記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

韓国映画「お嬢さん」 究極のシスターフッド

韓国映画「お嬢さん」を配信で鑑賞しました。
で、感想を書いてみようと思います。
(1961年の日本映画「お嬢さん」とは違います)

※この作品はR18作品です。
記事の中できつい性的描写はしてませんが、苦手な方・抵抗ある方はサクッと退避してください。

先月、山寺に行ったときに買いました。今のうちに退避を!


はじめに

簡単な情報です。

2016年(日本公開2017年) 韓国
監督 パク・チャヌク
出演 秀子(キム・ミニ)
   珠子/スッキ(キム・テリ)
   藤原伯爵(ハ・ジョンウ)
   上月(チョ・ジヌン)

1930年代、日本統治下の韓国。スラム街で詐欺グループに育てられた少女スッキは、藤原伯爵と呼ばれる詐欺師から、ある計画を持ちかけられる。それは、莫大な財産の相続権を持つ令嬢・秀子を誘惑して結婚した後、精神病院に入れて財産を奪い取ろうというものだった。計画に加担することにしたスッキは、人里離れた土地に建つ屋敷で、日本文化に傾倒した支配的な叔父の上月と暮らす秀子のもとで、珠子という名のメイドとして働きはじめる。しかし、献身的なスッキに秀子が少しずつ心を開くようになり、スッキもまた、だます相手のはずの秀子に心惹かれていき……。
映画.comより


さすがパク・チャヌク作品

冒頭で「R18作品ですよ」とお伝えしましたが、そんなにいやらしい印象を自分は受けませんでした。
秀子と珠子の女性同士の性交シーンは結構あるのですが、「これは見せるけどこれは見せない」という線引きがちゃんとされているなと。

また、男たちの前で女性に官能小説を朗読させるシーンがありますが、これもいやらしいというよりは性倒錯的変態な印象が強い。
悪趣味な気色悪さが先に立ちました。

全体的にエロは扱ってるし、それが大事な要素であることは間違いないのですが、なんだろう、エロティシズムの良き側面と悪しき側面のバランスをきちんとはかっていると思います。
まあでもこれは個人の主観かもしれません。

作品の感想をひとことで言えば「すごい!」。
さすがパク・チャヌクさん。

まずストーリー構成が凝ってます。
このお話は3部構成なのですが、第2部が第1部の裏返しになっていて、第1部で展開されたお話を逆の視点から描きます。

その構成のためか、第1部はシーンを印象付けるためにちょっともったり感じるのですが、第1部の終わりにどんでん返しが待っています。
自分もここでまんまと騙されました。。。

この作品はできるだけ事前情報を入れずに観た方がいいのですが、ここまでならまだ間に合うかも。
ここまでで興味を持たれた方は、今サクッと退避。

この前食べたインド国旗カレー。ささ、今のうちに退避を。


自分はパク・チャヌク作品は「復讐3部作」以来久々に観たのですが、相変わらず画に力があって、色彩感覚が華麗。
あと、なにげに音楽も好きです。(「オールド・ボーイ」のサントラとか昔、聴いてたなあ)

お話は趣向が凝らされてるし、ビジュアルはいいし、音楽もいい。俳優の見せ方もうまい。
こんなに何拍子もそろってる作品はなかなかないのですが、でもパク・チャヌク監督ならある意味それは当たり前というか。

この作品はなんといっても、テーマの構図が完璧だと思います。

縦と横、構図が完璧

見出しにも書きましたが、この映画は「究極のシスターフッド」だと思います。

この映画は構図がはっきりしてて、支配国(日本)と被支配国(韓国)、富と貧、お嬢さんとメイドなど、縦の関係が背景にあります。

そこで最初は、日本人であるお嬢さんの秀子を騙し貶めることで縦関係を反転させてやり返そうとした。
(藤原伯爵は実は韓国人で、日本人の身分を手に入れてスッキ〈珠子〉に詐欺を持ちかけた)

「下」から「上」への、「弱」から「強」へのカウンターパンチですよね。
まあ、でもこのやり返しは映画にはよくあるパターンです。
やり返すとスッキリしますからね。

ただパク・チャヌク監督の鋭いところはスッキリだけで終わらせずに、お嬢さんを騙す過程で、「男性と女性」という今日性のあるジェンダーの縦関係を浮かび上がらせたところです。

藤原も秀子の叔父の上月も、女性を(性的関係も含めて)支配することに喜びを見出す男です。
それが物語が進むにつれて明らかになっていきます。

一方、珠子は騙すつもりで甲斐甲斐しく世話をしていた秀子のことを、段々好きになっていきます。
また秀子も、珠子の献身的な働きぶりに心を許していきます。
さらに、2人とも赤ん坊の時に母親を亡くしているという共通点もありました。
お互い思惑があって近づいたのですが、そこにはからずも愛がうまれます。
そして2人は計画をたてて、藤原伯爵と上月の男たちをだし抜きます。

性愛を含んだ女性同士の連帯という圧倒的な横関係が、上記で挙げた縦関係を木っ端みじんにするんですよね。
もうそれに「やられた!」って感じです。

国籍も身分も立場も超えた女性同士の「愛」が、旧来の支配的な男の力を粉々にする。
これ以上のシスターフッドってありませんよね。
しかもそこには人を愛する喜びがある。義務感でやってるわけじゃない。
なので見終わった後、とても清々しい気持ちになりました。

と、この構図の完璧さは文句なしの☆5つなんですが、実際に作品を観ている時は頭ではすごい映画だと分かっているのだけど、それに比して心がそこまで震えなかった。

なんでだろう?
ストーリーに仕掛けがあるから、それを追うのに必死だったのかもしれない。
あるいは、構図が完璧すぎて登場人物たちがほんの少し駒のように感じられたのかもしれない。
ただ良い映画ということは間違いないです!

というわけで、総合評価は☆☆☆☆+☆半個

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

◇おまけ
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、お嬢さん宅は日本でロケが行われました。
三重県桑名市の六華苑というところです。
あと、藤原と秀子と珠子が日本で投宿した場所は、これまた三重県の名張藤堂家邸跡というところです。
ちょっとロケ地巡りしたい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?