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カチカチ時間とさらさら時間~公教育を流れる時間はどちらだろう~
こんにちは。特別支援学級教員13年目のMr.チキンです。息子の体調ですが、快復しつつあります。一安心です。大学院のレポートが初めて不合格で返却されてきたので、一週間かけて直さなくてはいいけません。ストレートで上手くいくよりも、こういうのは燃えますね。
さて、今日はカチカチ時間とさらさら時間という言葉についてお話をさせてください。
「本物のウナギを食べさせてあげます。」
今から15年近く前のことです。
当時学生だった私は、長谷川幸介という先生の講義を受けていました。
社会教育についての講義だったので、特別支援教育が専門だった私にとっては卒業必須科目ではありませんでした。
しかし、私の人生にとっては必須科目でした。
先生の講義はいつも面白かったのですが、ある日先生が
君たちに本物のウナギを食べさせてあげます。
とおっしゃいました。私たちはきょとんとしてしまいました。
長谷川先生は私たちを水戸の老舗であるウナギ専門店に通してくれました。
私たち学生の身分では、とうてい敷居をまたぐことのできない、格式高い店です。
着物を着た女性が、私たちを客間に通してくれます。上品な立ち居振る舞い。
肉厚なウナギに上品なタレのかかったものに舌鼓を打ちながら、みんなで先生の話を聞きました。
合間に、先生は、チャーミングに笑いながら、
ね。社会教育っていいもんでしょう。
とおっしゃいました。その粋なこと。私もいつか後輩ができたときに、このようなことができるような大人になりたいと感じたものです。
カチカチ時間とさらさら時間
そんな長谷川先生が、講義の中でこんなことをおっしゃいました。
時間はすべての人に平等に流れます。
そんな時間には2種類の流れ方があります。
カチカチ時間とさらさら時間です。
カチカチ時間は、「早く終わってほしいなぁ。」と思う時間の流れ方です。
さらさら時間は、「いつまでも終わってほしくないなぁ。」と思う時間の流れ方です。
カチカチ時間は、後ろから追いかけてきます。
さらさら時間は、前で待っています。
カチカチ時間は、地位や役職によって比べられる社会に流れます。
さらさら時間は、地域や家にあるかけがえのない人として受け止められる社会に流れます。
カチカチ時間は、年を取ります。
さらさら時間は、年を重ねます。
今、この長谷川先生の話を振り返った時、
”自分の教室の中は、どのような時間が流れているのだろう?”という問いをもちます。
私たち教育に携わる者は、計画を立てながら教育活動を行います。
春に入学し、運動会や学習発表会、縦割り活動などを行いながら、3月の卒業式を迎えます。
国語や算数などの教科学習は、学習指導要領に大枠が決められ、各学校がカリキュラムを決めます。
ともすれば、私たちの教室の中は、一歩踏み入れた瞬間にカチカチ時間が流れます。
一旦プレートから足を外そう
今、まさに多くの学校で通知表を付けている時期かと思います。
そうなると、「この活動はまだ評価できていない!」と、”やらなくてはいけないことに追われる”という日々が続きます。
そんな時、担任が少しプレートを外すだけで、教室にさらさら時間が流れます。
夏休みのできごと発表タイムをつくる
くだらない冗談を言う
担任の若いころの失敗談を赤裸々に語る
飼っている犬の話をする
へたくそな手品をして、タネがばれたのをみんなで笑う
創造してください。子どもたちの表情を。
さらさら時間の過ごし方を覚えた子たちは、きっと年を重ねていける大人になるはずです。
ひょっとすると、インクルーシブに必要なのは、こういうさらさら時間の存在なのかもしれません。
元々僕たちは比べられない存在として生まれてきた
長谷川先生は、先の講義で、続けてこう言いました。
元々僕たちは比べられない存在として生まれてきたんです。
家にいるお父ちゃんも、お母ちゃんも、そしてあなたも、かけがえのない一人の人なんじゃない?
でも、僕たちは気付かないうちに比べてしまいます。
「お隣のお父ちゃんは年収〇万円ももらってるんだって。」
「同じ職場のAさんは、お母ちゃんよりも〇kgも痩せているってよ。」
「あなたの行っている大学は東大よりも偏差値がかなり低いね。」
なんて。
僕たちは数字を使って簡単に人とかけがえのないものを比べてしまう。そんな社会に気付いたらしてしまっていたのですね。
この長谷川先生の言葉を、皆さんはどう受け止められるでしょうか。
私は時々この言葉を思い出し、自らの行いを振り返ることにしているのです。
では、またね~!