ディストピアでも心配しないで
映画「ドント・ウォーリー・ダーリン」
監督したオリビア・ワイルドは、わたしの中では「The O.C.」や「Dr.House」などテレビドラマでの俳優業の印象が強い方です。どちらかというと年齢より年上に見える姉御肌な役柄が多かったような。
オリビアの初監督作品「ブック・スマート」は配信で数回見て、逆ハコ分析をしたくらい好きだったので、2作目である本作は劇場公開で見ました。
最初、オールデイズのヒット曲がアナログレコードから流れ、スーツ姿の夫は戸建ての自宅からアメ車に乗って出勤、若い奥様は可愛いエプロンをして家事に励むという、「奥様は魔女」のスティーブンス家みたいなシークエンスから始まるので、1950年代のストーリーなのかな? と思います。
広々っとした戸建ての家はセントラルヒーティングで管理され、一年中、ノースリーブのドレスで過ごせて、最新家電が揃い、床はふかふかの絨毯で、ウィークエンドは友だち家族と集まってパーティー。それは戦後、日本人が憧れた戦勝国アメリカのライフスタイル。一生懸命、必死に労働すれば、いつかはあんな暮らしが送れるはずと追い求めた結果が、いまの日本なわけですが。話を映画に戻すと、一見は50年代のハッピーな若夫婦に見えるのですが、不意のアクシデントがおこるたび、奥様のアリスは「なにかおかしいな」と疑問を持つようになります。最初はユートピアにうつっていた物質的に豊かな暮らしは、アリスにとっては制御されたディストピアになっていき、ついには真実が判明するスリラーです。
インテリなオリビアの主義主張や映像制作においてやりたいことが詰まっている反面、詰め込みすぎて逆に不足に感じる点も散見されました。ちなみにオリビア自身、アリスと同じユートピアタウン「ヴィクトリー」に暮らす近所の主婦役で出演しています。実生活では、アリスの夫ジャック役のハリー・スタイルズと現在、交際中とか。いろんなタレントを持っている人なので、次回作でもまた発想の違う面白いものを作ってくれるだろうと、期待が高まります。「MAD MEN」みたいな50年代衣装は、アリアンヌ・フィリップスが担当していました。
鑑賞後、小腹が空いたので、いつもどおりカレーを食べようと飲食街へ行ったところ、なんとなくお蕎麦屋さんに入ってしまいました。つけ蕎麦に山椒と胡麻、終わりのほうに黒酢を垂らして、最後はそば湯で〆ました。