ホーソーン&ホロヴィッツ第5弾『死はすぐそばに』Close to Death(2024)紹介と感想
アンソニー・ホロヴィッツ 山田 蘭訳『死はすぐそばに』東京創元社, 2024
毎年楽しみにしているホロヴィッツの最新作。今回はホーソン&ホロヴィッツシリーズになります。
あらすじ
リヴァービュー・クロースという、周囲を門で囲われ電動門扉からしか出入りができない高級住宅地に最近越してきたケンワージー一家は、周囲の家と諍いを起こし嫌われていた。
住民たちの憎しみが高まっていく中、ジャイルズ・ケンワージーが住民の一人が所有するボウガンで喉を打ちぬかれて殺される事件が発生する。
複雑な事件になると感じた警察は、ダニエル・ホーソーンに援助を求めるのだった。
五年前に起こったホーソーンと当時の相棒ダドリーが離別することになった事件を書くことになったホロヴィッツ。しかし、ホーソーンから横やりは入るが、相棒のダドリーについては教えてもらえない。
ホーソーンの態度に怒りを覚えたホロヴィッツは、単独でダドリーを探すことにする。
紹介と感想
今回は今までと変わり、ホーソーンとホロヴィッツが出会う前の事件が語られます。
ということは、全てが分かっている状態で小説として書き上げられたのかというと違います。
ホーソーンから「結末を知らずに迷いながら書くからこそ文章が輝く」と言われたホロヴィッツは、事件の途中までしか知らない状態で途中まで書き、ホーソーンのチェックを受けてから事件の続きを聞かせてもらうという書き方をすることになってしまいました。
面白いことに、前半の時点でホーソーンから「ジャイルズ・ケンワージーの庭に英国旗が揚げられていたこと。ロデリック・ブラウンの家の照明。メイ・ウィンズロウの花壇の状態」が手掛かりであることまで語られます。
読者は、この手掛かりが真相にどのように結びつくのかを意識しながら五年前の事件を読んでいくことになりますが、なんだかんだとホロヴィッツはちゃんと手掛かりとして小説に組み込んでいました。
そして、ダメ出しばかりで教えて欲しいことを教えてくれないホーソーンに怒ったホロヴィッツが、ダドリーを探したり、実際の事件現場へ出向き関係者に話を聞く現在パートが、本作の面白さを高めていました。
ホーソーンの推理は、明確な証拠には乏しいものの、様々な状況や各登場人物の人間像を繋ぎ合わせて、説得力のある真相に辿り着きます。
今回の犯人は、間違いなくシリーズで最も強敵であったと言えるでしょう。
過去と現在が密接にリンクした構成の末に明かされる2つの真相はシリーズで一番面白かったです。
十作予定のシリーズも折り返しに入り、続きも楽しみです。
※密室ミステリと日本についての言及
ホロヴィッツが密室ミステリについて言及するシーンの中で、「最高の密室ミステリは日本から生まれていると考えるようになった」と語っており、具体的な有名ミステリ作品を2作品あげているのが、小ネタとして面白かったです。
「密室ミステリという分野に、わたしはさほど夢中になれずにきた」というのも、ホロヴィッツの書くミステリを読んでいると、実作にも表れているなと思いました。
ホーソン&ホロヴィッツ シリーズ一覧
01.メインテーマは殺人(2017)
02.その裁きは死(2018)
03.殺しへのライン(2021)
04.ナイフをひねれば(2022)
05.死はすぐそばに(2024)
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