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アガサ・クリスティー関連書籍 紹介と感想『料理からたどるアガサ・クリスティー 作品とその時代』(2023)
カレン・ピアース 富原まさ江訳『料理からたどるアガサ・クリスティー 作品とその時代』原書房, 2024
クリスティーと料理が好きな著者が、クリスティーの長編作品に出てくる食事や料理を発表年代順にみて行きながら、各年代ごとのイギリスの食事習慣の変遷などを語る一冊です。
本書ならではの特徴としては、アガサ・クリスティー名義の長編66冊すべてを扱い、それぞれに1個レシピが掲載されていることになります。
そのレシピも作品内に出てくる料理から、作品のテーマにちなんだ料理まで盛り沢山で、日本では馴染みのない料理も多くありました。
そんなボリュームのある本書ですが、注意が必要な部分があります。
それは、完全に読み物であるため写真の掲載は一切ないこと、長編66冊すべてを扱っているため、一つ一つに割く分量は短く、料理以外の話は殆どされていないことになります。
そのため、アガサ・クリスティーの活躍した時代の料理や、その歴史に興味があるならば面白く読めますが、アガサ・クリスティー本人や作品考察などを目的として読むには薄味に感じると思います。
また、短編やメアリ・ウェストマコット名義の作品については触れられていません。
力の入った一冊なのは間違いありませんが、読者を選ぶ本であることも間違いありません。
イギリスの料理や食文化の変遷を知りたい人や、クリスティー作品に出てくるような料理を自分で作ってみたい人に向けた作品です。
本書では彼女自身が好きだった食べ物や飲み物には触れていません。代わりにクリスティーがさまざまな料理や飲み物、材料を作品中でどのように取り入れているかに注目しました。ときには殺人の凶器にもなりますが、多くの場合はプロット・デバイス[物語を進めるうえでの仕掛け]として使用されています。食べ物が登場人物の特徴を浮かび上がらせ、身近な場所や異国情緒を表す役割を果たしているのです。
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