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橋蔵のやくざ判官(1962)紹介と感想


あらすじ

天保十年(1839年)、江戸にある本所横綱町では、居酒屋の亭主が客を相手に強欲な金貸しである勘兵衛の悪口を話していた。
その頃、勘兵衛は篠崎源左衛門という浪人を相手に、借金の方に娘のお京を寄越せと迫っていた。
長屋中の人間が聞き耳を立てている中、二日酔いの文吉が目を覚まし「勘兵衛を殺してかんかんのうを躍らせてやる」と騒いで勘兵衛を怒らせた。
源左衛門は夜まで金策に走り、長屋へ帰ってくると「方が付いた」とお京へ伝える。
同じ夜に、長屋の近くで勘兵衛が死んでいる姿で発見された。
目明しの八五郎が駆けつけると、死体は銀山が最初に見つけた所から移動しており、かんかんのうのポーズで磔にされていた。
調べを進めても決め手に欠けるなか、奉行から長屋中の者へ呼び出しがかかる。


紹介と感想

長谷川一夫主演の『昨日消えた男』を、マキノ監督自身がセルフリメイクした作品です。
タイトルで文吉の正体をほぼ明かしている、明朗快活なミステリー仕立てのコメディー時代劇になります。

楽しい会話が全編にちりばめられている作りで、そんな楽しいコメディー描写のなかに、真相に繋がるヒントが散りばめられています。
大立ち回りも一つだけありますが、それもコメディー色の強い立ち回りとなっていました。

大川橋蔵は赤蜻蛉の文吉という、得意の陽性で明るいキャラクターを見事に演じています。
立て板に水でポンポン口から出るセリフの素晴らしさに、かんかんのうを踊る姿もかわいらしいです。
 
役名が「居酒屋店主」なのに、やたらと目立つ進藤英太郎も良い味を出していました。

真相はコメディー仕立ての物語らしいもので、金さんが全てを見ていたかのように事件の初めから全てを語ってくれます。
昔、アガサ・クリスティーの超有名作もアイデアの参考にしたのではという話を読んだことがありますが、言いたいことは分かります。

娯楽ミステリー映画として今観ても中々面白いため、大川橋蔵ファンだけでなく、ちょっと緩めのコメディーミステリー好きにもオススメできます。


※2024年12月8日まで東映時代劇YouTubeチャンネルで期間限定配信されています。


映画概要

原作:小国英雄
監督:マキノ雅弘
脚本:マキノ雅弘
製作:東映/1962年
時間:90分

キャスト
    文吉/大川橋蔵

    小富/丘 さとみ
   おみよ/立川さゆり
    お京/北沢典子

    銀山/堺 俊二
   勘兵衛/多々良 純
篠崎源左衛門/宇佐美淳也
目明し八五郎/田中春男
  原 六之助/水島道太郎
     お兼/福田公子
   小富の母/浪花千栄子
    おこん/小桜京子
   松下源造/沢村宗之助
    太三郎/徳大寺 伸
     八助/本郷秀雄
     六助/丘 寵児

   横山求女/沢村訥升
  居酒屋亭主/進藤英太郎


『昨日消えた男』映像化あれこれ

ダシール・ハメットの『影なき男』を原案に、小国英雄の脚本によりマキノ雅弘(当時は正博名義)で1941年に映画化された『昨日消えた男』。
明朗快活な娯楽ミステリー映画として面白く、本作の他にもリメイク作が作られています。

1941『昨日消えた男』(東宝/89分)
 監督:マキノ正博 脚本:小国英雄
 出演:長谷川一夫、山田五十鈴、高峰秀子、徳川夢声、川田義雄など

1956『遠山金さん捕物帳・影に居た男』(東宝/103分)
 監督:マキノ雅弘 脚本:小国英雄
 出演:坂田藤十郎(4代目)、尾上さくら、上月左知子、本郷秀雄など


※1964『昨日消えた男』(大映/83分)
 監督:森一生 脚本:小国英雄
 出演:市川雷蔵、高田美和、藤村志保、宇津井健、三島雅夫など
※リメイク扱いされることもありますが、主役が遠山金四郎から徳川吉宗に変更となり、内容もかなり違うため、設定に似てるところもある別作という捉え方が正しいかも。


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