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野村胡堂『銭形平次捕物控』第1話~第5話 紹介と感想

野村胡堂『銭形平次・青春篇』講談社, 1996


第1話「金色の処女」(『オール讀物號』1931年4月号)

あらすじ
鷹狩の最中に毒矢で狙われた将軍・家光。笹野新三郎は、銭形平次に調査を頼む。
平次は、家光が鷹狩の帰りに娘目当てで必ず立ち寄る『大塚御薬園』と、最近出店しながら既に話題となっている『唐花屋』という化粧品店へ目を付ける。
お静に頼み唐花屋を探りに行ってもらった平次だったが、そのお静が囚われてしまった。
平次は、お静の後を追って大塚御薬園へ潜入するが、そこで世にも恐ろしい儀式を目の当たりにするのであった。

紹介と感想
銭形平次の第一話は、三代将軍・家光の時代が舞台となっており、事件も伝奇物と言っても良いような派手で禍々しい内容でした。
裸体に金箔を乗せられ、次々と身体中に口づけをされているお静を、助けることも出来ずに見ているしか出来ない平次という、後の作品では目に出来ない展開も見られます。
得意の投げ銭も、初回特別版といったスペシャルなものでした。
伝記要素のある小説として読むことがオススメの、初回にして最大の異色作と言える第一話になります。

レギュラー:お静、笹野
  投げ銭:あり

漫画
木村直巳『銭形平次捕物控』
 第一話「金色の処女」

最初から八五郎が平次の子分となっており、お静とは初対面になっています。
物語は、登場人物の背景や展開に大きくアレンジが加えられていますが、原作とは違う勢いのある面白さがありオススメです。


第2話「振袖源太」(『オール讀物號』1931年5月号)

あらすじ
素晴らしい美貌の持主で軽業の名人・振袖源太の芸当を見物した平次は、帰り道で川に身投げしようとしている老人を助ける。
老人は呉服屋・福屋善兵衛の家で働いており、先月の二十五日から十日毎に善兵衛の子どもが行方不明になっており、先日三番目の子どもの付き添いをしていながら守れなかったために自害しようとしていたとの話だった。
平次は事件に乗り出すことにしたが、見張っていたにも関わらず四人目の子どもが消えてしまう。
残された子どもはあと一人。果たして、平次は事件を解決できるのか。

紹介と感想
まだ八五郎がいないため、名無しの子分が大量に出てくるのと、即席の協力者が出来ます。また、石原の利助が初登場です。
事件自体は、不可能状態からの誘拐を扱ったものですが、ミステリー的に凝ったものではなく、唐突に犯人へと繋がっていきます。

レギュラー:笹野、利助
  投げ銭:あり

映像化
『銭形平次捕物控・振袖源太』(1931/松竹)
 監督・脚色:広瀬五郎
    出演:関操、山田あけみ、若松秀雄、他

漫画
石森章太郎プロ シナリオ:大石賢一『銭形平次捕物控』
 第六話「かどわかし」

物語は原作に忠実ながら、絵による伏線や人物の感情や動きにに変更を加えることによって、原作より納得度の高い内容となっていました。
また、八五郎やお静、万七などシリーズキャラクターも登場しています。


木村直巳『銭形平次捕物控』
 第三話「振袖源太」

大きくアレンジが施されており、メイン登場人物の設定と事件の背景は一部踏襲していますが、基本的にはオリジナルの物語となっています。原作以上に振袖源太がドラマの中核に来るようになっており。面白かったです。
また、連作物として平次とお静が好いている者同士の微妙な距離感だったり、利助親分が原作よりも平次と距離が近い様子も楽しめます。


第3話「大盗懺悔」(『オール讀物号號』1931年6月号)

あらすじ
世間から風太郎と呼ばれる、物を盗んでは三日以内で返す盗人が江戸を荒らしていた。
笹野新三郎に頼まれ平次も事件へ乗り出すが、一向に尻尾を掴むことが出来ずにいた。
ある時、赤井左門の屋敷から二千両の小判が盗まれ、三日たっても返ってこなかった。
この金は、家光公直々の御墨付と一緒に上片へ送る手筈になっており、見つからなければ赤井左門は腹を切らなければならない。
平次は、二千両と風太郎の行方を探し出すことができるのか。
しかし、事件はこれだけでは終わらなかった。

紹介と感想
遂にガラッ八の八五郎が初登場です。しかし、まるで前から居るかのような平次とのやり取りを初回から見せてくれます。
事件の方は、短い中に風太郎が様々な盗みの手口を見せて楽しませてくれますが、ミステリーの趣向としては弱く、この時期には多い最後に犯人が事件の背景を語る形となっています。
見所は、普段の平次では見ることができない、下手人と目される女への拷問姿です。もちろん、これには平次なりの考えがあります。

レギュラー:八五郎
  投げ銭:なし


第4話「呪いの銀簪」(『オール讀物號』1931年7月号)

あらすじ
布袋屋万三郎が出した屋形船の中で、話題の芸妓が右眼に銀簪を深々と刺されて死んでいた。
利助は布袋屋万三郎を捕まえるが、その後も同じ手口で若い娘が三人殺された。
平次は、下手人の見込みを聞きにきて、平次の留守宅から覚え書を盗んだ女を探す。
銀簪で眼を突いて殺すなどと残虐なことをするのはどんなやつなのか。平次は追及を進めていく。

紹介と感想
平次も顔を背けたくなる残虐な連続殺人が扱われています。
推理の妙はありませんが、短い中にサスペンス性があり中々楽しかったです。
所謂サイコパスにあたる犯人を扱っていますが、掘り下げがもう少しあると更に面白かったと思います。

レギュラー:八五郎、笹野、利助
  投げ銭:あり


第5話「幽霊にされた女」(『オール讀物號』1931年8月号)

あらすじ
美人で評判の近江屋の娘・お雛が行方知れずになった。
近江屋夫婦は観相院という易者から、日頃大事にしていた物と、三百両の小判を棺桶へ入れて葬るように言われたとのこと。
平次は、お雛は生きていると思って捜査を始めるが手がかりが中々掴めない。
そんな時、八五郎が足を紅い結綿で縛った烏が見つかったとの話を持ってきて……。

紹介と感想
初期らしく、事件のカラクリが派手な物になっており、それに合わせて犯人も過去の恨みを胸に抱く極悪人となっていました。

後半、お化け屋敷が舞台となってからは派手さも増していき、最後に犯人が行おうとした行為は江戸川乱歩の描く犯人の行為を感じさせました。
読者は平次の捜査を追うことしかできませんが、最後まで面白く読む事が出来ます。

レギュラー:八五郎、笹野
  投げ銭:あり



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