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マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ3『最も卑劣な殺人』(1964)紹介と感想


あらすじ

マギンティ夫人が首を吊っている現場で現行犯逮捕された男ハロルド・テイラー。
その裁判で陪審員を務めていたマープルは、マギンティ夫人が死の当夜、胸にバラの花を挿していたことから、誰か別の人物を待っていたのではないかと疑問に思い、ハロルドが無罪である可能性を考える。
マープルはストリンガーと共に独自に調査を始め、遺品の中から所々が切り取られた新聞紙を発見する。新聞紙の文字を組み合わせると、「バラの名を変えてもバラ」という文章になり、マギンティ夫人の家の連絡先も記載されていた。
そして、マギンティ夫人の遺品にある芝居のポスターが大量に入っていたことから、マギンティ夫人は誰かを脅迫していたのではないかと検討を付けたマープルは、芝居を公演しているコスグッド劇団へ潜入をすることを決めた。
劇団では更なる殺人が発生、果たして事件の真相は……。

紹介と感想

精神集中の為に裁判中も編み物をするミス・マープルの活躍を描いたシリーズ第3弾です。
原作からミステリーの骨格を借りながら、肉付けはオリジナル色強めの内容です。

マギンティ夫人の持ち物から、第1作目『夜行特急の殺人』の芝居のポスターが見つかるなど、シリーズものらしいネタもあり、マープルの推理のヒントになっています。

ストリンガーが調査の過程で未亡人にモテて、マープルにからかわれたり、今回も仲良く調査を行っています。
マープルが劇団に潜入中は、万が一に備えて身体を鍛えており、頼りになる相棒です。
逆に、クラドックは有罪に決まりそうな裁判を邪魔されて、初めはマープルに警告を与えたりしますが、最後はマープルの正しさを知り、警部に昇進することになります。

中盤からは、役者としてマープルが巡業劇団に潜入します。
物怖じしないマープルは、オーディションから堂々とした演技を披露しました。

劇団内の人間関係も一枚岩ではなく、更に2人も殺されますが、女探偵ペネロペことミス・マープルは着実に真相に近づいていきます。

物語の最後、マープルは舞台の本番中に、自分の命を懸けて犯人へ罠をしかけます。犯人と対峙したマープルの、一世一代のお芝居です。
原作と比べて色んな意味で大味な内容ですが、シリーズのファンなら楽しめる内容になっていると思います。

「お言葉だけど男性より有能な女性もいるの。その事実を認めたら?」

クラドック警部補に「女性は想像力がたくましい」と言われたマープルの返答

映画概要

ミス・マープル/最も卑劣な殺人 Murder Most Foul(1964)

原作:アガサ・クリスティー『マギンティ夫人は死んだ』(1952)
監督:ジョージ・ポロック
脚本:デービッド・パーサル/ジャック・セドン
製作:英国
時間:91分

   ジェーン・マープル/マーガレット・ラザフォード
  ジム・ストリンガー氏/ストリンガー・デイヴィス
    クラドック警部補/チャールズ・ティングウェル

ドリフォルド・コスグッド/ロン・ムーディ
ジャスティス・クロスビー/アンドリュー・クルックシャンク
     ビル・ハンソン/ジェームズ・ボラム
グラディス・トーマス夫人/メグス・ジェンキンズ
    ラルフ・サマーズ/ラルフ・マイケル
 イーヴァ・マクゴニガル/アリソン・シーボーム

同一原作の映像化

デビッド・スーシェ主演・名探偵ポワロ(英)
 第11シリーズ 第1話『マギンティ夫人は死んだ』(2008)

アガサ・クリスティーの謎解きゲーム(仏)
 第2シリーズ 第10話『マギンティ夫人は死んだ』(2015)

スーシェ版は原作からの省略や人間関係の変更はありますが、大筋は原作に沿っており、原作映像化のドラマとしてオススメの作品です。

フランス版は本作に負けず劣らず脚色の多い内容ですが、アリスの元旦那の登場やロランス警視の子ども時代の辛い記憶が明かされる内容になっており、シリーズ好きなら楽しめると思います。


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