日記に短歌 2024.11.16~11.19
11.16
雑貨屋さんへ向かって歩いているとき、少し離れたところでおばあさんが尻もちをつくように転ぶのが見えた。
おばあさんの近くにいた高校生ぐらいの女の子とその母親らしき女性が助けてあげているようだけど、私も心配になって「大丈夫ですか?」と駆け寄る。
八十代ぐらいのおばあさんは痩せていて弱弱しくて「大丈夫です……すいません……」と小さな声で答える。意識はしっかりしているようだ。
目の前のコンビニに行くというので、私と女の子でおばあさんの両脇を抱えるようにして立ち上がらせてはみたものの、支えられた状態で二歩ほど歩いて休み、また二歩歩いて休み、といった具合である。「ゆっくりで大丈夫ですよ」と声をかけたものの、田舎のコンビニは駐車場が広くてお店の入り口までがとてつもなく遠く感じた。
女性がコンビニの店員さんに話をして店の入り口付近に椅子を持ってきてもらい、とりあえずそこへおばあさんを座らせる。とても歩いて帰れそうにないおばあさんを前にして、私も母娘も店員の若い女の子二人もどうしていいのかわからずに悩んでしまう。
救急車も考えたけど、「痛いところはない?」と聞くと「大丈夫です……」と答えるので救急車を呼んだところで乗せてもらえないだろう。
おばあさんは「タクシーで帰ります……」と言うので、店員さんにタクシーの手配を頼んで、私と母娘はその場を離れることにした。
「お気をつけてね」と声をかけると、おばあさんは「ありがとうございます……」と弱弱しく答えた。
それからずっとおばあさんのことが気になっている。ちゃんと家に帰れただろうか。どこかしら痛くなってるんじゃないだろうか。家族はいるのか、ひとり暮らしなのか……。
考えても仕方ないとわかっているのに考えてしまう。たまたま通りかかった通行人としてやれることは十分やったと思う。もうそれでいいじゃないか。それ以上のことはしなくていいし、考えなくていい。人助けをして徳を積めてよかったわ~、ぐらいに思っておけばいい。わかっているのに頭を切り替えるのは難しい。
ただ、改めて考えてみると、かつて引きこもりだった私がとっさに知らない人のもとへ駆け寄れたことには自分でも驚く。私の心身は自分で思っている以上に健康になってきているのかもしれない。
年末と冬と死 転んだおばあさんを助けてあげる街路樹の下
11.17
家族と日立へ日帰りで出かける予定を立てていて、色々と調べているうちに一日が終わった。
一番の目的は日立駅。ガラス張りで海が見えるというのは知っていたけど、日立が思った以上に海沿いの町で驚いた。
私はずっと茨城に住んでいるけれど、県南地域なので県北のことは全然知らないのだと改めて思う。下り電車に乗ること、ほぼないし。
乗り物酔いしやすい私にとって、旅行などの遠出中は常に楽しい気持ちと不安な気持ちの両方を抱えているけれど、行き先について調べている段階は楽しい気持ちだけで居られる気がする。
何事にも不安を感じてしまう私にとって調べることは不安を減らすということでもあるし、これが私のスタイルとはいえ、行き当たりばったりの旅はできないだろうな~と思うとちょっと損している気分になる。
予定通りに旅するだけの映画なんて見ていても退屈だ。私の旅は退屈なのかもしれない。
亡き祖母がかつて暮らしていた町に海があること今日まで知らず
11.18
好きな服のブランドからアンケートのメールが届いた。500円分のポイントがもらえるというので答えたところ、同じ会社がやっている別のブランドからもアンケートがきた。やはり500ポイントもらえるらしい。
ということは、簡単なアンケートに答えただけで1000円分のポイントがもらえるってこと……? 超ラッキーじゃん!
私は数年前にアンケートモニターにいくつか登録をして、一年間でどれくらい稼げるのか試したことがある。アンケート(と、お店の覆面調査を数件)で一年で5万円ほど稼いだ。
働くことが難しい私にとっては自力でお金を稼げたことがうれしかったけど、よく考えると掛かった時間と目の疲れの割に合わないな……と気づいてしまい、アンケート関連のすべてのアカウントを削除した。
そんな経験があるので、1000円分のポイントを一日で稼げるなんて夢のような話である。ありがたいねぇ。二件目のアンケートもノリノリで答えた。
ポイントは欲しかったワンピースを買うときに使おう。きっと似合うと思うんだよな。なんなら、セールの時期まで待とう。うひひひひ。
服のことを考えられるときは余裕がある時だ。調子がいいんだね、私。
欲しい服がたくさんあるし古ぼけた希死念慮もう使えないかも
11.19
昔からメイクに興味がない。ここ数年は「そんな私でもいいよね!」と開き直り、アイブロウと口紅だけでやってきていた。
しかし、気づいてしまった。今の私の肌はイマイチきれいじゃない。
肌荒れもしていないし、体調も悪くないわけで、これはいわゆる「くすみ」というやつではないか……!
しわがたくさんできているのは自覚していたけど、それに加えてくすみまで出てきたのか! 気持ち的には追いついてないとはいえ、ちゃんとおばさんの入り口に立ってるんだなぁ(もう入り口ではないのかもしれないけど。入場済みかもしれないけど)。
おばさんはメンタルが強そうなイメージがあるので、私も立派なおばさんを目指したい。でも、できるだけきれいなおばさんでいたい。
できてしまったしわはどうしようもなさそうだけど、くすみならファンデーションでごまかせるんじゃない? と思い、ファンデを買いに行くことにした。
メイクに興味がない私、ファンデを買うのは十年ぶりぐらいだろうか。知識がないので、とりあえず最近人気があるらしいSNSでもたまに見かけるやつを買おうと決めていた。
ファンデは色選びが肝心だろう。メイクに興味がない私はお店でテスターを使ったことがないけど、ここはちゃんと確認したほうがいいかもしれない。
ドラッグストアでお目当てのファンデを見つけてテスターを使おうとするも、空っぽだった。容器の周りに少し付いているだけで、ほかの色も同じような感じだ。
世の中の人たち、めちゃめちゃテスターで試してから買うんだな! と感心する。仕方がないので、イエベ秋の私は一番黄みが強そうなやつを買って帰ることにした。
帰宅してさっそくファンデをつけてみる。ふたを開けてパフを取ると、なんと空っぽなのである。
えっ! 中身別売りなのかな? と思ったときにわかった。これ、内蓋だわ。
私が買ったのはクッションファンデというもので、内蓋をあけるとファンデが登場した。ということは、テスターも内蓋をあければ使えたのでは……?
ひぃぃぃぃぃぃ! 恥ずかしい! 自分の無知が恥ずかしいぃぃぃぃぃぃ!
しばらくの間恥ずかしさに悶えたものの、人に見られていたわけじゃないしいいじゃないかと思うことにした。テスターの時点で気づけなかった私、どんまい。
ファンデはちゃんと肌になじんでいるので色選びはこれで大丈夫そう。肌も普段より明るくきれいに見えるけど、しわはより目立ちやすくなった気がするので塗り方に工夫が必要かもしれない。きれいなおばさんへの道は続く……。
見慣れない老けた私を恋人は愛し続けている冬うらら