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作家のお世話

「シャーリイ」

新妻のローズは夫がやっと職を得て、着任地で夫の上司である大学教授の家に間借りすることになります。新生活が軌道に乗るまで、とりあえず知人の住まいを一時的に頼るのは今もよく使われる策です。ただし、ローズの場合、ひとつだけ特殊だったのは、そこに作家のシャーリイ・ジャクスンがいたこと。大学教授の妻はシャーリイなのです。シャーリイは常に次回作のことで頭がいっぱい。夫は留守がちで、4人分の家事をローズがすべてやらされますが、狂喜乱舞するシャーリィの才能に敬意を表して接します。インターネットもパソコンもない時代の作家のライティングは、タイピングです。コピペなんて、できません。まあ、これよりさらに千年前だと墨をすって筆書きですが……。

シャーリイを演じているのはエリザベス・モスで、モンスターな役柄を堂々と演じきっていました。わたしの中で、エリザベス・モスはテレビドラマ「ホワイトハウス」のバートレット大統領の言うこときかない娘のゾーイだし、「マッドメン」の堅実OLペギー。ヒュー・グラント&サラ・ジェシカ・パーカーの「噂のモーガン夫妻」ではサラのアシスタント役で、エリザベスもどちらかというと東部の洗練された役の印象が強いけれど、この調子ならそのうち「ミザリー」のアニーなんかも好演してくれそうです。
「噂のモーガン夫妻」は20年以上前の作品ですが、「ウォーキングデッド」のゲイブリエル神父役のセス・ギリアム、「ハウスオブカード」のダグ役マイケル・ケリー、「卒業」のキャサリン・ロスのリアル夫であるサム・エリオットなどなど、いろんな役者さんが出ていて楽しいです。他の作品ではこきおろされがちなワイオミング州も、とってもチャーミングな街に描かれています。ちなみに「シャーリイ」の舞台は同じカナダ国境でも東側のバーモント州です。

「シャーリイ」を観たのは暑い盛りの7月。東京も10月に入り、ようやく涼しくなってきました。今年も残りあと2カ月余りのラストスパートです(わたしはスパートしませんが……)。

シャーリイ Shirley
2019年製作/107分/アメリカ
ジョセフィン・デッカー監督

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