以前、ライフスタイル誌の編集者をしていました。もともと映画を見るのは好きでしたが、毎月の映画コーナーで紹介する作品を選んでシノプシスを書く係になり、ジャンルの域を越えてたくさんの作品を鑑賞することに。いまはもうその雑誌はないのですが、ここで毎日「何を書こう?」というとき、映画について書いていたことを思い出しました。だから、映画について書いていこうと思います。あとは、ひきこもりがちなのでお部屋にしつらえて愛でているお花や、たまに出かける先についても。 テーマは「Live alo
わたしがまだ子どもだった頃、「チャーミングな女優さんが現れた!」と話題になったのが「ミスティック・ピザ」のジュリア・ロバーツです。あれよあれよという間に「プリティ・ウーマン」「ノッティングヒルの恋人」と、近所のきれいなお姉さん的存在から、いい女の頂点のような地位に。そんなジュリア・ロバーツも50代に入ると、母親役が多くなったようです。 「チケット・トゥ・パラダイス」 会えば口論となる険悪な関係の元パートナー役が実生活では大の仲良しのジョージ・クルーニーだからか、とても自然
テレビドラマ「団地のふたり」 縁のある人とはある日偶然、再会すると言いますが、そんな感じで会えた作品です。主演は小泉今日子さんと小林聡美さん。そうです、人生のマイベストドラマ「すいか」の馬場ちゃんと早川さんです。お二人が55歳の独身女性を演じています。保育園からずっと一緒の二人ですが、実はもうひとり、仲のよかった少女がいたという設定も、このドラマの醸す切なさのポイント。キョンキョン演じるノエチは、本当は教授になれただろう非常勤講師。聡美さん演じるなっちゃんはピークを過ぎたイ
テレビドラマ「0.5の男」 主人公は実家にひきこもって昼夜逆転の生活を送り、ゲームばかりしている40歳のマサハル。両親に手厚く世話されてきましたが、ある日、妹一家と同居するために住まいを建て替えることになるのがマサハルの日常に生じる転換点。追い出されるわけではなく、二世帯ならぬ「2.5世帯住宅」への建て替えです。0.5扱いされたことに憤ったマサハルに「抗いつづける」というスーパーオブジェクティブが生まれますが、同居を通じて家族と接していくうちに、変化していく展開です。 マ
「シャーリイ」 新妻のローズは夫がやっと職を得て、着任地で夫の上司である大学教授の家に間借りすることになります。新生活が軌道に乗るまで、とりあえず知人の住まいを一時的に頼るのは今もよく使われる策です。ただし、ローズの場合、ひとつだけ特殊だったのは、そこに作家のシャーリイ・ジャクスンがいたこと。大学教授の妻はシャーリイなのです。シャーリイは常に次回作のことで頭がいっぱい。夫は留守がちで、4人分の家事をローズがすべてやらされますが、狂喜乱舞するシャーリィの才能に敬意を表して接し
実は、雑誌編集者という家業は盛夏に夏休みをとりづらいです。定期刊行物を担当していると必ず入稿と校了があるし、定期刊行物でないものは読書の秋に刊行される場合が多く、秋に発行するには夏場が仕事の佳境になるのです。しかしながら、今年は数日、休みがとれて、そのほとんどを旅行に費やしたので、シアター通いはできず。サブスクで何本か、邦画を観ました。 夜明けのすべて 松村北斗と上白石萌音というと、朝ドラ「カムカムエブリバディ」の稔さんを思い出して悲しくなってしまうのですが、わたしなんか
ゴールデンウイーク中は近所のシアターに何度か足を運びました。一番近い映画館は文化村のル・シネマでしたが、取り壊しになり、今は宮益坂にお引っ越し。スナックとか売らずにただ映像作品を楽しむ場所づくりに徹していて、好きな映画館のひとつです。 「海がきこえる」 そんな仮店舗(?)営業中のル・シネマで観た作品のひとつがこちら。 「原作:氷室冴子」とあって、「うーん、なんだかとてもよく知っているような気もするのに、誰だったか思い出せない……」とググった自分が不覚でした。あろうことか、
もはや梅雨明けかというタイミングですが、2024年のゴールデンウイークに観た映画のメモを。いま仕事している制作会社の映画好き中年男子が「これ好きなんじゃない」と何本か、貸してくれました。 「エルスール」 本当、懐かしい……。今年、新作「瞳を閉じて」が公開されたビクトル・エリセ監督による1983年の作品。大学生のときに名画座で観て以来、およそ30年ぶりの鑑賞となりました。「エルスール」とはスペイン語で「南へ」ということと、大学の近所(西荻窪と吉祥寺のちょうど中間あたり)に「
