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年をとるほど

わたしがまだ子どもだった頃、「チャーミングな女優さんが現れた!」と話題になったのが「ミスティック・ピザ」のジュリア・ロバーツです。あれよあれよという間に「プリティ・ウーマン」「ノッティングヒルの恋人」と、近所のきれいなお姉さん的存在から、いい女の頂点のような地位に。そんなジュリア・ロバーツも50代に入ると、母親役が多くなったようです。

「チケット・トゥ・パラダイス」

会えば口論となる険悪な関係の元パートナー役が実生活では大の仲良しのジョージ・クルーニーだからか、とても自然に「夫婦」に見えました。二人の過去は回想を挟まず、互いのセリフで明かされていきます。ジュリアは若くして結婚し、娘を生んだものの、夫との生活が耐えられず5年で離婚して、美術コンサルタントをしているジョージア役(決してミセス・コットンと呼んではならない)。ジュリアは今もシャープなフェイスライン、スラリとした体型を維持していて、着こなす衣装がとても素敵です。娘の大学の卒業式にはツイードっぽいピンクのジャケット&パンツ。仕事中は黒いジャケットにハーフパンツ。小物はグッチ。ブラックドレスにターコイズのアクセサリー、髪にオレンジ色の花飾りという結婚式のスタイルも、とてもよく似合っていました。ボーイフレンドもいて、どこかで見たことあるチャラ男だなあと思ったら、「エミリー、パリに行く」のガブリエル、リュカ・ブラボーでした。パラダイスはバリ島という設定になっていますが、バリには見えず……。実際に撮影したのは、オーストラリアだったようです。

「終わらない週末」

こちらでの夫はイーサン・ホーク。イーサンは結構な中年男子になっていました。同じベッドルームで寝ているもののコミュニケーションが取れているようで取れていない夫婦関係で、そんなふうに見えるのがさすがです。登場人物が数名しかおらず、ジュリアとイーサン、その子ども二人、一家が週末に借りた別荘の主(マハーシャラ・アリ)と娘、別荘の近所の住人数名。楽しいはずの週末旅行がどんどんミステリアスに、深刻になっていくのですが、この作品でのジュリア・ロバーツはすごく疲れた母親役。週末旅行も自分だけで勝手に計画して家族には事後報告だし、やたらとヒステリーです。WifiやGPSが途切れただけでイライラしていく様子は現代人に共通する問題なのかも。結局、登場人物たちは本当はどんな人たちで、これから先どうなるのか、なにも明確にならない感じで、わたしにとっては「終わらなかった作品」でした。ジュリアはこの作品ではプロデューサーも務めています。

個人的には、ジョージ・クルーニーとは親友な感じで、イーサン・ホークとのほうがより現実味のある中年夫婦に見えたかな。
加齢が増せば増すほど、ファッションや美容への興味が薄くなり、着心地が楽かどうかとか洗濯できるかとかで洋服や靴を選び、同じのばかり繰り返し着て、髪の毛もひとつに束ねたきりになりがちです。大女優ジュリアのシャープな体つきやカールのかかったロングヘアを見て、中年だけどちょっとは自分を整えねばと思いました。
見出し画像はバリ島でもオーストラリアでもハンプトンズでもなく、今年たびたび撮影で行った茅ヶ崎の海です。

チケット・トゥ・パラダイス Ticket to Paradise
2022年製作/104分/G/アメリカ
オル・パーカー監督

終わらない週末 Leave the World Behind
2023年製作/141分/アメリカ
サム・エスメイル監督



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