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絵本感想『人にはどれだけの土地がいるか』(2006)/『そういうゲーム』(2024)
今回は、年齢層が高めの人に向けた絵本の感想を書いていきます。
原作:トルストイ 文:柳川 茂 絵:小林 豊『人にはどれだけの土地がいるか』いのちのことば社フォレストブックス, 2006
『戦争と平和』などで有名なロシアの文豪トルストイの名作短編小説(原作は1886年作)を日本で絵本化した作品です。
寓話と呼ばれる類の物語で、実直な人間だった農民のパホームの姿を通して、欲望の落とし穴や他者の視線を意識しすぎる自尊心の恐怖が描かれています。
パホームが最初に土地を買う所までは人間が持つ自然な欲望だと思えましたが、近所の人との諍いの辺りからタガが外れてきた感じがしました。
物語としてもオチの痛烈な皮肉さが完成度を高めていたと思います。
古典的な名作を原作としながら、絵本としての強みである読みやすさや雰囲気にあった絵により誰もが楽しめる一冊でした。
いずれ原作もきちんと読みたいと思います。
ヨシタケシンスケ『そういうゲーム』KADOKAWA, 2024
「日常をそういうゲームに見立てることあるある」と始まった絵本は、早々にメッセージ性の強い内容となります。
しかし、所々で日常の一コマ的な「そういうゲーム」が挟まれることでホッと息をつく隙間もあり、オチはぐっとくだらないあるあるで締められるため力を抜いて読み終われるようになっているのがさすがの上手さでした。
カバー下も2枚の絵で人生を表していて良かったです。
人生をゲームに例えることを悪い意味で捉える人も多い中、自分は前から生きやすくするために人生の場面場面を「そういうゲーム」に見立てていたため共感できる内容でした。
特に好きな「そういうゲーム」は、
大失敗しても、しにそうなめにあっても
あらゆるものが こわれてしまっても、
大好きな人がいなくなっても、
ひとりぼっちでも、
自分がきらいでも、
意外とどうにかなる。
そういうゲーム。
と、
自分が「正義」の側に
いないことのさみしさに、
かわいい服を着せてあげられたら かち。
そういうゲーム。
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