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✓水車小屋のネネ
▽あらすじ
「家を出ようと思うんだけど、一緒に来る?」
身勝手な親から逃れ、姉妹で生きることに
決めた理佐と律。
ネネのいる水車小屋で番人として
働き始める青年・聡。
水車小屋に現れた中学生・研司…
人々が織りなす希望と再生の物語。
▽印象に残ったフレーズ
でも私のことはわりと信用して
ほっといてくれたよね、と律が言うと、
まあ律は私より難しい感じが読めたしね、
と姉は答えた。
「誰かに親切にしなきゃ
人生は退屈なものですよ。」
自分はおそらく姉やあの人たちや、
これまで出会ったあらゆる人の
良心でできあがっている。
「自分が元から持っているものは
たぶん何もなくて、そうやって
出会った人が分けてくれたいい部分で
自分はたぶん生きている。だから
誰かの役に立ちたいって思うことは、
はじめから何でも持ってる人が
持っている自由からしたら
自由からしたら制約に見えたり
するのかもしれない。
けれども、そのことは自分に
道みたいなものを示してくれたし、
幸せなことだと思います。
▽感想
理佐の親に心底腹が立った。
いくら一人が大変だったからとは言っても
やっていい事とわるい事の区別が
つかない人が親なのは理佐や律が
かわいそうだなと思った。
家を出ていく決断も、
律を連れていく決断もすごいと思ったけど
姉についていこうと思った律も
凄いと思った。
裏を返せば、それほど家から
出たかったということになるけど…
けど、そういうマイナスな境地から
始まった人生は、周りのありようで
プラスになるかマイナスになるかに
別れる気がするなあと思った。
決まった人たちしかでてこないのに、
40年という人生をまるで日記のように
書いている。それが読んでいて
とても心地よい。
この本もまた何も考えずに
本を字を読むということに
純粋に楽しめる作品だなと思う。
波子さんや守さん、理佐や律の
周りにいた人たちが
良い人だったから、こんな温かい
物語が生まれたんだろうなと思う。
水車小屋のネネ/津村記久子/毎日新聞出版