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鞍馬天狗 長編第6作『山嶽党奇談』(1928~1930)紹介と感想

大佛次郎『鞍馬天狗 第一巻』中央公論社, 1969, p.201-499


あらすじ

京都東山の高台寺横の路地には、白髪の老人の姿をした化物が姿を見せると騒がれていた。
また、化物だけでなく最近は山嶽党という暗殺集団まで現れていた。
鞍馬天狗は、ただの人殺し集団を野放しには出来ないと山嶽党を追いかけるが、中々尻尾を掴めず、何度も命を狙われてしまう。
隠れ家を変えようとしていたある夜も、鞍馬天狗と杉作は山嶽党の一味に命を狙われる。
同士である大前田逸郎の援助もあり、短筒で撃たれた杉作の手当てをするが、当の大前田逸郎は新選組へ寝返ろうと鞍馬天狗の命を狙っていた。
しかし、近藤勇から裏切るような卑怯者は要らないと断られ、鞍馬天狗からも命を狙われるようになった大前田。
困り果てた所に、山嶽党から一味に加わらないかと誘いが来る。渡りに船と山嶽党へ入党する大前田。
果たして、鞍馬天狗は山嶽党の尻尾を掴むことはできるのか。


紹介と感想

『角兵衛獅子』に続いて『少年倶楽部』に連載された続編となります。
作中では前作終盤の鞍馬天狗と近藤の戦いの振り返りがあり、杉作が鞍馬天狗と二人で生活をして物語でも重要な位置を占めています。

山嶽党は骸骨の様な怪しい格好をした幹部の前で、怖ろしい入党儀式を行ったりする、雰囲気たっぷりの集団でした。

また、出番はさほど多くありませんが、近藤勇が今回も格好良かったです。

普段は幕末を舞台にした娯楽時代小説をあまり読まないので、鞍馬天狗も近藤勇も山嶽党の首領も、みんな結構な頻度で短筒を使うのが新鮮でした。

物語的には、中盤の鞍馬天狗と山嶽党の手練れたちとの夜中から朝まで続く斬り合いが盛り上がりの最高潮でした。
全体的に、杉作がピンチに!を一作の中で使いすぎており、少しくどく感じてしまいました。

終盤も、山嶽党の恐ろしさで引っ張った割には、ややあっさりとした幕引きだと思います。
『角兵衛獅子』より分量がある割には、緩急のつけ方に気になる所があります。

しかし、最後まで飽きずに読めることは間違いなく、読んでいるあいだ楽しませてもらいました。


映像化

鞍馬天狗の映像化は映画・テレビを通してかなりの数があり、全てを把握することは難しかったです。
とりあえず、自分用に分った物だけ記載しておきます。

映画
嵐寛寿郎・主演 第6作『鞍馬天狗』(1929)

市川百々之助・主演『鞍馬天狗 山嶽党奇譚』(1930)

市川雷蔵・主演 第2作『新・鞍馬天狗 五条坂の決闘』(1965)


テレビドラマ
高橋英樹・主演『鞍馬天狗』(1969~1970)
 第24話~26話「山嶽党奇談」

竹脇無我・主演『鞍馬天狗』(1974~1975)
 第5話「山嶽党奇談」

野村萬斎・主演『鞍馬天狗』(2008)
 第4話・第5話「山嶽党奇談」
 ※「角兵衛獅子」はドラマ最終エピソードになるため、杉作の登場はありません。

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