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#1 今週の「名言とことば」

 今週木曜日に開始したシリーズ「名言とことば」は、毎週末(土曜日)にnoteにて一所にまとめ、ツイートしきれなかった情報も加えてご紹介しようと思います。
 今週は第一週目という事で、木(25日)・金(26日)・土(27日)曜の3日間分を掲載します。

 一通り書き終わってから読み返しましたら、ことばによって文量がかなり偏っていますけど、文が少ないものは情報があまり集まらなかったものとご了承ください。

#1「あせってはいけません。ただ、牛のように、図々しく進んでいくのが大事です。」—夏目漱石

なつめ-そうせき【夏目漱石】英文学者・小説家。名は金之助。江戸牛込生れ。東大卒。松山中学・五高で教える。一九〇〇年(明治三三)イギリスに留学。帰国後東大講師、のち朝日新聞社に入社。〇五年「吾輩は猫である」、次いで「倫敦塔」を発表し文壇の地歩を確保。他に「坊つちやん」「草枕」「虞美人草」「三四郎」「それから」「門」「彼岸過迄」「行人」「こゝろ」「道草」「明暗」など。(一八六七~一九一六)

『広辞苑 第七版』

 第一回の投稿は、文豪・夏目漱石さんより「あせってはいけません。ただ、牛のように、図々しく進んでいくのが大事です。」。

 この言葉は、漱石が久米正雄さん・芥川龍之介さんに宛てた手紙の中に登場します。
 龍之介らは当時、漱石の新しい門下生。まだ全くの無名だった龍之介は、漱石に葉書を送ったそうです。
 「明暗」の執筆中だった漱石は、その葉書に返事を出しました。
 内容は、二人を励ますもの。この中に、上のことばが登場します。
 以下に手紙の全文を引用させて頂きました。

 あなたがたから端書がきたから奮發して此手紙を上げます。僕は不相變「明暗」を午前中書いてゐます。心持は苦痛、快樂、器械的、此三つをかねてゐます。存外凉しいのが何より仕合せです。夫でも毎日百回近くもあんな事を書いてゐると大いに俗了された心持になりますので三四日前から午後の日課として漢詩を作ります。日に一つ位です。さうして七言律です。中々出來ません。厭になればすぐ已めるのだからいくつ出來るか分りません。あなた方の手紙を見たら石印云々とあつたので一つ作りたくなつてそれを七言絶句に纏めましたから夫を披露します。久米君は丸で興味がないかも知れませんが芥川君は詩を作るといふ話だからこゝへ書きます。
  尋仙未向碧山行。住在人間足道情。明暗雙雙三萬字。撫摩石印自由成。
(句讀をつけたのは字くばりが不味かつたからです。明暗雙々といふのは禪家で用ひる熟字であります。三萬字は好加減です。原稿紙で勘定すると新聞一回分が一千八百字位あります。だから百回に見積ると十八萬字になります。然し明暗雙々十八萬字では字が多くつて平仄が差支へるので致し方がありません故三萬字で御免を蒙りました。結句に自由成とあるは少々手前味噌めきますが、是も自然の成行上已を得ないと思つて下さい) 
 一の宮といふ所に志田といふ博士がゐます。山を安く買つてそこに住んでゐます。景色の好い所ですが、どうせ隱遁するならあの位ぢや不充分です。もつと景色がよくなけりや田舎へ引込む甲斐はありません。
 勉強をしますか。何か書きますか。君方は新時代の作家になる積でせう。僕も其積であなた方の將來を見てゐます。どうぞ偉くなつて下さい。然し無暗にあせつては不可ません。たゞ牛のやうに圖々しく進んで行くのが大事です。文壇にもつと心持の好い愉快な空氣を輸入したいと思ひます。それから無暗にカタカナに平伏する癖をやめさせてやりたいと思ひます。是は兩君とも御同感だらうと思ひます。
 今日からつくつく法師が鳴き出しました。もう秋が近づいて來たのでせう。
 私はこんな長い手紙をたゞ書くのです。永い日が何時迄もつゞいて何うしても日が暮れないといふ證據に書くのです。さういふ心持の中に入つてゐる自分を君等に紹介する爲に書くのです。夫からさういふ心持でゐる事を自分で味つて見るために書くのです。日は長いのです。四方は蝉の聲で埋つてゐます。以上
     八月二十一日                 夏目金之助
   久 米 正 雄 樣
   芥川 龍之介 樣

出典:『漱石全集 第15巻』續書簡集(岩波書店、昭和42年2月18日発行)、「夏目漱石の手紙(久米正雄・芥川龍之介あて)」より

 漱石の温かさが垣間見える手紙ですね。

#2「不言実行とともに、有言実行もまた大いによろしい」―渋沢栄一

しぶさわ-えいいち【渋沢栄一】実業家。号は青淵。武州血洗島村(埼玉県深谷市)の豪農の子。初め幕府に仕え、明治維新後、大蔵省に出仕。辞職後、第一国立銀行を経営、静止・紡績など多くの企業設立に関与、財界の大御所として活躍。引退後は社会事業・教育に尽力。子爵。(一八四〇年~一九三一年)

『広辞苑 第七版』

 渋沢栄一さんは御存じの通り、明治・大正期の実業家でトップクラスに有名な方です。2021年のNHK大河ドラマ、「晴天を衝け」でもまた知名度が一気に上がりましたね。

 栄一の実業家としての才能はすさまじく、企業にかかわった会社の数は500に及ぶとも言われます。有名なところでは、現・「みずほ銀行」、現・「東京証券取引所」、現・「JR」現・「日本郵船」、……………。

 そんな栄一のこの考えが、現代にも多大な影響を及ぼす人生を創っていったのかもしれません。

#3「質問にたどり着いたなら、答えはすぐそこだ」―Ralph Waldo Emerson

原文:「When we have arrived at the question, the answer is already near.」

エマーソン【Ralph Waldo Emerson】アメリカの思想家・詩人。ユニテリアン神学にドイツ観念論、特にカント哲学の精神を移入し、超越主義を唱えた。著「自然論」「代表的人物論」「エッセーズ」など。(一八〇三年~一八八二年)

『広辞苑 第七版』

 ラルフ・ワルド・エマーソンさんは、アメリカで思想家・哲学者、詩人・エッセイリストなどとして活躍した方です。
 彼の評論は、後の思想家・作家などに大きな影響を与えました。

 エマーソンが唱えた「超越主義」は、一言でいえば「有限な存在のうちに神的な物の内在を認める神秘的汎神論のような立場を」とる考えだそう。
 また彼は、自身の中心主義を一言にすれば、「個人の無限性」であると語っています。

 「質問にたどり着いたなら、答えはすぐそこだ」。一般に、「答え」は「質問」の数しか存在しないと言えるでしょう。だからこそ、その「質問」に辿り着くのが大切なのである。「質問」を自ら探しに行くからこそ、個人にも「無限性」が与えられる。そんなことを意味しているのではないでしょうか。


 という事で、今週の「名言とことば」をまとめていきました。
 このシリーズは、Twitterにて毎日更新しております。どうぞ、そちらもお読みくだされば幸いです。
 これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

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