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ジョージアの恋愛事情
「蝶の渡り」
ジョージア映画を初めて観ました。ジョージア。少し前までグルジアだったと思います。ユーラシアをずっとずっと東へ行った、コーカサスという地域にある国のひとつ。子どもの頃『コーカサスのとりこ』という児童文学書が家の本棚にあって何度か読んだので、わたしにとっては親しみ深い地名です(といっても行ったことはありません)。「蝶の渡り」の鑑賞をきっかけに「そういえば『コーカサスのとりこ』は誰が書いたのかな?」とググったらトルストイでした。
たとえ他国に占領されていようとも、紛争のさなかであろうとも、そこには青春を過ごす若者たち、アーティストとして生きる人たちがいます。この映画に出てくる登場人物はそんな人たちです。住まいは半地下、電気代を払うお金がなくても、アーティスト仲間で支え合って(?)生きています。オフィスワーカーからしてみたら、デカダンスすぎるかもしれません。
主人公の画家コスタの家には、とっかえひっかえいろんなアーティストがやってきて居候します。その中の一人、バレリーナのニーナはオードリー・ヘップバーンみたいなビジュアルのうえに、どうすれば自分が魅力的に映えるかを認識している人で、もちろんコスタとも男女の関係です。
コスタの絵を買いに訪れた男性がニーナを一目見た瞬間、恋に落ちてしまうシーンがあるのですが、本当に「あなたを好きになった!」と誰にでもバレる分かりやすさで、面白かったです。
ちなみに、彼はニーナの虜となりますが、トルストイの『コーカサスのとりこ』はコーカサスで起きた戦争捕虜のお話です。
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おそらくコスタが暮らしているのは首都のトリビシです。そのほかに、古い修道院のある村や、貴重な蝶が生息するトゥシェティの高原などもロケーションとされています。
黒海沿いを北に行き、ロシア国境を越えるとオリンピックが開催されたソチ、さらにその向こうはウクライナです。逆に南に行くとアゼルバイジャン、さらにその向こうはイランです。
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蝶の渡り Forced migration of butterflies
2023年製作/90分/ジョージア
ナナ・ジョルジャゼ監督