映画感想文「エイリアン:ロムルス」 シリーズの優等生作品。令和のラノベ風エイリアン!
映画館で現在公開中の「エイリアン:ロムルス」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。
「エイリアン」シリーズは一応全作観てるけど、そんな熱心なファンではありません。
前作の「エイリアン コヴェナント」(2017)も慌ててつい先日観ました。(だって前々作の「プロメテウス」にのれなかったもんだから)
そんな人間の感想です。
※ネタバレありです。
そんなきついネタバレはないと思うけど、何をもってネタバレとするかは人それぞれ。
これから観に行くよって方は退避してくださいませ。
はい、今回の主人公はティーンエイジャーです。
あらすじにもあるように、劣悪な労働環境の星に住むティーンエイジャーたちが「けっ!こんなこといつまでもやってられっか」「親たちみたいにこき使われて死ぬなんてまっぴらだ」ということで、星を出ようとする。
でも目的の星に行くには時間がかかるので冷凍睡眠装置が必要。
ちょうど自分たちの星の近くに廃宇宙船が漂っていて、その船になら冷凍睡眠装置がありそうだと。
じゃあ「誰も気づかないうちに盗みにいくぜ」。
でも観客は知っている、どうして廃船になっているかを。
そう、その船にはエイリアンがいるから。
ってな感じの軽い導入で物語は進みます。
この軽い感じは個人的には大好き。
今回の登場人物たちであり(エイリアンの)餌食はこういう(年代の)人たちなのね、っていう背景はできるだけ簡単な方がいいと思うから。
キャラクター(性格)は廃船内を探査している間やエイリアンが出てきてから分かるから。
ティーンエイジャーが餌食っていうのは新味があって、ドキドキしました。
そういえばアルバレス監督の「ドント・ブリーズ」も、若者が盲目の老人男性の家に盗みに入ったら実はとんでもなく強くて…っていうお話だから、この導入はお得意だったのかもしれません。
良い意味で「エイリアン」っぽくない始まりがラノベ風で新鮮だったのでございます。
さらに随所に工夫があって、アトラクション風の味付けありで飽きない。
シリーズのオマージュもあるし、重力/無重力の切り替えなんかSF映画として面白い。
エイリアンの何でも溶かす酸の体液を無重力でよけるとことか、「おお!」って思いましたね。
シリーズの型(主に1や2)をちゃん踏襲してオールドファンの懐に飛び込んでるし、アンドロイドの関係性はAIが当たり前になりつつある今の時代に合わせてるし、若物を主人公にして新しい世代にも訴求している。
目くばり気くばりがちゃんとされてて、もうほんと優等生な作品。
ただ、ティーンエイジャーの軽いノリは好きだけど、敵役のエイリアンまでティーンに合わせて軽くなっちゃってるのがもったいない。
絶望感が少し足りないんだよなあ。
交渉(コミュニケーション)の余地が全くない異業の怪物に襲われるディストピア宇宙SFとして、ちょいと物足りなく感じたのです。
登場人物を絞って(アンドロイド含めて6人)風呂敷を広げ過ぎないのは好感が持てたけど、もうちょい叫び声が聞きたいし、いろんな殺され方が見たかった。
ホラー映画って、死にざま=生きざまみたいなところがあるから、死にざまに人となりが出る。そこが見どころだと思うのです。
百歩譲って殺されるところは見せなくてもいいけど、もう1グループ作って【叫び声と血しぶきだけ】とかでも良かった。
悪趣味ですみません。。。
何が言いたいかというと、エイリアンがマイルドになってる印象を持ったのです。ちょっと都合いいんだよな。
まあ今の時代にあってると思います。そういう点を含めて見やすく、若くて新しいファンを獲得すると思う。
ただエイリアンって、ゴジラやトトロと違って霊性や心性を全く感じないのが逆に自分は良いと思っているのです。
あの感情移入を拒むビジュアル。
かといって誰からも受け入れられない孤独の悲しみ・切なさみたいなものもない。
とてつもなく広い宇宙にはこんなヤバい生物がいるかもしれないっていう、根源的で単純な恐怖。
そういう変な意味づけがないところが、自分はさっぱりしてて好きなのです。
ほんとあの姿形を作ったギーガーさん天才!
前作の「~コヴェナント」は2017年公開で、和暦では平成でした。
今回の作品はまさに「令和のエイリアン」って感じ。
アンドロイドの「萌え台詞」を聞いたときは、エイリアンもここまできたかと。
こうやっていろんな時代をエイリアンは生き抜いていくんだと思うと感慨深いけど、ま、あのビジュアルだから何の共感もありません。
これからも手を替え品を替えスクリーンに登場してほしいっす。
おススメですよ~。