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音楽は人生の友人

私は自宅にいる間、ずっと音楽をかけている。
ジャンルは様々だが洋楽が多い。受験勉強の時の名残か、BGMに音楽が流れていると集中もリラックスもできる。
洋楽との出会いは幼い頃、父が運転する車の中だった。
車の運転が大好きだった父。運転しながらThe BeatlesやCarpentersなどの洋楽を聴いていた。
途中サザンオールスターズに浮気して、調子っぱずれにサザンを口ずさんでいた父を思い出す。

私は好きになったアーチストはCDを買い、大切に保管している。
中学生の頃から好きな曲をカセットテープに編集し、登下校時や自習時に何度も何度も聴いていた。
編集したカセットを親友が気に入り、ダビングしてプレゼントしたこともある。
カセットテープはいつしかCD-Rとなり、今はデジタルオーディオプレーヤーに変わっている。
聴きたい時にすぐに聴けるよう、外出する時は必ず鞄にウォークマンを入れている。
飽きもせず数か月間同じCDを聴いていることもあるが、新しいお気に入りが見つかれば次のCDに移っていく。
そんな聴き方をしているせいか、過去によく聞いていた曲を改めて聴くと、当時の記憶が鮮やかによみがえる。
私の記憶は音楽と強く結び付いている。

歴代のパートナーたち

若い頃は積極的に曲を探していたが、最近はある程度人気の出た曲を中心に、オムニバスのCDやMTVを流しながらのんびり「ハマる曲」を探している。
最近の「○円で○曲聞き放題!」といったサービスは、音楽の海に溺れそうで利用していない。

今回のコロナ禍。
医療従事者は毎日が戦争だった。
特に2020年~2021年はコロナ一色。記憶にそれ以外の色はない。
診療所と自宅をただ往復する毎日。友人との外食を禁じられ、毎日が寒々しいものだった。

2021年秋のコロナが落ち着いたある日。
リハビリに通う患者のFさんが、自ら主催する音楽の会へ私を誘ってくれた。

レストランで料理とアルゼンチンタンゴを楽しむ皆さん

会食付きの音楽会だったが感染のリスクから会食は遠慮し、演奏を聴くために会場の隅に一人座る。
生演奏の音楽は久しぶり。人間が奏でる美しいメロディに、忘れていた「人生の美しさや輝き」が鮮やかに心によみがえってきた。
日常の緊張がほどけていき、涙が込み上げる。
日々の生死との戦いに冷え切った私の心を音楽が温かく包み込み、灰色がかった世界が色を取り戻した感覚だった。
一方で、医療従事者はまだ会食が許されなかった時期。
楽しそうに会食する参加者の皆さんがいきいきと眩しく、彼らとの壁を感じたことも思い出す。

コロナ禍が始まり、気が付けば4年が経とうとしている。
相変わらずコロナの対応が続く中、去年からよく聞いている曲がある。
Robbie Williamsの「Lost」だ。

曲は歌詞でなくメロディから入る私。
昔から失恋や挫折した時に聴いて心の傷を癒していたせいか、メランコリックなメロディが心に刺さりやすい。
この曲は恋人を失った喪失感を歌っているのだけれど、私の中でコロナで失われた時間などへの喪失感と重なった。
また、コロナ対応で感情が平坦化していた私の心に「impress me(私の心を揺さぶってくれ)」のフレーズが沁み、深く共感した。
コロナ禍は医療従事者にとってハードな経験だったが、音楽は私の心が壊れないよう守ってくれた。

音楽は、泣きたい時に「泣いていいんだよ」と優しく肩を抱いてくれる。
嬉しかった時は、一緒に喜んでくれる。
気分を上げたい時は、鼓舞してくれる。
落ち込んだ時は、励ましてくれる。
疲れた時は、癒してくれる。
まるで友人のように。

将来自分の人生を楽しく振り返ることができるよう、これからも大好きな音楽を友人として大切にしよう。
これからどんな曲、どんな友人に出会えるのか、楽しみにしながら毎日を過ごしたい。


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