2024夏クールアニメ感想(小市民シリーズ/天穂のサクナヒメ/菜なれ花なれ)
今期は、他の事に色々と時間を取られていたため、クールアニメの数は少なめでしたが、選んだ3本は視聴感もかぶらず、どれもが自分の好みに合っていたので満足感がありました。
小市民シリーズ
米澤穂信先生の人気シリーズにして、1作目発売から20年かけて四部作が完結した本作。
四部作のうち1作目と2作目、そして番外短編集から短編が1編アニメ化されました。
原作は主人公の一人、小鳩常悟朗の一人称で展開される物語を、小鳩君視点の三人称として描くアニメでは、メディアの違いや時間的制約もあり原作よりも文字であらわされる情報が少なくなっているハンデがあります。
しかし、アニメはアニメとしての表現を最大限に利用することで、本作の本格ミステリとほろ苦い青春を上手く表現していました。
本作で特徴的なのは会話中に現実世界と心象世界を行き来する映像だと思うのですが、この映像が小鳩くんと小佐内さんの本当の距離感をずっと表現しており、夏期の結末へ向けた良い伏線となっていました。
既に秋期と冬期のアニメ化も決定しているため、来年の放送を楽しみに待っていようと思います。
そして、出来れば話数と構成の関係でカットされた春期の短編「For your eyes only」と『巴里マカロンの謎』の残りの短編も映像化して欲しいなとか希望しています。
天穂のサクナヒメ
ゲームはSwitchで発売された際に買っていたのですが遊べていないためアニメで初見でした。
本作を最終回まで見て感じた印象としては、和風の世界観で展開されるとても丁寧に作られたオードソックスなジュブナイルというものです。
物語も分かりやすく前半と後半に分かれており、1つの話の中に解決すべきテーマも分かりやすく提示され、1話20分程度の限られた時間の中に過不足なく納めていました。
世界観を支える美術も奇をてらった感じはなく、しっかり作品全体を支えており、キャラクターも良かったです。
総じて、毎回安心して観ることができるアニメとなっていました。
いつかゲームの方もしっかり遊んでみたいと思います。
菜なれ花なれ
あまり前情報を知らずに観てみたのですが、キャラクター同士の諍いや葛藤を話数またぎでがっつり描写する今のアニメでは少なくなった物語構成、独特な色遣いの美術、パルクール部分などのアニメ的な部分と展開される生々しい感情のバランス感、アニメ的な部分と現実味の強い性格が同居するキャラクターなど独自性の強い世界観を可愛いキャラクターに乗せて展開する作風が個人的には結構好みで最後まで楽しく観ることが出来ました。
生々しい感情と合わせて独特だと思ったのが、問題の解決方法でした。
問題解決に仲間内だけのドラマに頼らず、仲間外とのつながりなど外部との接触を大切に展開しているところが、分かりやすいカタルシスとは違いながらも独自の説得力を生み出していたなと思います。
もちろん、コミュニティ内の人間が何もできていないわけではないですし、外部からの刺激により動き出した影響がコミュニティ内にも良い循環を生み出すわけですが、コミュニティ内だけの分かりやすい解決とならないことの方が現実には多いので、個人的には結構好きな展開でした。
特定の話にしか出なかったり、途中から出て来た人物が急に良い働きをしたり、重要人物的な働きをしてくるところも中々面白いと思ったところです。
好きなキャラクターは大谷穏花でした。
穏やかでありながら、芯には熱い応援魂があり、杏那に振り回されながらも自分の意志を持っている良いキャラクターです。もちろんキャラデザも好みでした。
現代のアニメ好き万人にオススメだよという作品ではないかもしれませんが、自分と同じく「この作品、良いね」と思う人にはかなり楽しく観られるアニメになっていると思います。