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戦友は永遠

映画「アムステルダム」

1933年のニューヨークに暮らす医師のバートと弁護士のハロルドは戦友どうし。第一次世界大戦時、送られたフランス戦線で命からがら生き延び、バートはクリニックで復員兵の治療を、ハロルドは復員兵の法律的手助けをしています。
ある日、バートとハロルドに、上官だった将軍の訃報が届きます。バートは将軍の死に納得いかない娘さんから依頼され、遺体を解剖した結果、他殺であると突き止めました。その直後、娘さんが何者かに殺害され、居合わせたバートとハロルドは容疑者扱いされて警察に追われる身に。
将軍と娘さんの死の真相を解明すべく行動するうちに、二人は懐かしい人物と再会します。それは、フランス戦線の野戦病院でバートとハロルドを看病し、命を救ってくれたヴァレリー。バート、ハロルド、ヴァレリーの三人は退役後、中立国として当時あらゆる自由と人権が保障されていたアムステルダムで青春のいっときを謳歌した仲で、ハロルドとヴァレリーは恋人関係でもありました。

戦友三人で将軍親子殺人事件を追う

ヴァレリーも加わり捜査を続けるうちに、事件は思いもよらなかった「アメリカとヨーロッパ・ファシズムとの関係」へ進んでいきます。
シビアな内容のストーリーですが、悲壮感なくコミカルにテンポよく描かれていきます。134分ありますが、そんなに長くは感じませんでした。
ヴァレリーのお兄さん役がラミ・マレック、その妻役がアニヤ・テイラー・ジョイなので、ただたんに主要人物の家族というだけでなく事件に絡んでいるのだろうと察したら、案の定でした。脇役が贅沢で、ロバート・デ・ニーロやテイラー・スウィフトが登場します。

クライマックスは復員兵REUNION GALA会場

バートは医師として復員兵の傷や痛みを治療していますが、自身も戦争で片目をなくし、アムステルダムで入手した義眼を使っています。バートは楽観的で明るいキャラクターですが、もはやヨーロッパで次の戦争がきな臭くなっていると知ったとき、「終わったばかりなのに、また戦争をするのか」と愕然とします。
第一次世界大戦は歴史上、それまでとは戦争のありかたが変わった転換期といわれています。アレキサンダー大王やチンギスハーンやナポレオンが軍の先頭に立ち、大地を駆けて戦った武士道精神の時代は終わり、塹壕を掘り、兵隊だけを前線に送って、最高責任者は安全な場所から指令する、ゆえに戦争は撤退なくして長期化し、大勢の犠牲者を伴うものへと変わっていきました。そして、バートの言うように、やっと終わったと思ったら、また次が始まってしまうの繰り返しです。
アムステルダムとは、バートやハロルド、ヴァレリーにとって、楽しかった思い出の場所という以上に、戦争のなかった場所、平和を象徴する場所を意味するのだと思います。

アムステルダム Amsterdam
2022年製作/134分/アメリカ
デビッド・O・ラッセル監督
2022年10月劇場公開




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