「モンタナストーリー」 モンタナ州には行ったことがないのでアメリカ合衆国の地図を開いたところ、ワシントン州の東、ワイオミング州の北で、さらに北にはカナダの都市カルガリーがありました。 モンタナというと思い出される映画が「レジェンド・オブ・フォール」。広大な大地で牧場を営むラドロー家の3兄弟が、第一次世界大戦という社会情勢を背景に、揃いに揃ってひとりの女性を愛してしまう葛藤を描いた大河もので、その多くのシーンが「こんなところにぽつんと」ある荒野の牧場の住まいです。石造りのとて
「あの頃、ペニー・レインと」 リージン・ローハンと同じくらい、スクリーンで見かけると「大人になったなあ」と感慨深くなるのがケイト・ハドソンです。母親はゴールディ・ホーン様。ブロンド・足長・二重瞼という古くからアメリカ人に好まれる美人タイプで(最近なら、ブレイク・ライヴリーですね)、まず思い出すのは、なんといっても「あの頃、ペニー・レインと」のペニー・レイン役。ペニー・レインは源氏名で、ロックバンドのツアーにくっついてバスで全米を回るグルーピーな少女は、生まれた時からハリウッ
「アイリッシュ・ウィッシュ」 クリスマスシーズンになにげに見た「フォーリング・フォー・クリスマス」。主役のセレブを演じる女優さんは、どこかで見たことある気がするけれど、誰だか思い出せなくて、クレジットでリンジー・ローハンと分かり、あまりの変貌にびっくりしました。リンジー・ローハンのイメージは「ミーンガールズ」の高校生役で止まっていたからです。赤毛なので、正直、「デスパレートな妻たち」のブリーかと錯覚したほどの熟女になっていましたが、チャーミングな笑顔で、ミニスカートやキャミ
「落下の解剖学」 映画もコンサートもあまり前知識を入れずに臨むタイプです。これは「落下の解剖学」というタイトルから受けていたイメージとは違う作品でした。わたしは単純なので、シャーロックホームズがモリアーティに滝から突き落とされるくらいの、すさまじい落下と、その死体の解剖と思っていたのです。実際は、自宅ロッジの2階の窓から地面に落ちる程度の落下です。程度といっても、人が亡くなるのですが……。 単純に事故か自殺とみなして捜査は終わらず、人気作家である故人の妻サンドラに殺人の嫌疑
「哀れなるものたち」 昨年から取り組んできた企業PR誌のリニューアル創刊号が無事校了。ようやく映画館に行く余裕ができて、まずは「哀れなるものたち」へ。シネコンでは終わってしまったものの、渋谷のWHITEは上映していて、平日の昼間で満席でした。寝不足の脳みそにも、あっという間の3時間。19世紀末なのか、未来世紀なのか、さまざまな要素が混在する世界観の中、エマ・ストーン演じる主人公ベラが美しい白痴という特殊な人の立場を超越して、あらゆる女性の代表のように、縛られているものから心
映画「GHOST WORLD」 最近、仕事先で20代のスタッフと話していると、何のことを言っているのやら分からないけど分かっているふりをして済ませることがよくあります。10代に至っては接する機会もないし、わたし自身が10代だったのは、はるか遠い昔。目は見えづらく、耳は聞こえづらく、肌はたるんでいるのですから、感情についても10代のそれは体内に残っていないだろうと自覚しつつ、けれどどこかにはまだあんな気持ちを持ち続けていたい。 もし「GHOST WORLD」を見て「なんてひど
映画「PERFECT DAYS」 よく知られているように、渋谷区の公衆トイレはそれぞれ有名建築家が設計していて、建築雑誌で特集が組まれるほど一風かわったものです。この映画ではトイレ建築そのものや建築家、行政、ユーザーにスポットを当てるのではなく、清掃員を主役にしています。彼の名前は平山といい、朝起きてから夜眠るまで、昔の言葉で言うなら「晴耕雨読」のような毎日を送っています。なんとなく流されてそうなっているわけではなく、そこには本人の固い意志があるのです。 主人公に襲ってくる
テレビドラマ「いちばんすきな花」 2023年は予想外に仕事が忙しく帰宅が22時を過ぎるから、地上波のテレビドラマはあまり見られずじまいの1年でした。秋クールに撮っておいた「いちばんすきな花」と「今日からヒットマン」を年末に鑑賞。 「いちばんすきな花」は、前半は偶然出会った男女4人がだんだん親しくなっていくストーリー。後半は実はその4人に美鳥さんという共通の知人がいると分かり、美鳥さんが加わった5人のストーリー。しかも美鳥さんは登場人物の一人・椿さんが住む家に以前住んでいた