、他の人々を犠牲にしてユダヤ人の利益を増進させるために計画された意図的なユダヤ人の陰謀から生じたものであると、明示的にも暗黙的にも主張している[10]。 このため、ホロコースト否定は一般的に反ユダヤ主義的[11]な陰謀論であると考えられている[12]。
余談だけど、最近DeepLって一撃で修正要らずのレベルまで訳せることがそこそこ増えてきた気がします。AIって学習し続けるので、精度が上がっているのでしょうか? Googleはたいして進化は感じられないのですけどね。
英語版は流石に詳細です。例えば、日本語版では否定論と修正主義の区別の記述がありませんが、実際には英語圏ではどうやら区別があるようです。というのは、修正主義には正統性の意味が含まれているようで、詳しくは知らないのですが、第一次世界大戦後には修正主義が正しかったとされたことがあったようです。ハリー・エルマー・バーンズだったかな? なんかそんな人がいたのです(調べてないw)。ともかく、ホロコースト否定者は自身の立場を正統的なものだと主張したいため、修正主義者と呼ばれることを好む傾向があるようです。日本ではこの辺りがよく誤解されていて、修正主義者を悪意のあるレッテルだと思っている人も多いようです。あと、英語版はきっちり反ユダヤ主義・陰謀論に触れており、非常に明確な説明になっていると思います。
あと、ちょっとだけ余談ぽいですが、英語版の解説にある「一部の旧東欧諸国では、ホロコースト否定者はユダヤ人の大量殺人を否定するのではなく、ホロコーストへの同胞の参加を否定している」の脚注先を見ていないので間違っているかも知れませんが、例えばイエドバブネ村事件なるポーランドの国内世論に大きな影響を与えてしまった事件があり、簡単に言うと、このイエドバブネ村で戦時中にユダヤ人虐殺事件があったのですが、2000年ごろまではアインザッツグルッペンによる犯行だと思われていたのに、ポーランド人がやった犯行だと判明してしまったのです(同様の事例が次々に発覚したらしい)。これにポーランド国内世論が大きく反応し、あくまでもポーランド人はナチスドイツの被害者であって加害者ではない! との主張が加熱、とうとうポーランド人の加害を主張することを法律で禁じてしまう局面にまで至ったのです。加害の歴史を認めるということが如何に難しいかという一つの事例です(リンク先で示したWikipediaのページは後追いが出来ていませんが、書き換えはめんどくさいので私はしません)。覚えておくと良いかも知れません。
では、私めが経験で知っているホロコースト否定について説明します。特に日本の場合という限定付きですが、日本人でネット上でホロコースト否定論を主張する人のタイプには大きく分けて、三種類に分かれます。厳密な区分ではありませんが、以下のようになります。
①ホロコースト・ガス室に懐疑的な人。ほんとに600万人もガス室で殺されたの? 死体はないっていうけど? 嘘っぽくない? いろいろ説明聞いてても信じられない。陰謀だって話もあるよ? ……のように疑うばかりの人たち。
②よくわからないけど断定的に否定する人。あれは嘘だよ。お前まだそんなこと言ってんの? ユダヤ人とか連合国の陰謀だったって結論出てるんだよ。あのサイトやあの動画見てみろよ、きっちり証明されてっから。……のように、特に説明することなく頭ごなしに否定を断定する人たち。
③完全にガチで信じ込んでおり、細かい否定論もそれなりによく知っており、それらの知識をひけらかす傾向があり、自分の方が真実をよく知っていると信じて疑わない人たち。
感覚としては、①が最も多い気がします。①の中には、動画に影響されているのだと思いますが具体的に火葬場の能力について疑問を持つ人が多いように見受けられます。また、ホロコーストは否定しないけど、「600万人は盛ってる」という人はかなりいます。それを否定者に含めるか否かは微妙な話ではありますが、私はホロコーストは否定していない、といいつつガス室をそっくり否定する人もいたりするので、「盛ってる」の人たちも否定者に含めてしまって良いように思えます。実際には別に誰も「盛ってる」人はいないので。
②がもしかすると、かなり多いのかも知れません。この人たちは、ほとんど大抵、否定の主張をするだけで、その理由について説明されることはまずありません。非常に何を考えているのか、よくわからない人たちで、判明しているのは、ほとんどの人は反ユダヤ主義、つまりユダヤ人の陰謀だと完全に思い込んでいるように思われることです。気をつけて欲しいのはこの②の人たちで、全く議論に応じないので、ホロコーストに関する会話そのものが成立しません。よくて向こうから「証拠だせよ」と言ってくる程度です(出したところで何の会話にもなりません)。相手にしない方が無難です。
③の人たちは、信仰なんじゃないかとすら思うほど、積極的にホロコーストなどなかったと主張する傾向があります。その信仰を固めるために、様々な否定論の知識を身につけようとするのです。ですから、かなり色々よく知っており、知識の量だけで言えば、一般的なホロコーストの知識しかない人を遥かに凌駕する(偏ってますけどね)ので、まずそれらの人はこの③の人たちには太刀打ちできません。
これらの区分に当てはまらない人もいます。例えば、自身はホロコーストを否定しないが、必ずしもホロコーストの定説が完全に正しいとは思っていない、と言ったり、あるいはまた、単純に、動画や本、サイトなどに影響を受けて固く信じ込んでしまってはいるが、特に主張することはないようなサイレント・ホロコースト・デニーラーのような人たちです。あとは、故・加藤一郎のように悪意を持ってホロコースト否定論を主張していたとしか考えられないような人もいます。あのトリミングは悪意がないと説明がつきません。
しかし、ネット否定者であろうが、プロ否定者(日本で言えばマルコポーロ事件の西岡氏や木村氏、あるいは加藤一郎氏など)であろうが、一点だけ共通しているのは、ガス室を否定することです。ホロコースト否定論の具体的な細部は非常に多岐に渡るのですが、ガス室を否定しないホロコースト否定者はまず滅多にいません。
では次回は、具体的に、否定者達はガス室をどのように否定しているのかについて見ていきたいと考えます。
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