〜揺蕩う〜 2024/12/08

日曜の早朝、いつものように朝一番に緑茶を淹れる。

今週末は一段と気温が下がり、朝の部屋は冷え込んでいる。そのせいか分からないけれど、湯呑みに注いだ緑茶から出る湯気がいつもより多い気がした。

液面から伸びる湯気が連なって紐のようになり、ゆらゆらと揺れた後に霧散していく。ただの湯気なのだけれど非常に美しいと思った。

もしかして、これが『揺蕩う』ということなのだろうか。日常生活で『揺蕩う』という動詞を使ったことがないけど、今目の前で起きている現象は間違いなく『揺蕩う』だ。

紐のように伸びた煙が、今度は太くなった。太いけれど真ん中に穴が空いているように見えてホースやマカロニのような見た目だ。そんなマカロニ湯気はクネクネとしながら上へ上へと向かっていく。日本昔ばなしに登場する龍のように昇っていき、フッと消える。

かと思うと今度は湯気がクルクルと回り出した。何も形作らずただクルクルと回りやがて消えていく湯気。まさに空気の流れを可視化しているようだ。例えるなら、周りながら上昇していく霧のようだ。

龍のようだと思っても一度瞬きをすると今度は紐のように、そしてマカロニのように、そして霧のように。あまりにも不安定ですぐに消える湯気の動きは決して一言では表せない。

この一連の流れを表す言葉はやはり『揺蕩う』しかない。揺蕩うの語源が何なのかは知らないけれど、この言葉を考えた人もきっと今の自分と同じ状況だったんじゃないかと思う。

湯気なんていうのはどこにでもあるありふれたものなのに、そんな他愛のないものの動きを表す言葉があるなんて、ありふれたものなのに一つの言葉でしか表せないなんて、なんとも不思議なことだと思う。

揺蕩うものは湯気以外に思いつかない。

揺蕩うの、湯気以外での使い道。もしあればそれは素敵なものだろう。


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