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ゴールデンウイークに観た映画 劇場編

ゴールデンウイーク中は近所のシアターに何度か足を運びました。一番近い映画館は文化村のル・シネマでしたが、取り壊しになり、今は宮益坂にお引っ越し。スナックとか売らずにただ映像作品を楽しむ場所づくりに徹していて、好きな映画館のひとつです。

「海がきこえる」

そんな仮店舗(?)営業中のル・シネマで観た作品のひとつがこちら。
「原作:氷室冴子」とあって、「うーん、なんだかとてもよく知っているような気もするのに、誰だったか思い出せない……」とググった自分が不覚でした。あろうことか、高1くらいまで夢中で読んでいたコバルト文庫の、あの氷室冴子先生ではないかっ。とても親しくしていたのに、数十年会ってないせいで思い出せなかった同窓生のようでした。作品を見かけなくなったのは作家自身が夭折されていたからということも今回、ググって知りました……。
「海がきこえる」は、1993年、吉祥寺駅のホームに立つ女子大生が主人公です。1993年、吉祥寺、女子大生。まんま、自分です。わたしもアニエスベーの淡いブルーのサマーワンピースを着て、小さいポシェットを下げて出かけていました。当時は今のようにスマホだのバッテリーだの持ち歩くものがなく、鞄は小さく、そして軽かった。吉祥寺駅の構図も劇中に描かれるとおりです。
違うのは、わたしには杜崎くんのようなクラスメイトがいなかったこと。
未成年が酒を飲むシーンが多いからテレビ放映されないそうです。確かに、当時は大学生ともなれば飲酒は当たり前だったし、わたしも西荻の駅で酔っぱらって倒れたことあります。今の新歓コンパでは飲まないのでしょうか。

海がきこえる
1993年/日本/72分
スタジオジブリ

「パストライブス/再会」

こちらも、ル・シネマで鑑賞。とても親しかったけれど、家庭の事情で引っ越していった異性の友だちと、12年後、そしてまた12年後に再会するものがたり。たとえ再会はできても、お互いに現実の生活があって、昔の関係には戻れない(それでも、会いにいってしまう……)。
ここまでセンチメンタルでロマンチックじゃなくても、旧友や心を寄せていた相手との数十年ぶりの再会は誰にでもあること。それはどんなに待ち侘びた嬉しい瞬間でも別れを前提にした再会で、過去には戻れない切なさや、やがて来る別れのときへの葛藤がニューヨークの街を舞台に表現されていました。
良作ですので、人気なのか、現在も公開中のようです。

Past Lives
2023年/106分/アメリカ・韓国
セリーヌ・ソン監督

「異人たち」

今年上半期で一番よかった映画です。
恥ずかしながら読んだことはないのですが、山田太一先生の小説「異人たちとの夏」をアンドリュー・ヘイ監督が映像化と聞いて、ずっと楽しみにしていました。もう、期待以上で、最初から最後まで、すべてが素晴らしかったです。使い古されている表現ですが、1シーン1シーンが珠玉の賜物。脚本家の主人公アダムが一人で暮らすマンションでハリーという男性と出会い、互いの体に指で触れていく静謐なシーンや、アダムがレストランでファミリーセットを注文するシーンは思い出すだけで、じんと来ます。ああ、もう一度観たい。
山田先生は、存命中に完パケをご覧になられており、満足そうにしておられたとか。アンドリューによる脚本にも一切、手を加えられなかったそうです。お二人とも正真正銘のクリエイターで、さすがです。

異人たち All of Us Strangers
2023年/105分/イギリス
アンドリュー・ヘイ監督

この作品でアダムを演じたアンドリュー・スコットいいなと思って、配信で「リプリー」を見始めましたが、1話で挫折しました……。

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