【映画感想】#2 「BLUE GIANT」俺たちのタマダ、アニメの枠を超えた最高のJAZZ映画
鑑賞後の興奮が冷めやらぬうちに、書こうと思います。
ついに、漫画が原作のアニメ映画 BLUE GIANT(ブルージャイアント)を映画館で観てきた。
一言でいえば、最高のJAZZ映画だった。JAZZをよく知らなかった自分でも心の底からそう思わせられくらい濃厚な2時間だった。いや、本当に一瞬でした。
今回はそんな最高の映画「BLUE GIANT」のあらすじとその魅力について書きます。
BLUE GIANT あらすじ
BLUE GIANT は漫画が原作。山漫画の名作として知られる『岳 ―みんなの山―』の石塚真一さんによる作品。
「オレは世界一のジャズプレイヤーになる。」
中3でジャズに出会った以来、この夢に真っ直ぐにとにかくサックスを吹いて吹いて吹き続けてきた主人公 宮本 大(ダイ) は高校卒業を機に上京を決める。
上京先で転がり込んだのは高校の同級生、玉田俊二(タマダ) の部屋。
居候しながら大都会の真ん中でサックスを吹き続けるダイは、とあるJAZZバーで同世代の超絶技巧ピアニスト 沢辺雪祈(ゆきのり) と巡り合いバンドを結成することに。
サックス・ピアノに加えてドラムを探していた二人だが、そこで名乗りを挙げたのは燻った大学生活を送っていたタマダだった---。
BLUE GIANT の魅力① 圧巻の映像描写
BLUE GIANTの魅力が多すぎて挙げるのが難しいが、まずは映像が美しい。
熱すぎる火は赤を通り越して青になる、それほどの熱量で演奏するプレイヤーをジャズ界隈では「BLUE GIANT」と呼ぶ。この作品はまさに「BLUE GIANT」がメインのテーマとなっている。
そして映画において色としての”青"は印象的に描かれている。
BLUE GIANTでは夜のシーンが多くを占める。夜の東京を描写するシーンでは暖色が強調されそうだが、この作品では青がベースだ。
90年代のアニメ、シティハンターなどに代表される青みがかった東京でクールで洒落た感じではあるが、一歩間違えば作品として冷めた印象になりそうにもなりかねないところでもある。
ただ、この作品はこの青をベースにしてお洒落というより「美しく荘厳な東京」としての描写が圧倒的だった。演奏シーンが見どころの作品かと思いきや、東京の圧倒的な美しさを通して彼らが挑もうとする東京というフィールドの偉大さが描かれていたと思う。
そして、圧倒的な風景描写を上回る演奏シーンである。
CGを駆使した臨場感はもちろんのこと、赤を通り越して青になる、限界突破の演奏シーンの描き方は決して実写ではできない、アニメ映画の真骨頂だった。
実際に人間にセンサーをつけて演奏したものをモーショングラフィックとして演奏シーンに反映したらしく、それはもはや実写で人間が演奏しているかのようなヌメヌメとした動きだった。これだけでも素晴らしい臨場感だ。
そこに実際の楽曲(これまた素晴らしい)が加わることで、映画館内はもはやライブ会場となる---。正直凄まじかった。この臨場感に加えて、アニメで表現される限界突破シーン。まさにアニメ映画の枠を超えた瞬間だったと思う。これだけでもお金を払う価値は十分だ。
BLUE GIANT の魅力② 熱すぎる登場人物
映像シーンも圧巻ながら、そのバックグラウンドも熱すぎるのがBLUE GIANT。限界突破の映像シーンは、その背景あって響くものである。
本作品は 3人のJAZZプレイヤーを通して演奏のバックグラウンドを作り上げていく。
まずは主人公、ダイ。彼は自己確信タイプの人間だ。自分の夢を誰よりも信じ、アクションする。
とにかく真っ直ぐな人間だが、あらゆるものを犠牲にして、途方もない努力を途方もないレベルでやり続ける。とにかく毎日毎日、1つでも成長するためにサックスを吹く。並大抵のことではない。
そんな彼の演奏はあらゆる人の心を動かし、運命を変えていく。
「夢を掴む人間は才能じゃない。最後まで諦めなかった人間だ---。」
そんな彼を見て、誰しも勇気づけられ、そして「自分は諦めてないか?」と自問自答したのではないだろうか。
次に、天才ピアニスト ユキノリ。
彼もまた 世界を目指すピアニストだ。ストイックで自己主張が強くリアリストな一面もあり、成り上がるためには時として手段を選ばない。
一方で演奏者としてだけでなく作曲者としての才能もあり、作品で3人が組むバンド "JASS" のオリジナルソングは全てユキノリが作曲している。
リーダー気質に見えるが、自分の才能を信じきれていなかったり、人を見下すことで自分を落ち着かせてしまう一面があったりなど実は1番繊細な人間でもあったりする。
そんな彼が作品を通して何を学び、成長するのか。その過程にある演奏シーンはやはり見どころ満載である。
最後に、俺たちの タマダ。
この映画は彼の作品であったと思う。正直、泣いた。
高校まで部活でサッカーに懸命に向き合い、夢見た東京での大学生活にどこか煮え切らないものを感じていたタマダはダイを通じて ドラム に出会う。
「俺でもジャズできるかな?」
この一言を皮切りに、ドラムにのめり込むタマダ。ユキノリに「メンバーとして認めない」と言われながらも、圧倒的な演奏力を持つ2人を前にしながらも努力を続ける。
ドラム講座で小学生よりも下手な自分を受け入れながらも、とにかく叩く。叩く。叩く---。演奏で何百回ミスをしながらも、叩く。練習する。
時に涙しつつ「今やらなきゃ一生後悔するもの」に巡り合ったタマダは、ダイ以上に、どこかで自分の夢と折り合いをつけきてしまった人々の心を強く打ったのではないだろうか。
自分はタマダになれているのか---?
タマダの姿を見て、心が奮い立たない人間はいないだろう。
俺たちのタマダ。皆の心にいる、タマダ。
演奏シーンの熱さはもはや言わずもがなである。
BLUE GIANTでは3人以外にも、登場人物が皆、最高だ。ポリコレっぽいが、性悪人間が出てこない。スピルバーグのようなご都合主義に見えてしまう可能性もある。それでもこの3人に関わる、後押しする人々が最高であることが重要なのだ。
BLUE GIANT の魅力③ リアルな厳しさの描写
ただ運命は優しいだけではない。時に残酷であり、それこそJAZZに生きる人間は時として孤独でもある。JAZZの興奮の裏側にある厳しさも描写されているからこそ、演奏シーンのの儚さと尊さに繋がっている。
さいごに
一通り魅力について紹介しましたが、結局全てはこの作品のコピー「2度とないこの瞬間を全力で鳴らせ」に尽きます。
この潔いコピーに負けないほどの体験がこの映画には詰まっています。はっきりいえば2000円なんて惜しくもないです、満足どころか自分の心にまで火をつけられてしまう可能性もあるのですから。
私は自分の心の火種をつけられました。
今全力で、自分を信じて全て捧げられるものは何か。
人を突き動かす、JAZZにはそんな力があるようです。
とりあえず週末はJAZZバーにフラッと行ってみようかな。
ここまで読んでくれた皆さん、ありがとうございます
ぜひ映画館で、最高のJAZZ映画「BLUE GIANT」を観てください!