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上質な最期

「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」

あまり事前に知識を入れず、ティルダ・スウィントンさま主演、ペドロ・アルモドバル監督作品ということで観に行ったら、末期がんの女性が尊厳死を選択するストーリーでした。登場人物は少なく、ティルダさま演じるウォーレポーターのマーサ、旧友の小説家イングリッド、二人の共通の元彼ダミアン、マーサの娘ミシェル、ミシェルの父親とその妻、新聞社の同僚、あとは弁護士と警察官くらい。前半に扇状回想でマーサが若かった頃、どんな人物だったかを描いたのち、マーサがイングリッドと過ごす最後の数日につながっていきます。マーサはジャーナリスト、イングリッドはライターとして1980年代のニューヨークで20代の日々を過ごした仲間です。そう、我が憧れの80年代のニューヨーク! マーサのセリフにあるように「大事なことは全て夜起こっていた」ニューヨークです。2020年代の現在、彼女らは60代ということになります。ティルダさまの実年齢に近い設定ですね。イングリッドを演じたジュリアン・ムーアも同世代。あとはナスターシャ・キンスキーなんかも同じくらいと思います。

マーサは自身の余命を知っていて「上質な最期を迎えたい」と望みます。上質な最期とは何か、人によって違ってきます。自分の家の自分のベッドで死を迎えること。家族に囲まれて看取られること。最後の最後まで治療を受け病気と闘うこと……。マーサはマーサの思う「上質な最期」を選びます。死ぬ方法、死ぬ場所、死ぬときに着る洋服やメイク……自分らしく人生を完結させることを全うします。
私だったら、死ぬことにも、もっといい加減になってしまうだろうと思います。今でさえ髪の毛はぼさぼさ、ヘアカラーも面倒で、会社に上下スウェットで出勤していますから……。マーサは自らの考える完璧を生きた人でした。
それにしてもティルダさまはチャーミングです。何を着ても可愛い。ネイビーやグレーに落ち着かず、色使いを真似したくなりました。洋服は無理でもソックスや小物なんかに取り入れてもいいかなと。
ちなみに10代のマーサを演じていたのはユアン・マクレガーの娘のエスター・マクレガーでした。

劇中、マーサとイングリッドの語らいの中に、画家のキャリントンの話が出てきて、久しぶりに映画を観たくなりました。本棚にあるDVDの山を探しましたがキャリントンは見当たらず。近々、4Kリマスターでスクリーン上映されることを期待します。

ザ・ルーム・ネクスト・ドア The room next door
2024年製作/107分/スペイン
ペドロ・アルモドバル監督





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